第12話 初陣
「おはよー!銀次君!」
「東雲さん。おはよう。」
翌朝、身支度をしていると女性陣とライーザさんが俺たちを部屋へと迎えに来た。
一応先日から男女別の部屋を用意してもらっている。本当は一人一人個室がいいんだけどまだ何があるか分からないしとりあえずは相部屋だ。
「真弓ちゃん!俺にはおはようのチューはないのか!?」
「あ!加瀬君!おはよー!」
「気持ちいいくらいのスルーだ!」
「なんでまゆまゆがあんたにそんな事せなあかんねん?!どつくぞ!」」
「お前には言ってねぇよ!」
「おはようございます。勇人様!」
「杏奈か。おはよう。」
こっちに召喚されて2日か・・今日はよく眠れたような気がする。まぁ昨日魔力全部出して寝たと言うか倒れたんだけどな。
「おはようございます。勇者様方。これより王都を出て騎士団の哨戒部隊と共に草原に出没する魔獣の討伐に参加して頂きたいと思います。」
「今回については緊急性・危険度共に低いんですが勇者様の初陣ということで私もお供させていただきますぜ。」
「わたしもご一緒させて下さい。何かあれば魔法でサポートさせて頂きます!」
「やっほ~私も勇者さんの力ってのを目で見てみたいからついてくよ。」
副騎士団長のギャレスと凄腕の魔法使いのエミリア王女、メーシー先生はよくわからないが危険性も少ない案件にここまでの保護があれば大事には至らないだろうって判断かな?ありがたい事だな。
「って言う事はライーザさんはこないんか?」
「ええ。流石に私まで行って王都に襲撃などありましたら問題が出る可能性がありますので。行きたいのはやまやまなのですが・・・」
ライーザさんは来ないのか。凄く行きたそうにしてるんだけど・・
「姉御。血が騒ぐんですかい?」
「姉御と呼ぶなと言ったのを忘れたのか?!血など騒いでいない!最近剣がなまっているようだから実践をしておきたいだけだ!」
「なんでギャレスはライーザさんを姉御と呼ぶんだ?」
気になったのでギャレスに聞いてみた。
「あぁ、姉御は元々バイk・・・」
ヒュオッッ
「ギャレスぅ・・さっさと勇者様をお連れしろ・・・後帰ったら覚悟しておけ。」
「行って参ります!騎士団長殿!」
き、気づいたらギャレスの頬が軽く切れてたんですけど・・?メーシーといいライーザさんといい禁止ワードがあるようだ。にしてもライーザさん怖えよ。
そうして大事にならないようにと街中を避けてきたようだけど馬車を使い1時間弱程だろうか、王都を抜けた先にある草原へ出てきた。
「うわー!凄い!わたし草原なんて初めてだよ!空気がキラキラしてる気がする!」
「街を少し離れるとかなり解放感があるんだな。」
「ウチ馬車なんて初めてやけど意外と揺れるんやなあ。」
「わたくしちょっと気分が・・・」
「ぽつぽつ広い農作地や放牧地みたいなところがあるんだな!」
確かに元の世界で草原なんて実際に見た事ないよな。モンゴルって雰囲気かな。
「ええ。このあたりで育てる家畜や野菜の味はなかなかですぜ。そういう物を狙って来る魔獣を討伐するのが今回の目的って訳で。」
「今の所は現れていないみたいだけど・・・っと。言ってるそばから来たみたいだね。」
メーシーの指さす方を見てみると数十メートル先に何かの群れが見えた。数は50体程だろうか。かなりの数がいるな・・・だんだんとこちら近くの放牧地に近づいてくる。その姿が見えてきた。
「あー!うさぎさんだ!カワイイー!」
「ほんまや。ぴょこぴょこしててあれがホントに魔獣なん?」
確かにウサギだ。長い耳が途中で折れててピョンピョン跳ねてるな。
見た目はカワイイし俺でもなんとかいけるかな?
「気を付けて下さいね!あれはラビ―種です。見た目はカワイイですが雑食で凶暴ですよ!」
「ヘヘッ!王女さんよ!勇者を舐めんなよ!あのくらい一撃で吹っ飛ばしてやるぜ!」
「可愛くて逆に退治するのがかわいそうなくらいですわね!」
亮汰はそう言いながら腕を姫崎は鞭を振り回している。まぁ大丈夫そうだけど・・
「さぁ!いくぞ!俺たちの初陣だ!さくっとやっつけよう!」
勇人もやる気十分だ。ラビ―種はちゅーちゅー鳴きながらこちらに近づいてきた。鳴き声はねずみみたいなんだな。
そこへ姫崎が飛び掛かっていった。こんなに積極的だったとは。
「一番鞭はわたくしがもらいますわ!勇人様見てて下さい!それ!」
「ちゅー?ちゅーちゅー!」
ち゛ゅっっ!!
カァン!
「な、なんですの!?」
「キザキ殿!気を抜かないでくだせぇ!ラビ―種の武器は瞬発力のある足と耳に見える2本のツノですぜ!」
姫崎が鞭を振りかぶったその瞬間にラビ―種がたれ耳と思っていた部位をピキン!と立てて急接近してきてきた。
そこにギャレスが割って入ってきて耳もといツノを剣で受け止めた格好になった。
「今だ!ラビ―種を攻撃して!」
メーシーの指示に反射的に体が動いた。
「う、うおおおおお!!」
ザンッ!
思いっきり剣を振り下ろすとラビ―種を真っ二つ、とはいかず肩口から腹の途中で剣が止まってしまった。
「ち゛、ち゛ゅうぅ・・・」 ドサリ
「はぁ、はぁ、や、やった!・・・これが敵を切った感覚なのか・・・」
なんとか倒したようだけどこれは体も気持ちも重たいぞ・・・
その後ギャレスのサポートもあってもう一匹なんとか倒したがあいつらは大丈夫なのか?
「訓練で相手していた小隊長よりも軽いな!ハッ!」
「遅い!遅いで!」
「おおお!!どりゃ!そんな攻撃痛くもねぇぜ!」
「よくもわたくしに恥をかかせてくれましたわね!償いなさい!」
あれ?騎士団の兵士たちがうまくフォローしてくれて1対多数にならないように調整してくれているみたいだけど同期の皆は余裕のようだ。
勇人はラビ―種を一刀両断だし西城の動きにラビ―種は目を回している。
「苦戦しているのは俺だけか・・・」
「銀次君危ない![マジックアロー:
ドン!ゴォォオ!
「!?」
突然の声に反応して後ろを振り向くとラビ―種の背中に炎の矢が刺さりラビ―種を焼いていく。俺は背後から襲われる所を東雲さんに助けられたようだ。
マジックアローといっていたが・・・
「ありがとう!東雲さん!今のはスキルだったりするの?」
「どういたしまして!気を付けてね!そうみたい。さっき急に頭にピンと来たんだー!矢に魔法を込めて放てるスキルみたい。打たなければ矢筒にいれてストックも出来るみたいだよ!」
つまり魔法の矢を携帯出来ていつでも放てるって事か?魔力の回復方法が乏しい中でこれはまたチートっぽいスキルだな。
「聖剣技[ダブルスラッシュ]!!」
それから少ししてから勇人がラビ―種を聖剣技で倒すとそれが最後の敵だったようだ。
「お疲れ様でした!勇者様方。さすがですね!皆様レベル1にもかかわらず一騎当千の闘いでした!」
「フゥ、フゥ、俺だけ3体しか倒せなかったのか・・っ!いって!」
皆相当数の数を討伐していたようだ。ほとんど無傷で。俺は結構ボロボロだ致命傷を避けられただけでも運が良かったのかな。
「ギンジ様!大丈夫ですか!お怪我をなさっているようですね。少しお待ちください。『清らかなる水の精霊よ。彼の者の傷を癒したまえ。<<ヒーリング>>』」
「傷が・・塞がっていく・・ありがとうございます。」
「わたしは初級の回復魔法しか使えませんが効果はあるかと。」
「エミリア王女様!後でわたしにも回復魔法教えて下さいね!」
「え、えぇ。かまいませんが回復魔法には適正があって合わない方は魔力が高くても使えない方もいらっしゃいますが・・・」
「大丈夫です!使えます!」
東雲さんが回復魔法を教えて欲しがっている。賢者にでもなるつもりかな?いつになく鼻息が荒い。一生懸命で素晴らしいな。
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