第5話 死神の名前は『ナターシャ』②

沙樹が家を出たホントの原因は、賢太の無関心だった、仕事に追われて疲れきって帰宅する賢太は、ほとんど無言で食事をし眠るだけ


専業主婦だった沙樹は、好きな仕事も辞めて家事と育児に一生懸命だったけど、心はどんどん疲れてしまうのだった。

まなほ穂を連れて家を出たのも、突発的のことだった。

実家に戻った時には、賢太がすぐに迎えに来るのだろうと思っていたのだが、意地を張っているあいだに離婚届けが送られて来て、二人は離婚した。


仕事に復帰したのは、母子家庭でも人並みに生活したいと思うのと同時に、母親だけでなく頑張っている自分自身に肩書きがほしかったのだ、○○ちゃんのお母さんではなく、島田 沙樹というひとりの人間になりたかった、復帰した仕事は楽しく充実していたが、毎日の残業で帰宅も遅く、まなほ穂に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

『賢太も同じ気持ちだったのかな』

今ごろになって、夫の気持ちをわかっていないのは私だったのだと思い始めていた


そして


沙樹は癌の宣告を受けたのだった

子宮体がんステージ4

余命半年


医師からの宣告を受けた沙樹はまなほ穂に会うのが怖かった、先立つことを告げるのが怖かったのである。


あるビジネスホテルに入り、一晩中泣いた、そして泣きつかれて眠っていた。


死神ナターシャは寂しそうに沙樹を見つめていた。

沙樹がこの世に生まれてから一緒に過ごし、喜びや悲しみも一緒に感じていた、余命宣告を受けることは早くから分かっていたから尚更辛かった。

死神も辛いのだ


そう遠くない未来に判子を押さなくてはいけないことが辛いのだ。


ナターシャは禁止されていることをやろうとしていた、それは沙樹の元夫、まなほ穂の父親賢太の死神『ラルク』に会おうとしたのだ。


死神同士は街中で会うこともあるが、挨拶程度のことしか出来なかった、深く交わることは禁止されていたのだから。


ぐっすり眠る沙樹を見届けてから

ナターシャはラルクのところへ向かった。




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佑都と死神『クレイジー・ダイヤモンド』は、毎日ゲームをしたり、たまには喧嘩をしたり楽しく暮らしていた。


今となっては、このおっちょこちょいのオタク死神に感謝するしかないのかなと思うまでになっていた。

佑都は、自分の死神がみえるという能力の他にも、人間1人ひとりについている死神さえも見えるようになっていた。

自殺する原因になったいじめっ子の死神が、めちゃくちゃダサいやつだったり、イケてない同級生に、ナンバーワンホスト並みのイケメンの死神がついてるのが面白くて仕方なかったのだ。

しかし『クレイジー・ダイヤモンド』ってのは長すぎて呼びにくい


呼び名を考えた

クレちゃん?イジ君?

だい君?ダイモン?

なんかしっくりこないな~

『佑都君なにしてんの』

『あーお前の呼び名考えてた』

『えっ僕にはクレイジー・ダイヤモンドという名前があるんだけど?』

『だから~長くて読みにくいっていってんの』

『でも…』

『決めた、クレっちだ!今日からお前の呼び名はクレっち!な』

『………』

『クレっち!今日もゲームの続きしよ!』

夜の闇のなか、楽しそうに話しているのは、自殺願望が薄れた少年とオタク死神であった。

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