第15話 適材適所
「まずは渓谷沿いに敵を誘導しろ!囲まれるような所で戦うなよ!」
「トロールは足止めに専念して後回しにして!まずは邪魔な群れを片付けよう!」
こちらは勇者勢を含めて20人前後。あえて少し狭くなっている所で戦う事によって囲まれて1対多数にならないようにしていくわけか。
狭すぎるとこちらも詰まってしまうのでこの辺りがギリギリか。前と横はケアしなくてはならないが後ろを取られることはないだろう。
「王女様!お願いします!」
「はい!マユミ様も援護をお願いします!『熱く迸る火の精霊よ。我に従い炎と化したまえ。その炎によりて我が標的を焼き払え!<<フレイムサークル>>』」
ゴオオォォオオ!!
エミリア王女が詠唱を終えるとハイエナウルフの群れに太い炎の渦が現れ群れを飲み込んでいく。範囲魔法か。中級魔法になるのかな?
グギャン!キャゥン!
なかなかのダメージを与えたようだが倒せたものは数匹のようだ。
「なかなかしぶといですね!もう少しでサークルの効果が切れます!」
少しサークルの勢いが小さくなってきた時に東雲さんが前に出てきた。
「王女様頑張ってもう少し維持して下さい!『優雅なる風の精霊よ。我に従い刃と化したまえ。我が標的を切り刻め!<<ウインドカッター>>』」
ギュイイィィ!ザンッ!ザンッ!
東雲さんの放った魔法は文字通り2つの風刃となって炎の渦に直撃した。敵にじゃなくてフレイムサークルに当てたのはなんでだ?・・・あ、もしかして!
ゴオオオオオォォォォオオオオオ!!
やっぱり。エミリア王女のフレイムサークルの威力が強くなっていく。
炎の渦にあえて刃となった風を送る事で炎の威力を上げたのか。しかも風は刃になってるから炎をまとい渦を駆け巡っている。さしずめ炎風刃えんふうじんって所か。
「凄い・・・!こんな事が出来るなんて!さすが勇者ですね!マユミ様!」
「もしかしたらって思って。うまく行ってよかった!」
「なるほどね。理屈ではわかったけどそれを瞬時に実行できるってのは才能だね。先生がハナマルをあげるよ!」
エミリア王女と東雲さんの混合魔法にメーシーも興奮気味だ。
「王女様、シノノメ殿!ありがとうございます!よし皆!弱った残りの敵を片付けるぞ!」
「おっしゃー!いっくでー!」
うおおおお!
西城が凄いスピードで飛び出しその後を兵士たちが残ったハイエナウルフを討伐するために駈け出して行った。
「俺も行くぞ!」
「ちょっと待って!ギンジ君!君には別に頼みがある。」
なんだ?飛び込もうと思っていたのにメーシーに止められてしまった。
「俺も行って戦いたい!危ないから見ていろって言うのか!?」
「違うよ。ギンジ君に頼むのが適任だと思ったの。あれを見て。何かピコーンと来ない?」
「・・・あぁ。なるほど。わかったよ!俺の友人はなかなか大胆な事を考えるんだな!」
「うふふ。すぐにピンと来る私の友人もなかなかだよ!」
「ハイエナだかオオカミだかわからん様なのにやられる香織ちゃんやないで~!斬っ!」
ギャン!キャン!
西城は持ち前のスピードでハイエナウルフを翻弄しつつも的確に相手を仕留めている。
4足歩行の魔獣より速いってどんだけだよって気がするな。
カオリ様につづけえええ!!
兵士たちも先の混合魔法で弱っているハイエナウルフたちを切り伏せていく。
「団長!トロールの足止めが持たなくなってきております!」
「わかった!トロールを相手してる連中は下がれ!群れの残りを叩け!私が引き受ける!」
ライーザさんがザンッ!と効果音がなるように一歩前に立った。
トロールは所々皮膚が焼けたり切れたり魔法のダメージがなかなかあるようだがあんなでかい魔獣一人でいけるのだろうか。
「ヴァルハート王国騎士団団長ライーザ・キューラック!参る!」
うがああぁぁぁ!
ライーザさんが名乗りをあげて駈け出すとトロールの1体もライーザさんに向かってきた。大きいから鈍足そうに思えるがその分一歩が広い。
あっというまに両者が間合いに入りトロールがその巨腕を振りかぶった瞬間にライーザさんが翔んだ。
「はあぁぁああ![ライトニングセイバー]!」
そう叫ぶとライーザさんの剣からバチバチっと光があふれその光が剣を覆っていく。一瞬にして光はトロールの腕程の大きさの剣となってライーザさんは光の剣を横に大きく薙いだ。
っぐが!?
ライーザさんが着地したと同時にトロールの首は地面に転がっていた。その巨体も走って来た勢いそのままに大地へと伏した。あの剣はなんだったんだ?恐らくライーザさんのスキルなのだろう。凄い威力だな。
「お見事!団長殿!」
「ああ!はぁ、はぁ、やはりこれは堪えるな。だがあと2体!メーシーいけるのか!?」
「大丈夫!準備はほとんど終わったよ!後はタイミングだけだね!王女様!マユミちゃん!トロールをこっちに引きつけられる?」
「・・・ッター、・・ンド・・・」
もう少しだ。ライーザさんも疲労の色が濃いようだな。後は任せてくれ!うまくいけば後は引き金を引くだけだ。
「わかりました!<<フレイムランス>>!」
「行くよ![マジックアロー:
があああ!? うばあああ!!
二人が暴れていた2体のトロールに攻撃をしかけるとこちらに注意を向け向かってきた。ダメージもなかなかにあるようだ。って東雲さんのスキルが増えてる・・・今度は氷の矢か。
「カオリちゃん!向かって来るトロールの足狙って!止めるだけでもいいから!」
「らくしょーや!2体まとめて転がしたるで!」
そう言いながら西城はぴょーんっとトロールの足元に駆けて行った。
「製造現場なめるんやないで![フォールダガー]!」
西城がスキルを放ちながら2体のトロールのうち先を走っているトロールの足元を3回切りつけた。西城のスキルは初めて見るが・・・
ぎぎぎっ!ぐが?! !?あがっ!!
西城に切られたトロールは急に走るスピードが落ちそのまま転んでしまった。そのすぐ後ろを走っていたトロールも転んだトロールにつまずき折り重なるように倒れこんだ。QTK(急にトロールが転んだので)だな。
「よし!カオリちゃん最高だよ!ギンジ君!今だ!」
「まかせろ!<<ウインドカッター>>!」
キィン!
東雲さんとは違い詠唱無で放った俺の渾身の1本のウインドカッターはトロールに当たらず明後日の方向へ飛んで行った。
「なっ!?」
「須藤!お前どこ狙っとんねん!!」
「トロールが起き上がって来るよ!」
ライーザさん、西城、東雲さんもどうすればいいのかあわてている。QTKしたトロールもよろよろと起き上がって来ようとしている。が、大丈夫俺はあっちを狙ったんだ。
ズズズズズ・・・
???
!???
ドーーーーーン!!!
ぐがああああああぁぁぁ・・・・・
上からの気配を悟ったトロールだがもう遅い。
超巨大な岩の塊が2体のトロールの頭上に落ち2体まとめて押しつぶした。
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