第6話 謁見後

「俺はこの話を信じて協力しようと思う。異世界だとしても俺たちの力が必要で世界が救われる。こんなやりがいのある仕事が現実世界であると思うか?」



勇人が先程までのくってかかるような態度を一変させて協力するといいだした。なんで急に?さっきの魔法を見て完全に信じたのだろうか?



「勇人様が仰るのならわたくしも信じますわ。」



姫崎もか。まぁ勇人至上主義だがある意味人生かかってるんだぞ?



「あがいたところでどうにもなんねぇっぽいしなぁ・・・」



「うーん、まゆまゆはどう思うん?」



「私も半分信じられない所はあるけどこの方たちが困っているなら力になりたい・・かな・・銀次君はどう思う?」



皆否定的ではないみたいだな。俺もいまだ半信半疑だが今は信じて頼らざるを得ないのかもしれない。本当に帰れるのかは不安しかないけど。



「剣とか魔法とかわからない事だらけだし不安だけど俺に出来ることを精一杯やってみようと思う。」



東雲さんはそっか!と笑顔で応じてくれた。とてもカワイイ。不安も忘れてしまいそうになるな。



「ガノン王。俺たちはあなた方に協力しようと思います。生活の保障、そして1年後帰還。これを確約して頂きたい。」



勇人は代表して俺たちが相談し協力する条件を決めた事を自称、はもういいか。国王に向けて宣言した。



「あいわかった。これより我が国にいる限り待遇は保障しよう。1年後についても了承しよう。仮に決着がついていなかった場合、要請はするが嫌なら断る権利を与えるとする。後はライーザ騎士団長の指示に従ってくれ。これにて謁見を終了とする。」



俺たちは謁見の間より退出した。緊張したな。国のトップとの会談だ。日本でいう総理大臣と会うような感じかな?会った事ないからわからないけど。




「で、これから何すりゃいいんだ?」



「何って戦うんやろ?」



「誰とだよ?」



「しらん。」



「外敵ってやつだろ?聞いてなかったのか?」



「外敵ってなんや?」



「・・・」



亮汰と西城のふわっとした会話に突っ込んでみるが俺も良くわかってなかった・・・しっかり確認しないとな。仕事において確認の徹底は基本だし。



「いえ、勇者様方にはまずご自身の力を確認し強くなって頂きます。恐らくまだ外敵との戦いは難しいかと。」



ライーザさんが言うには俺たちはまだ弱いらしい。しかたがないまだレベル1だしな。これじゃ戦力にならないのだろう。



「なんだと!俺が弱いってのかよ!俺たち勇者なんだろ?敵をバッタバッタなぎ倒すんじゃねーのかよ!」



「最終的にはそうなって頂きます。現時点ではレベル1でありましょう。先程のギャレスの動きについていけなかった事お忘れでしょうか?」



「うっ・・・」



「ギャレスさんなんだか凄かったよね。」



「シュッとしたええ動きやった!」



「わたくしには影が動いたようにみえましたわ。」



俺は気づいたら前にいたんだが。こいつらわかってたのか・・・ステ差なのか?



「お二方先程は失礼しました。いやいや、あっしなんてライーザの姉御に比べたらまだまだでさぁ。」



「ギャレス!姉御というのはやめなさい。まぁギャレスは副団長ですし、実力はかなり高いので今の勇者様方では厳しいかと。ですがすぐに越えられますよ。」



「姉御が鍛えればすぐに強くなれますぜ。」



「・・・ギャレス。」



ギャレスはしまったと言わんばかりに口を押えている。ライーザさんは騎士団長だけあってやっぱりこのギャレスより強いのか・・・



「わかりました。ライーザさん。ご指導よろしくお願いします。」



「勇者様方、頭をお上げください。私の出来るかぎり力になります。それが世界の命運を握っているのですから。」



「では勇者様方。中庭を抜けた先にある訓練場にいきやしょう。あっしに付いてきてくだせぇ。」



俺たちは二人に連れられて訓練場に向かい始めたがちょっと気になることがある。歩きがてら確認してみようか。



「あの、レベルってどうやれば上がるのですか?モンスターを倒せばいいのですか?素振りなんかしてれば上がるとかですか?」



「あぁ、あっしには普通に話してくれればいいですぜ。レベルですかい?モンスターってのは魔獣の事ですかね?基本はそうですぜ。素振りでレベルがあがるなんて聞いた事ありませんねぇ。」



そういうパターンか。永遠に素振りしてれば経験値が貯まるとかはないわけだな。


筋トレなんかは効果があるのだろうか?レベル1のムキムキ(亮汰)とレベル20のヒョロガリだとどちらが力があるのだろう?そのあたりは要検証って所だな。



「それではお言葉に甘えて。なるほど、ありがとう。それから・・・うわっ!」



「これは・・・」



「こりゃスゲーな!」



「ステキやなー!」



「本当ですわね!」



ギャレスに連れられて歩いてきた俺たちだったが庭園にさしかかると一同驚きの声があがった。


この城は少し高い場所につくられていたようで眼下には城下町の様な町があり人々がせわしなく働いているようだ。町のさらに向こう側には草原が広がっていてとても壮大な雰囲気をかもしだしている。町の感じといいとても現代日本とは思えない。


東京の雑多な感じと違ってなんだか力強さみたいなものを感じるな。



「凄い綺麗・・!やっぱり日本じゃないんだね・・・見てるだけで力が出てきそう!」



「本当に異世界なのか。こんなに穏やかな雰囲気なのに世界の危機なのか?」



「ホンマやなー!ってまゆまゆなんか光ってるで!!」



「えっ?ホントだ!わっわっ!!」



東雲さんが決意を新たにと言わんばかりに拳をグッとにぎると拳を中心に何か光りだしたぞ。



「落ち着いてください。それは魔法の元となる魔力です。さすが勇者様ですね。魔法を使える者はなかなかおりません。シノノメ殿は魔力の扱いに長けているのかも知れませんね。精霊に気に入られているとも言えますが。」



「騎士団でも魔法を使えるのは半分以下ですぜ。」



ライーザさんが落ち着かせると光がおさまった。あれが魔力か。さすが東雲さん、ウィザード系だと思ったがやはりそうか。薙ぎ払うのか。



「それにジングウジ殿が言った世界の危機というのは間違いなく確実に近づいております。私たちは身を以て体験しました。人々が争っている暇はないのに・・・やつらめ!!」


ライーザさんはギリッと歯を軋ませ静かに怒っている。何か色々複雑そうだな。



「東雲さん。大丈夫?何ともない?さっきのどうやったの?」



「ふぅ。びっくりしたぁ。ありがとう銀次君!なんかね!グッてやったらグワーってなったよ!」



「・・・」



うん。わからない。感覚的な物なのかも知れない。試しにグッてやってみたがグワーと来なかった。



「あら、何か熱い感覚がありますわね。」



「本当だな。なんていうか意識を集中する感覚だな。」



姫崎と勇人は今のでわかったのか。かすかに手が光ってるんですけど。



「んーわからんなぁ。なんか引っかかる感じはするんやけど。」



「集中とかガラじゃねぇ!」



西城と亮汰は今の所ダメみたいだな。なんかちょっとだけ親近感がわいたかも知れない。俺がポンと亮汰の肩を叩くと一緒にするんじゃねぇ!と怒鳴られた。


せっかく剣と魔法の世界に来たんだ。あきらめずに出来る事を頑張ってみよう。



眼下にみる風景に感動しつつも俺たちは魔力の使い方を練習しながら訓練場へと向かった。

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