第18話 低スペック高スペック

「ふいぃ~やっとレベル10になったぜ!ん?この騒ぎはなんだ!?」





「まったく、カセ殿は強引ですぜ・・おや?これはみなさんお揃いで。」





俺たちは訓練場へ着き手合せというかなんだこれは?決闘?それも違うな。とにかく勇人と立ち会うために準備をしていると亮汰とギャレスが帰ってきた。


西城たちが事情を説明してくれたようだけど亮汰はどう思っているのだろうか。





「手合せ?テスト?やれやれ!この先銀次が死んじまっても後味悪いし勇人が負ける姿ってのも見たいしな!早く俺の新しいスキルも披露してぇし!」





亮汰はこういうやつって事か。良くも悪くも。


確か仕事でも今この時に仕事を取ってこれるやつが偉い!将来性とかってのはあまり見ない気にしないタイプらしいから変な打算とかはないんだろう。だからすぐに仕事を取るために飲み食い女を使おうとするんだろうけど。





「ジングウジ殿とギンジ殿が?1対1じゃ厳しすぎやしませんかい?」





「いや、いいんだ。俺もそれで了承したからな。」





「それじゃあ確認だ。銀次が俺から一本とれたら銀次の勝ち、俺は銀次を気絶させるか降参させたら勝ちでいいか?魔法・スキルの使用は可。他の判断はライーザさんにまかせる。」





つまり勇人は俺を徹底的にいたぶるつもりか。まぁお互い一本先取にしてしまうと俺の勝ち目はほぼないに等しいしそうするしかないけどな。





「準備はいいか?銀次!」





「ああ、いつでもいいぞ。」





「安心しろ。殺したりはしないからよ!」





そういう勇人の目がギラリと鋭く光ったように見えた。あの勇人が殺すなんて言う事を軽々しく口にするとはな・・・





「それでは、初め!」





「手始めにこれを・・・なにっ!?」





「<<フレイムボール>>!×3」





ボフンボフンボフン





俺は開始と同時にフレイムボールを3発繰り出した。


王女や東雲さんが打てばかなりの威力があるのだろうが俺のは非常に低威力だ。が牽制には十分だろう。4発当てればラビ―も倒せるんだぜ。勇人に何発当てれば倒れてくれるのかわからないが。





こうやって初級魔法で距離を取りつつスキを見つけて一撃を入れる。男らしくないかもしれないけど今の所これくらいしか思いつかない。





「そうだった。お前は魔法をいくら打っても魔力切れないんだったな。この程度喰らっても問題ないがウザったいのは確かだ。少しだけ強くいく・・・ぞ!」





ギュン!





「なっ・・!はや」





「聖剣技[ダブルスラッシュ]!」





ギィン!  ドカッ!





「ぐはっ・・・!ゲホッゲホ!クソ!息が・・・」





昨日の戦いの後レベルアップ後の西城が見て見て!めっちゃ速いで!とはしゃいでいた時と同じぐらいの超スピード(に俺は見えた)で一瞬で間合いを詰められ鳩尾辺りに重い一撃をくらった。勇人のやつ!剣の腹でぶっ叩きやがった!





「銀次君!」





「ギンジ様!」





「勇人様さすがですわ!」





クソ。これがレベル1だったら今ので決まっていたかもしれないな。





「はぁ、はぁ、はぁ、<<ウインドカッター>>!×2」





「ははっ!またそれか!ぬるいんだよ!」





トロールを倒すときに活躍してもらったウインドカッターも勇人にキン!キン!と切り払われてしまった。





「まだだ!<<フレイムボール>>!×3<<ウインドカッター>>!×3」





「すごい・・・初級魔法といえども私でもここまで連発できるかどうか・・・」





「威力はともかく手数はあるね。」





「せやけど有効打にはなってへんみたいやなぁ。」





俺は必死に打った魔法の後を追いかけるように勇人への距離を詰めていった。


この数なら少しはスキが出来るはずっ・・・





「なんどやっても同じだ!」





先に打った魔法は避けられるか払われるかして勇人に当たることはなかった。が本命は俺自身だ。





「おおおおぉぉぉ!!!」





「魔法もぬるければ剣もぬるいな!この程度!・・何?!」





「<<ウインドカッター>>!」





ガツン!





俺の全力を込めて振っている剣にあとから遅れて飛んできたウインドカッターが命中し剣の速度を増加させた。


先に打っていた魔法はフェイクでこのウインドカッターに剣速をあげてもらうエンジンの役目をしてもらう作戦だ。ウインドカッターの微調整は昨日散々やったからな。





「浅い・・!」





「ッッツ!生意気なんだよ!」





俺の決死の作戦はギリギリで勇人に反応され後ほんのわずかで受けられてしまった。


クソ!もう打つ手が・・・





「少しだけ焦ったぞ。だがもう終わりにしてやる![ホーリーバインド]!」





勇人が手を前に突出し何かのスキルを使ったようだ。・・・・?!体が動かない!?なんだ?ホーリーバインド?バインド・・まさか!





「これが俺の新しいスキルの1つだ!聖なる力で相手を拘束する。人間、というか杏奈には数秒しか効かなかったが・・・お前にはよく効いてるみたいだな?」





「クッ!勇人!お前さわやかイケメンのくせにこういうアブノーマルなのが好みだったのか?」





「減らず口を!喰らえ!ダブルスラッシュから生まれたもう一つの新スキル![閃洸牙せんこうが]!」





勇人がスキルを使用し剣を振るうと2連撃どころではなく無数の剣閃が身動きのできない俺を襲った。





ガガガガガガガィン!





「ぐああああ!!」








「須藤!」





「ギンジ君!!」





「全力で撃たなかったし刃引きもしてある。それに仮にも勇者だったんだ。死ぬことはないさ。回復魔法でもかけてやってくれ。」





勇人はくるりと振り返り歩いていこうとしたが思い出したように倒れてる俺の方に近づいてきて俺の耳元で呟いた。





「お前はいちいち邪魔だったんだよ。おとなしくモブやってればよかったのにな。これで真弓の心も王女の身体もこの世界も全部俺のものだ。」





俺が邪魔?東雲さんに王女様?・・よく聞こえないぞ・・・痛てぇな・・お、俺は負けるのか・・・やっぱり低スぺじゃ高スぺには勝てないか・・・なんとか一撃入れたかったが仕方がないか・・兵士としてでも出来る事はたくさんあるはずだよな・・・





俺の意識は徐々に失われていった。








「しょ、勝者ジン・・・??なんだ?」








ドクン








────くこい────  








五月蠅いな。体も痛いし少し眠らせてくれよ。








────速く来い────








速く来いってどこにだよ。もういい加減にしてくれ。











ドクン











────来ないなら────











ん?











────来ないなら────











来ないならなんだよ。











ドクン ドクン

















────われがもらうぞ!────








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