第16話 スキル、才能

その後数分間待ってから大岩の下を確認しに行ったが反応はなかった。


倒したとみていいだろう。





「やった・・・のかな?」





「あー、ぺしゃんこやー。」





「もう大丈夫だろう。」





「ふう。なんとかなりましたね。」





「大成功ー!!ギンジ君バッチリだったよ!」





「メーシーがあれに気づいてくれたおかげだよ。ありがとう。」





先程メーシーがアレを見てと指差したところには渓谷上部から今にも崩落しそうな巨大岩石がグラグラ揺れていた。俺は今までずっとウインドカッターで渓谷沿いに上からの溝を刻んでいたのだ。岩石が落ちた時に横に逸れない様に線路の役目をさせるために。


その後土台部分を何度も削ってあと一撃で壊れるまで調整した。





そして最後の俺のウインドカッターは外れたのではなく俺たちのいる逆側の渓谷上部にあった巨大岩石を止めていた土台部分を壊して崩落させたという訳だ。


うまくいってよかった。土台を削りすぎでさきに落としたらみんなが危ないし一撃で壊せなかったら意味がなかったしな。





それに俺はただ落とせばいいと思っていたがメーシーが逸れたら意味がないという事で道を作っていた。Mリカバーのおかげで初級のウインドカッターなら延々と打てるからな。





「なるほど。ギンジ殿ならではの作戦ですね。」





「銀次君すごーい!!ずっと魔法打ってたんでしょ?!お疲れ様!」





「いや、リカバーのおかげで問題ないよ。普通に東雲さんくらいの威力が打てればあと一撃の微調整もいらなかったはずだしね・・・」





「まー、ちーっと卑怯な気もせんでもないけどうまくやれたんちゃうん?エライエライ!」





西城はそう言いながら俺の頭をぽんぽんしてきた。恥ずかしいからやめろ。





「ギンジ様が恥ずかしがってます・・!!ふふふ。これはいいですね・・・!」





「さりげない・・・!香織!恐ろしい子っ!」





「ところでサイジョウ殿のスキルはどんな効果があるのであろう。トロールの動きが鈍くなって倒れこんだように見えたが。」





そうだ。俺も気になっていた。デバフ系で相手の能力を下げたのかな?





「フォールダガーは切った相手を重くする効果があるみたいなんや。3回切ったから4倍になってたはずや。」





フォールって重くなって落ちるって事か。これはわかりずらいな。1回で2倍、2回で3倍、3回で4倍か。





「今のうちじゃ3回使うのが限界みたいやな。魔力切れって感じや。増えるかは知らんけどなー。後相手を切らんと意味無いみたい。鎧や剣に当たっても効果が出なかったんよ。」





際限なく重くするってのもチートだよな。生身に当てないとダメって制約があって安心した程だ。


先のトロールなんかは元があの巨体だ。一瞬で体重が4倍になんてなったら立っている事はかなわないだろう。





「西城、メーシーに投げナイフ教わったらどうだ?そのスキルで遠距離出来たら便利そうだぞ。」





「おお!須藤冴えとるな!せんせ!今度教えてや!」





「いいよ!色々応用できそうだね!楽しみだよ。」





また一つ反則技が生まれるかもしれないな。まぁこれで世界が救える確率があがるなら問題ないよな。





「後ライーザさんのスキルも凄かったよね!ライトニングセイバーでしたよね?どんな効果があるんですか?」





「ライトニングセイバーは雷の力を使ってエネルギーの剣を作るスキルですよ。大きくすればするほど威力も消費魔力も大きくなっていきます。あれを使うのは久しぶりなので少し消費しすぎてしまいましたがいい発散になりました。」





という事は剣を作るだけで実際に扱えるかは本人の剣技によるって事だよな。剣の素人じゃあそこまで早く正確には振れないぞ。





「だから団長殿は″雷光の騎士″って呼ばれ方もするんだよね?姉御?」





「姉御はよせ!その呼び名も私にはもったいない名だが。」





メーシーが冷やかすように言うといつも通りライーザさんは怒っている。ホントなんで姉御なんだろ?見た目は別に姉御って感じはしないんだけどな。由緒正しき騎士って感じで。





「あ!そういえばレベルってどうなってるんやろ?・・・おお!9になっとるで!」





「ホントだ!わたしも9だよー!銀次君は?」





最後のトロールは岩に倒して貰ったんだけどカウントに入っているのかな?その辺りがわかりずらいな。ライーザさんやエミリア王女ともパーティを組んでるからそこは入っているはずだ。





「えっと、よかった。俺も9になってるかな。」





恐らく倒した扱いになっているんだろう。ステは相変わらず1ずつしか上がっていないが・・・





「ハイエナウルフもトロールもレベル1ケタじゃまず勝てない相手だからね。普通の冒険者じゃトロールは15はないと厳しいと思うよ。」





「ええ。騎士団の所属で15を超えているものは小隊長クラスからぐらいでしょう。今回は勇者様たちがいてくれて本当に助かりました。」





ライーザさんやギャレスはいくつなんだろう?





「ライ―ザさn」





「あー!そういえばウチらはレベル上がったけど神宮寺や加瀬はどうなるんやろ?これであいつらも勝手にレベル上がってたら癪やなー!」





西城がそう言うが確かにどうなんだろうな。勇者同士でパーティーは申請出来ないがこれまでを見ると繋がっていると思う。がこれだけの差がある場合はわからないな。


別に勇者が強くなることはいい事だけどな。





「メーシー、これからどうする?ビシエ遺跡まで行くか?私はまだ大丈夫だが兵の消耗を考えると一度出直したいところではある。」





「ウチも普通には戦えると思うけどスキルはまだ使えんっぽいなー。」





「わたしも昨日のうちにマジックアローのストック作ったからまだ大丈夫だよ?」





西城はさっきので魔力を使い切ったのか。あれは強力なスキルだしコストが重いのかもしれないな。ライーザさんについてはあのスキルを使ってもまだ余裕があると。さすが騎士団長だ。


東雲さんはやっぱり魔法をストックしておけるってのはデカい。俺はウインドカッターしてただけだから問題なし。





「うーん。ラビ―種くらいしか出ないこの辺りでハイエナウルフとトロールでしょ?ちょっと嫌な感じがするね。なんとなく瘴気が濃いような気がしない?」





確かに空は雲もほとんどなくいい天気なんだがどんよりとした感じがしないでもない。なんとなくだけど。





「瘴気ってのはよくわからないけどなんだか暗くて重い感覚があるな。」





「銀次君もそう思った?わたしも少し気持ち悪い感じする。」





「そうなん?ウチはわからんなー。」











ドクン





────早く────








まただ。気のせいじゃない。何かに呼ばれている。


後でメーシーに聞いてみよう。








「おーい。ギンジ君?聞いてる?今日は帰って明日また他の勇者さんたちも一緒に来ようと思うんだけど?」





「ん?あ、ああ!かまわないよ。」





俺たちは色々考慮して一度引き返すことにした。誰かが倒れたりまた魔獣の襲撃があっても大変だしな。





帰りの馬車はまたジャンケンで決めて俺、東雲さん、王女になった。それと今回は馬車内の席を決めるのにもジャンケンになった。


そんなに俺の隣が嫌なのか・・確かに少し汗はかいていてベタベタするからな・・


東雲さんと王女様が小さいが強い口調でヒソヒソ話をしている。





「王女様?ジャンケンは公平ですからね?文句を言ってはいけませんよ?」





「マユミ様?先程のは後出しというものではありませんでしたか?」





「そんな事しません!」





「わたしにはそのように見えた気が・・いいでしょう。横からより正面の方がお顔も拝見出来ますし、他にも、ですよ?」





何やら不穏な空気を出しつつ馬車で帰っている途中東雲さんがエミリア王女に問いかけた。





「王女様!先程から物を落としたり靴の紐を結んだりしすぎではありませんか?」





「だってマユミ様。馬車が揺れるんですもの。マユミ様も馬車が揺れるたびに体重をかけ過ぎではありませんか?」





王女が何かを拾ったりでかがむたびに谷間が思いっきり目の前に飛び込んでくるし、馬車の揺れに合わせて東雲さんが寄りかかってくるのだ。


嬉しいは嬉しいんだけど緊張してしまってどうしていいのかわからないぞ。


ここはひとつしっかりと勇者をしなければ!





「お、王女様。よかったら回復魔法を教えて頂きたいと思うのですが・・・」





「あっ!わたしも教えて貰いたいです!もしもマジックアローに回復が込められたらすごく便利だと思うんです!」





だから東雲さん昨日回復魔法を覚えたいって言ってたのか。確かにもし出来れば凄い事だと思う。貫かれて回復するんだろうか?ちょっと怖いな。





「はい!以前も申し上げましたが私は初級しか使えませんが喜んで。それと適正がなくては発動しません。」





「わかりました。」





「まずは詠唱ですが『清らかなる水の精霊よ。彼の者の傷を癒したまえ。<<ヒーリング>>』です。その時に相手を癒すという意思を強く持って魔力を集めてみて下さい。」





「わかりました!ん~『清らかなる水の精霊よ。彼の者の傷を癒したまえ。<<ヒーリング>>』」





東雲さんが詠唱するとやわらかい光が辺りを包んだ。これは成功したとみていいだろう。東雲さんはその存在でいつも周りを癒しているからな。適正があって当然だろう。





「どうですか?」





「素晴らしいです!とても強い癒しの魔力を感じます!マユミ様なら攻撃魔法、回復魔法共に使いこなせそう!才能なんでしょうね。正直羨ましいです・・・」





やっぱり両方使える人間はなかなかいないようだな。





俺?ダメだった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る