第20話 謎の遺跡
「ふむ・・・自分からあれだけ言っておいて素直に負けを認めるとはジングウジ殿はなかなかの気概を持つ方のようだ。」
報告を受けてライーザさんは感心するように言った。
今俺たちは俺が起き上がれるようになったので今後の予定を話し合うために会議室のような所に集まっている。
勇者勢、エミリア王女、メーシー、ライーザさん、ギャレス。まぁいつものメンツだ。
「あんな形になって俺の勝ちだなんて負け惜しみにしか取られませんからね。」
「流石、勇人様ですわね!」
そうだ。この前の事についてちゃんと聞いておかないとな。
「それでメーシー、この前の俺のアレなんだけど勇人にやられた時何かに呼ばれた気がしてああなったみたいなんだけど何か心当たりはあるか?」
「うーん。確かにあの時はギンジ君じゃない別の何かに見えたけどわからないな。赤い魔力についても事例もないし・・とんでもない威力を持ってるみたいって事ぐらいかな?それでもステータス紙にもあるようにギンジ君は人族であり勇者。これは間違いないから問題ないんじゃない?」
問題ないのかなぁ?また急にあんなんになったら自分でもどうしていいかわからないぞ。どうもこの世界の人はステータス紙を信用しきってる感があるけど・・・それだけ信憑性が高いという事なのか。
「精霊ってのが憑依したりしてたのかもな!」
「そんな話聞いた事ありませんがギンジ様はギンジ様ですから!」
「あー!王女様!それ私が言おうとしてたやつですよ!」
「・・・・」
まぁこれについては今考えても仕方がないか。
「それでこれからなんだけどあと2,3日ギンジ君とジングウジ君の回復を待って皆でビシエ遺跡に再チャレンジしたいと思うんだけど、どうかな?」
やはり遺跡には行くのか。勇人の方は戦闘するには少し厳しいらしい。俺はなぜかほとんど回復しているんだがなんでだろう?
「なんでそこまでその遺跡にこだわるんや?何かいい事でもあるん?」
確かにみんなで行かなければならない理由でもあるのだろうか。
「あの遺跡は魔獣もそこそこ手強いんですがその分経験値も高いんですぜ。」
「遺跡の中には宝箱がいくつかあってなかなかの上等な装備が入手できるのです。理由はわかりませんがある程度の期間を過ぎると宝箱の中身が復活します。中身はランダムで。」
ギャレスとライーザさんがそう説明する。
宝箱!これはゲーム好きとしてはワクワクが止まらないな。某ダンジョンアタック系のゲームみたいだ。
「宝箱の中身が復活!?なんだか気持ち悪いな!」
「誰かが人知れず入れて回ってるかと思うと怖いよね。」
亮汰と東雲さんはそういって驚いているがそうだよな。ゲームをやってるとなんとなくそうなんだと思ってしまうが冷静に考えると怖いね。ゲームには大体その辺りの設定があったりするんだけど。
「それと最大の理由は、ビシエ遺跡の最奥の大部屋には『異界の勇者降りし時、封印は解かれる。さすれば汝の敵を討ち滅ぼすだろう。』って書かれていてその先に結界が張ってあるんだ。」
結界か。何があるんだろうか。
「その文面からするとわたくしたちが行けばその封印が解ける可能性があるってことですわよね?そんな得体のしれない物を勝手に解いてもいいものなのかしら?」
「訳のわからないもんが出てきてこっちが滅ぼされるって事になったりしないだろうな!?」
そう姫崎と亮汰が言う。確かに謎すぎて怪しい事この上ないけど・・。
「それは私もわかってるよ。でも調査は一応国王からの命令だし周期的にも外敵がいつ現れてもおかしくない状況なんだ。だからリスクを冒してでもなにかしらの希望を見出したいのさ。」
「お父様の・・・」
「そうか、外敵がまた・・・!!」
「外敵に関しては本当に現れるかは定かじゃないけど帝国からの圧力も強い。勇者を抱えられてるこの国としてはもう一つ頭を出したいってのも大きいのかもね。」
国としての外交問題か。外敵に外国、世界は切羽詰まった状況になっているようだ。
それから3日間俺たちは休息をしたりこの世界の文字を勉強したりして遺跡攻略開始までの時間を過ごすことにした。
同期のみんなは俺と勇人の事を考慮してくれたようでレベルあげはしなかったようだ。別に俺はかまわなかったのにな。
こうして俺たちはビシエ遺跡へ繰り出した。いつものメンバープラス護衛の兵士が前回よりも多くついている。
例によって俺は一番前の馬車に乗って固定砲台だ。パーティーは勇者以外のいつメンと組んでおいた。
「やーっとついたぜ!」
「確かに座りつかれてしまった感じはあるな。」
「うう・・やっぱり馬車は苦手ですわ・・・」
前回トロールたちの襲撃があった場所も特に何もなく越える事が出来てやっと当初の目的であったビシエ遺跡へと到着した。
遺跡と言っていたが古い城が朽ち果てたような外観をしている。大きさは相当な広さを持っているようだ。
「うわー!大きい遺跡やなぁ!こんなかを攻略してくんか!」
「どのくらいかかるのかわからないけど気を付けていこうね!」
「狭い通路や大部屋などもありますので陣形を乱さない様お気を付け下さい。」
「目的の部屋まではそれなりにかかるから魔力の使いすぎには注意してね!」
という事は俺の出番が多くなってくるかな?
「強めの魔獣もそこそこ出てきますんであっしとカセ殿が前衛を務めましょう。」
「まかせな!俺が全部蹴散らしてやるからよ!新しいスキルまだ見せてなかったよな!?」
亮汰はどんだけ新スキルを披露したいのだろうか。
「それでは参りましょう。騎士団員に告ぐ!これより勇者様一行並びにエミリア王女を遺跡深部までお守りする!皆の者!気合を入れろ!」
おおおおっ!!
ライーザさんの号令によって遺跡攻略が開始された。ここに何が待っているのだろう。
俺を呼ぶような声は何か関係があるのか。何やら不安を覚えながら遺跡の中に足を踏み入れていった。
「現れたか!各団員散開して撃破に当たれ!」
前衛を務めるギャレスから団員への指示が出る。
遺跡に突入してしばらく進むと少し広い部屋にたどり着いたのだがそこには魔獣が群れをつくっていた。
高さ1メートル程で身体はゲル状の様に見える。色は個体差なのか黄色っぽかったり紫色っぽい者までいるな。その身体から数本の触手が生えている。
「あれはローパー種だよ!あの触手を受けると麻痺や毒になるから気を付けて!」
なるほど恐らくだが黄色は麻痺攻撃、紫は毒攻撃という事なんだろう。
「うげーこいつらの身体ぐじょぐじょしとってキモいー!」
「長物で状態異常ですって?わたくしはこんなに醜くありませんわ!はぁぁ![ポイズンウィップ]!」
西城のダガーや姫崎の鞭はあまり効果がないようだ。姫崎に至っては武器や能力がかぶってるのが気に入らないのだろうが毒持ってる相手に毒攻撃入れてどうする。俺の知識では回復させるまであるぞ。
「くっ!こいつめ!け、剣が!・・・あばばば、し、痺れる・・・」
騎士団も苦戦しているようだ。幸いまだ重傷者は出ていないようだが・・・
「やはりここは私たちの魔法で!マユミ様!行きましょう!」
「はい!王女様!マジックア・・・」
「おっとマユミちゃんここは俺にまかせてくれよ!新しいスキルの出番だぜ!」
王女と東雲さんが魔法とマジックアローのスキルで攻撃しようとした所を亮汰が割って入ってきた。
「亮汰!お前の拳じゃダメージどころかお前が毒貰っちゃうぞ!ここは魔法系で・・」
「うるせぇ!銀次!黙って見てろよ!行くぜ!おおおお![
カッ!シュゴオオオ!!
ピギイイイィィィ!
亮汰が有無を言わさずスキルを放つと拳から太く白い光線の様なものが放出された。
それを受けたローパー種は断末魔と共に半数以上数を減らしたようだ。
凄い威力だな。だが・・・
「亮汰凄いな!でもこんな強力なスキル、消費は大丈夫なのか?」
「はぁはぁ、だ、大丈夫だ!あと一回は打てる!」
やっぱり・・・重すぎるだろ・・・初っ端から魔力半分使ってどうするよ。
「まぁ数は減ったな。あとは、[ホーリーバインド]!真弓!頼む!」
「まかせて![マジックアロー:
ゴオオォォオオ!!
ピギャァァアア!!
おお!炎陣って事は以前王女が使ったフレイムサークルか。この威力で範囲攻撃、しかもマジックアローを打つ分の魔力しか使わないとかチートだ。
「さっすがマユミちゃん!頼りになるね!」
「お、俺もたくさん倒したぞ・・!」
「そうだな。亮汰。休んで少しでも魔力を回復させておけよ。」
俺もフレイムボール連射で2体ほどはしとめたぞ。
「よし!皆警戒態勢に戻れ!怪我をした者の治療もしておけ!勇者様方。守るはずが守られてしまい申し訳ありません。これより先も魔獣は手強くなっていくでしょう。お気を付け下さい。」
まだ始まったばかりだ。気を引き締めていこう。
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