第7話 死神の名前は『ナターシャ』④

 沙樹と賢太が付き合うきっかけになったのもこの男だった、"松田 慎悟" 賢太とは入社研修の時に好きな音楽のことで意気投合してからの付き合いになる、同僚であり親友でもある大事な存在だった、慎悟の妻さくらと沙樹は学生時代からの親友だった、激しい恋に疲れていた沙樹を賢太に会わせたのは、慎悟の企みでもあったのだが意外にも二人は恋に落ち結婚した。


 家族ぐるみで付き合うことになり

 お互いの子どもたちも歳が近いこともあって時折ドライブやバーベキューで楽しんでいた、しかし慎悟は遠い北海道へと転勤になり

 年に数回会うのが2つの家族の憩いとなっていた。


 仲のよかった賢太と沙樹が離婚したことは、慎悟にとってもさくらにとってもつらい報告だった、人は出会いそしていつかは別れることを誰しもわかっている、それが死か魂の別れなのかなんて誰にもわからないのだ、

 賢太と沙樹の魂が離れることを選んだだけなのだろう。

 相談してくれたら良かったのにと思っていた慎悟だったのだが、一緒に生活していても魂が共に歩いていないのなら、別れるしかなかったのだろう。


 数年後賢太のいる本社へ慎悟は帰ってきた、そのことは賢太にとって嬉しくもあったのだが、仲の良い夫婦を目にすると複雑な気分にもなった。


 まなほ穂の声を聞いた賢太はそばにいてやらないと駄目だと思った。


『慎悟、朝早くにごめん、今日の会議行けなくなった』

『なんだよ、どうしてだよ』

『沙樹がいなくなった、まなほ穂を残して』

『…そっか、わかった、今日の資料は?』

『同行する竹下くんが同じもの持ってる、慎悟すまない。』

『わかった』

『沙樹ちゃん無事だといいな』

『すまん』

 慎悟は聞きたいこともあるはずなのに深くは聞かない、そんなやつなんだ…

『親友だな、やっぱり』



慎悟は突然の出張への準備をはじめた…


ナターシャとラルクが計画したのは、賢太と沙樹が初めて二人がデートをし、二人が結ばれ、二人が結婚を約束した場所だった。



しかしもうすでに

沙樹はそこにいたのだ


いちばん幸せな場所


愛されていた記憶とともに


命を終わらせる場所はそこにしかないと…



死神が計画するよりすでに前から

賢太は沙樹がきっとそこにいるだろうと思っていた。

どうしてそう思うのかはわからなかったけど

魂が呼ばれていると感じていたのだ。



ナターシャとラルクは目を合わせて笑った

『出る幕なかったねナターシャ』

『本当ですね』


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その頃、佑都は恋をしていた

そして本人はまだそのことに気づいていないようだ。

クレイジー・ダイヤモンド

"クレっち"はどうやってそのことを佑都に気づかせようか、悩んでいた。



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