第17話 疑義

帰り道はたまにラビ―が出たくらいで無事に城へ帰って来ることができた。


その際兵士たちの疲労を考えて俺が馬車から顔を出してフレイムボール砲台となってラビ―を討伐していった。


そのおかげかついたころには勇者勢はみんなレベル10になっていた。





兵士たちが「スドウ様!助かります!」とお礼を言ってくれるのだが3,4回当てないと倒せないしこれと言って疲れる事もないので気にしないでと言っておいたけど。





「銀次君お疲れ様!」





「おつかれさん!」





「それじゃー。また明日ね!」





「では明日またお迎えにあがります。王女様参りましょう。」





「今日は本当にありがとうございました。明日もよろしくお願いします。」





そういいながらエミリア王女たちと別れるとちょうど反対側から勇人と姫崎がやってきた。





「あら。みなさん疲れたお顔をされてどうされましたの?」





「姫崎か。いや、俺の修行に付き合ってもらおうと思って少し遠出したら強力な魔獣と出会ってしまったんだ。なんとか討伐して帰ってきたから修行どころじゃなくなった。」





「って言う事はレベルは上がったって事か?」





「ああ。それなりの数と質だったみたいで10になったよ。」





「ッチ。俺たちだけで先に上げておこうと思ったのにな。」





勇人、姫崎、亮汰は休んでると思っていたが。





「ん?勇人もレベル上げに行ってたのか。勇人と姫崎は今日は休む予定じゃなかったのか?」





「そのつもりだったんだけどやっぱり出来る事はやった方がいいと思ってな。午前は休んで先程まで狩りに行っていたんだ。俺たちも10になったよ。」





「わたくしは休んでいたかったですわぁ。せっかく一日部屋を空けていただいたのに。」





この二人朝から昼までやってたのか・・・姫崎としたいとは思わないけど、未経験者には想像ができん。


というか今回の俺たちの経験値と勇人たちの経験値は共有してないっぽいな。何が条件なんだろう?距離か?





「あぁ・・そう・・・で?亮汰は?」





「彼ならさっき街で数人の女性を連れてましたわよ。女性の肌艶がよかったので多分・・ですわね。」





まったく・・・(うらやま)けしからん。





「ウ~ィヒック!おお!勇者諸君!おそろいで!って俺も勇者だったな!ガハハ!この世界はいいな!勇者だって言うと酒はタダ!女もタダ!ガハハハ!」





亮汰が戻ってきたが明らかに酔ってるな・・・ガタイもいいし町でこんなのに絡まれたらいやだなぁ。





「亮汰。気をつけろよ。現在お前だけレベル4だぞ。街で高レベルの冒険者ってのがいたとしたらお前やられるかも知れないぜ。」





「なんだと勇人!俺が喧嘩に負けるってのか?!って、ん?まてまて!今俺だけレベル4って言ったのか?」





勇人が馬鹿にするような口調でそう言うと亮汰がキレた、かと思ったがすぐに言葉の意味を理解したみたいだ。こいつは本当に飲みに歩いてたみたいだな。一応補足しておこう。





「そうだよ。勇人とは別グループだったけど亮汰以外は今レベル10みたいだな。」





「なんだよ!銀次を少しでも使える様に修行するだけって言ってただろ!なんでレベルまで上がってんだよ!」





「修行しようと思ってたら魔獣に襲われたんだよ。」





「ああ!クソ!俺は下に見られるのが嫌いなんだ!お前ら今日はもうレベル上げんなよ!ちょっと行ってくるからよ!」





どりゃあぁぁぁ!と叫びながら城の外に駆けだして行った。どこ行ったんだろう?





「忙しい人ですわね。」





結局亮汰は夜遅くに倒れこむように帰ってきた。亮汰すまん。俺回復魔法使えないんだ。


翌朝また運ばれてきた朝食を食べていると亮汰がまたおかしな事を言ってきた。





「昨日街道でラビ―を殴りまくってやっと7まで上がったんだけどまだお前らには届いてねぇ!今日はギャレスに言って他の所行ってくるからお前らもここで待っててくれ!」





「今日は遺跡に行くはずだったんだけど・・・7でもいいだろう?この時点で俺より強いんだし。」





つき合わされるギャレスもかわいそうだしな。彼だったて暇じゃないだろう。





「明日まで待ってろ!ダメだ!俺も10にしてから行く!新しいスキル覚えたみたいでよ効率上がるはずだ!おっと。スキルは後で見せてやるから!その変わり昨日いい店見つけたから連れてってやるよ!」





わがままだなぁ。





「勇人どうする?」





「まぁ戦力的にも亮汰がいた方がいいだろう。それにはっきりさせたい事もあるしな。」


「おう!じゃあ行ってくるぜ!」





亮汰はまた走り去ってしまった。仕方がない。





「ふぅ。一応みんなにも言っておこうか。」





ライーザさんたちが迎えに来てくれたのでよくわからないが事情を説明した。





「なんなん?自分が遊び呆けてたのが悪いやんけ!あのエロ筋肉が!」





「んー勇者さんたちは効率考えるとみんなで行って欲しいからなー。」





「勇者様方がそう仰るのなら無理は言えませんが・・」





西城は怒ってるしメーシーとライーザさんは残念そうだ。





「ですので王女様。少し訓練場を借りたいのですがよろしいですか?」





「え?訓練場を?何かされるのですか?」





勇人の突然の提案にみんなどういう事と言わんばかりの顔だ。何するつもりだろう。





「そうです。銀次。ちょっと手合せしてくれないか?」





「は?俺と?何の意味があるんだ?ステが違いすぎて相手にならないだろう?」





訳が解らないぞ。訓練じゃレベルも上がらないし。





「だからだよ。先日のみんなで戦いと昨日杏奈と一緒に狩りにいった時で考えたんだ。銀次。本当にお前が勇者としてこの世界に必要なのか。」





「なんだって!?」





「これはテストだ。メーシーさんも言っていただろう?何もしない何も出来ない奴をパーティに入れておく事は無駄だって。」





確かにそれは言っていた。だけど言い方は悪いが勇者間では一緒にいれば戦おうが隠れてようが経験値は一緒なはずだ。もちろん出来る事はやるつもりだけど。





「そんな!昨日だって銀次君のおかげで強い魔獣を討伐出来たんだよ!」





「ギンジ様がいなくては犠牲者も出たかもしれません!」





「わたしの偽装魔法を見破ったり無能なんかじゃないと思うけどなー。君は気づかなかったでしょ?」





東雲さんとエミリア王女、メーシーもかばってくれている。ありがたい。





「それだって俺がいればもっと楽に倒せたかもしれない。偽装魔法だって言われればすぐにわかるさ。ライーザさん。強力だと言われている外敵ってのは昨日銀次たちが戦った魔獣より弱いんですか?」





言われてから気づいたのでは意味無いんじゃ・・・





「確かに外敵の方が手強くはありますが・・それでもギンジ殿はこちらに来て数日ですが兵士達にも信頼が厚くけっして弱いわけではありません!」





ライーザさん・・確かに初陣の後も昨日も兵士達とはよくたわいもない話をしていた。そんなところも見ていてくれたのか。





「勇人様が新しく覚えたスキルは凄いですわよ!須藤君がいなくてもそれ以上の働きが出来ると思いますわ!」





姫崎は勇人と同じ考えか。それはしょうがないとも思えるが。





「じゃあどうすれば須藤の事、神宮寺は認めるんや?テストなんてゆうて普通にやったら須藤に勝ち目ないやんか!そりゃあいじめってゆうんや!ウチそういうの好きやない。」





「だから手合せって言ってるだろう?そこで銀次がそうだな・・・俺から1本取れれば勇者として認めるし謝罪もしよう。逆に無理なら勇者は名乗らずに一般兵士として戦ってもらう。どうだ?」





なんだ。よかった。





「そんな事か。なら全然かまわない。勝っても負けても俺にデメリット何もないじゃないか。負けても勇者だと名乗らなければいいんだろう?勝てるように頑張るけどな。」





「なに!?一般兵と同じ扱いになるんだぞ!?」





「負けたら戦うな、とか腹を切れ、とかだったら嫌だし迷ったりするかもしれないけど兵士としてみんなと戦うとか今と何か変わりがあるのか?」





「銀次君・・・!!」





「ギンジ様!この世界の為に・・!ありがとうございます!」





「グッ!銀次!お前はいつもそうやって・・・!」





勇人がこんなに感情出すなんて初めてみたな。昔から知ってるわけじゃないんだけど。





「逆に勇人。お前の方が謝罪しなくちゃいけない分デメリット大きいんじゃないのか?」





「俺に勝てるつもりでいるっていうのか!その低いステータスで!」





レベル4になった時の数値の上昇具合から考えるとバラつきを入れても恐らく俺も倍以上のステータスが勇人にはあるだろう。倍強い、倍早い、倍固い、自分でもムリゲーすぎると思うが・・・





「わかってる。でも終わってみるまでわからないさ。」








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