第19話 強奪
────来ないなら────
来ないならなんだよ。
ドクン ドクン
────
カッッ
ガアアアアアアアアア!!
「なんだ?何が起きた!?」
「銀次君!良かった!大丈夫!?・・・銀次君?」
何だ?力が溢れる!!コレなら・・・!!
「なんや須藤の雰囲気おかしないか?」
「ギンジ君から溢れているあの赤い魔力・・・あれじゃまるで・・・」
「な、なんだ・・・」
周りが何か言っテる気がスルが関係ナい。今は
俺は持っていた剣を投げ捨ておびえたような顔をした勇人に向けて駆けだし思いっきり殴りつけた。
グルルルルァア!!
「クッ!」
バキィィン!
「け、剣が・・・」
「拳であのデカい剣をブチ折りやがった!」
外したカ!ココカラではウマくイカヌな・・・アマリ時カンモ無イ・・
「あれは!?まずいよ!ジングウジ君!!逃げて!」
「あ、あぁ・・・」
俺は両手を前に突出しそこから自分の魔力を集めて勇人に向けて放とうとした瞬間、
「銀次君!ダメ――――!!」
・・・ッチ・・・
・・・ハッ!俺は何を・・・って駄目だ!止められない!!クソッ!
ドンッッ!
両手に集まっていたバランスボール程の大きさの赤い魔力は俺の意志に反して勇人へ飛び出して行ってしまった。間に合うか?!
「ひっ・・・!!」
今までの自分ではないほどに体が軽い。これなら・・・!!
バキィ!! ズドン!!
俺は全速力で勇人まで走り込みそのままの勢いで勇人を殴り飛ばした。それ以外を選択する余裕がなかったからだ。先程まで勇人のいた場所に俺が飛び込み反転して俺の放った魔力球を天井めがけて蹴り上げた。
ガオン!!
訓練場の天井が綺麗さっぱり消滅していた。訓練場より上層階がなくてよかったな。もし勇人が喰らったり防御しようとして受けていたら勇人は・・・
「勇人様っ!!」
「勇人!」
「うっ・・・杏奈・・亮汰か・・何が・・銀次は・・・」
「勇人!?ああ、気絶しただけみてぇだな。」
よかった。勇人は命に別状はないよう・・だ。あ、俺の方もダメかも知れない・・・以前と同じだ・・だとすれば・・・少し・・すれば回・・・復し・・てくれ・・るかな・・?
────速く来い────
────来ないなら────
バタン
「銀次君!」
「ギンジ様!」
「ギンジ殿!」
「須藤!」
またも俺は意識を失った。
「これは、引き分け・・という事でいいのだろうか?」
「なんですか・・?あの異常な威力は・・・」
「わからない。けど一瞬ギンジ君じゃなくなったようにも見えたよ。」
「うん。多分銀次君じゃなかった!」
「なんやったんやろな。さっきの須藤ちと怖かったで。」
・・・・・・・・
「あ・・ここは・・・どこだ?」
目が覚めると見た事の無い部屋だった。たしか勇人にやられた後なにか聞こえてそれから急におかしな力が湧いてきて、それで・・・
「銀次君!良かった!気が付いたんだね!」
「東雲さん?あれ?って事はここは女性陣の部屋?」
女子部屋だとしたらまずいぞ!西城と姫崎に何言われるか。
「ううん。昨日から一人一人の個室を提供してもらえることになったんだよ。私はみんなと一緒のほうが安心出来たんだけどなー。」
中・高校生ならまだしも社会人になって相部屋がいいとか東雲さんは裏表のない人なんだな。って勇人は大丈夫なのか?一本というかぶん殴った覚えはあるんだけど・・・勝負は結局どうなったんだろ。
「東雲さん!勇人は大丈夫?それと勝負はどうなった?っていうかここが個室だとしたら俺の部屋になんで東雲さんが?」
「ふふ。やっぱりいつもの銀次君だ!自分のことよりまず勇人君の心配なんだね。いいでしょう。真弓先生が一つずつお教えしましょう!」
「先生?」
東雲さんがエヘンと胸を張っている。俺みたいなお子ちゃまには相変わらず目に悪い。
「まぁまぁ!えっとね。銀次君、聞いて驚いてね。なんと銀次君はあれから丸3日も寝込んでたんだよ!メーシー先生が以前と同じ魔力枯渇状態だって言ってた。」
「3日も?前の時も東雲さんが見ててくれたよね。ありがとう。」
「いーえ。どういたしまして!銀次君のスキルが発動してるなら安静にしてれば大丈夫って先生も言ってたしみんなで交替しながら様子見に来てたんだ。私の時に気づいてくれてラッキーだったよ!」
俺が頭を下げると東雲さんもニッコリ笑って答えてくれた。天使だ。
「それと勝負なんだけ・・」
「まゆまゆーそろそろ時間やでー。おー!須藤!生き返ったんか!あのまま死なんでよかったなー。」
ガチャリとドアを開けて入ってきたのは西城だった。そのまま近づいてきて俺の頭をポンポンしてきた。だから恥ずかしいからやめろって。
「香織・・・!いいななぁそのスキル・・」
スキル?重くされてる感じはないけど。切られてないし。
「でね。勇人君は昨日動けるようになったって杏奈ちゃんが言ってたよ。姿はまだ見てないんだけど・・・勝負の方は一応引き分けって形にライーザさんがしたみたい。」
そうか。無事でよかった。
「なんや。無事でよかったみたいな顔して。あんた初め理不尽な理由でボコボコにされたんやで!?まーそのあと逆襲はエグかったけどな。須藤レベルアップであんなに強くなったん?ウチよりよっぽど速かったで?」
「ほとんど覚えてないし・・・うん。やっぱり今確認してみたけどいつもの俺のステータスだな。」
「ほんのちょっと怖かったけど今は普通の銀次君みたいだし問題なしだね!あ、そういえばメーシー先生と王女様が目が覚めたら話を聞きたいって言ってたから呼んでくるね!」
そりゃそうだよな。勇者同士が訳わからん私闘してお互いにこんな状態になったんだから。
しばらくするとメーシー、エミリア王女、それと勇人が一緒にやってきた。
「おはようギンジ君!良く眠れたかなー?」
「おはよう。3日間ぐっすり眠れたよ。72時間以上寝たのなんか生まれて初めてだろうな。」
「意識が戻って本当に良かったです!冗談を言えるようでしたら安心しました。」
「お疲れ。具合はどうだ?俺の方も昨日起き上がれるようになったばかりだけどな。」
そういう勇人の身体には包帯やらなにやらが巻いてあってなかなかに痛々しい。あ、今気づいたけど俺も同じだった。
「お疲れ。なんだ、その、怪我は大丈夫なのか?俺がやったようだけど正直あまりよく覚えていないんだ・・・」
「何言ってる。元々は俺が言いだした事だからな。やられるつもりなんて一切なかったよ。結果は見ての通りだ。銀次、すまなかったな。」
勇人はそう言いながら頭を下げて握手を求めてきた。さわやかイケメンは謝罪もさわやかなんだな。
「勇人・・・という事は勝負って・・・」
「ライーザさんは引き分けという形にしてくれたようだが、俺の負けだ。一本どころか気絶させられたんだからな。これからも一緒にこの世界の為に戦ってくれるか?」
「ああ!もちろんだ!よろしく頼む!」
俺たちはガッチリ握手をした。同期の皆、王女や騎士団、それに友人。
みんなで力を合わせればきっと乗り越えていけるし元の世界にも無事に帰れるはずだよな。改めて低スペックながらも頑張ろうと思う。
「ほんの少しの間だけだけどな・・・」
ん?勇人が何か言った様だったけど・・・
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