設定資料:モンスターリストその二(サルヴィの迷宮:地下七階以降更新)

<地下五階>


・ハイウォリアー(熟練の戦士)

 迷宮を根城にして長く暮らしている戦士。

 魔物たちとの戦いを経て大きく成長し、また自分たちの住処を侵す者たちを排除する。

 体力が非常に高く、また防具も迷宮から良いものを拾ってきている為防御力が非常に高い。てこずっているうちに後衛に居る高位魔術師の魔術を喰らう恐れがある。

 先に倒す場合は火力を一気に叩き込むこと。

 効かない呪文や状態異常はない。


・ハイニンジャ(熟練の忍者)

 迷宮を根城にして長く暮らしてきた忍者。

 魔物たちとの戦いを経て成長し、忍者としての技量を磨いてきた。

 気配を消して背後からの奇襲攻撃や、首狩り攻撃で冒険者に襲い掛かってくる。

 非常に素早く、通常攻撃以外にも暗器による攻撃で後衛にも攻撃してきたり、毒や麻痺を仕込んだ武器で襲い掛かったりとかなり厄介な相手。

 幸い体力はそこまで高くない。遭遇したら優先的に倒したい。


・ハイウィザード(高位魔術師)

 迷宮を根城にして長く暮らしてきた魔術師。

 迷宮で魔術の研究をして暮らしており、研究した魔術の威力を試すために冒険者に襲い掛かる。

 魔術師の例にもれず体力は高くないが、炎の乱舞ファイアーストーム吹雪ブリザード竜巻トルネード地震アースウェイブなどを使ってくる。

 遭遇した場合、真っ先に倒すべき相手。


・ハイプリースト(高位僧侶)

 迷宮を根城に長く暮らしてきた僧侶。

 迷宮で僧侶としての信仰心を更に高め、信仰する神(あるいは悪魔)に自らの信仰心を証明するために冒険者に襲い掛かる。

 完全回復トゥルーヒール物理防御上昇プロテクションの外にも沈黙サイレンスで支援し、光針ライトニードル衝撃フォースで攻撃も仕掛けてくる。

 支援のみならず積極的な攻撃も仕掛けられるようになり、また体力もそこそこ高いので始末に困る相手。


・ヴァンパイア(吸血鬼)

 ヴァンパイアロードに血を吸われると吸血鬼となる。

 はっきりとした意思をもっており、話も出来るが人間はエサとしかみなしていない。

 現在、迷宮の中で吸血鬼と呼ばれているのはこちら。

 噛まれると生命力がダウンし、力を鍛え直すためにはまた魔物を倒さねばならないという厄介な魔物。

 ヴァンパイアに血を吸われすぎると、グールとなってしまう。

 そうなった場合に助ける方法はない。

 ヴァンパイアロードは真祖とも呼ばれるが、その数は極めて少ない。

 ヴァンパイアも真祖との血を交換すれば真祖になれるが、極めて深い信頼関係を結んでいなければそのような事は起きないとされる。


・グール(屍鬼)

 人を襲いその肉を喰らう鬼。

 ヴァンパイアに血を吸われる、あるいはグールに喰われると同じ仲間となってしまう。

 生前の意識は既に無く、ただ生きている人間の肉のみを求めて彷徨っている。

 ただし力は吸血鬼並みに強く、ただ掴まれたり殴られるだけでも致命傷になりうるので、戦う場合は十二分に注意する必要がある。ゾンビと違って動きが遅い訳でもない。

 麻痺攻撃も持っている。

 解呪ディスペルは通るが、僧侶としての力量を十分に積んでいなければならない。


・バンシー(すすり泣く女)

 どこからともなくやってきてすすり泣く女の精霊、あるいは亡霊とも言われる。

 泣き声が聞こえると既に背後に居る証拠で、その後冷たい手で生命力を吸い取られる。

 窒息系の魔法は通らないが、そのほかの魔法は通る。

 防御力も高いわけではなく、物理攻撃もあまり強くないので生命力を吸われるのだけには注意すればそこまで強い魔物ではない。


・リッチ(古く高貴な屍)

 かつては貴族や王族、あるいは高名な魔術師や僧侶であったと思われる存在が、生前の意識をそのままにアンデッド化する施術を行なったもの。

 より永遠に生きて支配するために、あるいは魔術の研究をさらに深めるになど目的は様々だが、いずれにせよアンデッドである以上ろくでもない存在であることは変わりない。

 強力な魔法を使える事が多く、また召喚術にも通じておりスケルトンやゾンビなどを召喚して冒険者に襲い掛かってくる。

 不浄の手で触れられると存在力レベルが低い状態では発狂したり、あるいは麻痺を起こしたりする。生命力も吸い取られるのでまず触られないようにするのが大事。

 解呪ディスペルは僧侶としての力量がマスタークラスかそれ以上でなければ通る確率が極めて低い。

 炎の魔法と退魔術は通じるものの、なるべくなら対峙したくはない魔物。

 


・ポイズンジャイアント(毒の巨人)

 巨人族の末裔。

 毒が立ち込める沼地の出身であり、体が瘴気に適応した結果、毒の息を吐くようになった。巨人族だけに人間の何倍もの身長と体重を持ち、ただの殴り攻撃でも致命傷になりかねない。

 それ以上に冒険者にとって恐ろしいのは毒の息で、広範囲に毒をまき散らす上にダメージも高いという恐ろしい攻撃である。その上仲間を呼ぶこともあるので、一体しか居ないからと言って油断しない方が良い。複数のポイズンジャイアントと出会ったら死を覚悟すべし。

 しかし窒息サフォケイションが通る唯一の巨人族でもあり、それさえ覚えていれば一気にカモになる。リスクとリターンを考えて、討伐対象にしてもいいだろう。


・ファイアージャイアント(火の巨人)

 巨人族の末裔。

 マグマの滾る火山に住み着いており、火の力を操る……かに思えたが実はそうでもない。

 たんに火山周辺に住み着いている巨人族というだけである。

 何故迷宮に住み着いているのかは他の魔物の例によって不明である。

 持っている剣と盾で冒険者に襲い掛かってくるが、ブレス攻撃や魔法による攻撃を持っているわけではないので、比較的倒しやすい相手。

 巨人族を相手にするにはまずこいつから、とよく言われる。


・フロストジャイアント(氷の巨人)

 巨人族の末裔。

 何もかもが凍り付く大地に住み着いている。氷の力は操らない。

 ファイアージャイアントと同じく、持っている棍棒で殴りかかってくる。

 複数攻撃はもたないのでファイアージャイアントと同じように戦えばよい。

 火の魔法が比較的通りやすいのでそれを軸に。

 しかし、巨人族の一撃は致命傷なので油断はしないように。


・レッサーデーモン(低級悪魔)

 青さびた肌を持つ悪魔。

 低級悪魔とはいえ、立派な悪魔でありそこら辺の魔物とは比較にならない程厄介な魔物である。

 まず魔法抵抗力が高く、呪文は半分はかき消されてしまう。

 その上に竜巻トルネード闇の瘴気ダークブレスで複数に攻撃してくる。

 尻尾やカギ爪による攻撃も中々に強力で侮れない。

 戦士や忍者、暗殺者や侍による強力な打撃で一体ずつ片付けよう。


・クレイゴーレム(土人形)

 粘土で作られた人形。人形と言っても巨人たちと引けを取らないくらい大きい。

 元々魔術師の迷宮作成の為に造られたもので、主を失ってからは迷宮を彷徨っているだけの存在になっている。

 通行の邪魔になる冒険者を見ては襲い掛かったり、ぼーっとしていたりと思考が読めない。

 核を破壊しなければ幾ら手足を斬った所で再生してしまう。

 とはいえ所詮土で出来た人形なので、水で洗い流してしまえばやがて核だけになってしまうだろう。

 土で出来ている事を生かして、クレイゴーレムに野菜を植えて育てようとしている酔狂な者もいるらしい???

 

・フローティングアイ(浮かぶ目玉)

 大きな目玉に触手を生やした悪魔の一種。

 その目玉からレーザー光線を飛ばしてくる。

 レーザーは貫通し、前衛後衛もろとも襲い掛かってくる上に床や壁にレーザーが着弾すると誘爆するという訳の分からない性能になっている。

 それ以外にも石化睨みという状態異常攻撃も使ってくる非常に厄介な魔物。

 視線が通らないように幻影イリュージョンを使いつつ背後から攻撃する、というのが今の所一番倒しやすい方法か。

 悪魔族の例にもれず、魔法は通りづらい。


・ドラゴンゾンビ(腐竜)

 死んだドラゴンを死霊術師が不死の存在として蘇らせた存在。

 生きているドラゴンのように機敏に飛んだりは出来ないが、腐った吐息がそのままブレス攻撃になったりと非常に厄介。

 ドラゴンは元々単独で行動する性質の為、ドラゴンゾンビも単体で出現するが十分な対策をしていない場合は見かけたら逃げた方が良い。

 地下五階に出現するには強すぎる為、誰かがここまで連れて来たのではないかという噂になっている。その為か遭遇率は極めて低い。

 出会った冒険者たちは巡り合わせが悪かったと自らの運命を呪うか、それとも全力を尽くしてその上で天命を待つかの二択を迫られる。



<地下六階>


・ガスト(怨霊)

 生前の何らかの怨みや憎しみを募らせたまま死んだ人々の霊の集合体。

 既にどのような怨みや憎しみを受けたかすら忘れ、迷宮を彷徨いながら冒険者を道連れにしようと襲い掛かる。

 霊に特有の冷たい気配を持つ。触れられると生命力を吸われる。

 物理攻撃は効果が薄いので、魔法で攻撃するか武器に何らかの属性を付与する、聖水を振りまく、退魔の儀式を行った道具で祓うなどで対抗しよう。

 また、霊には解呪ディスペルが良く効く。多少存在力レベルが低くても試してみよう。


・レイス(生霊)

 何らかの方法で肉体と霊魂を分離して戻れずに彷徨う羽目になった存在。

 魔術師の霊である事が多い。

 肉体は既に滅し、帰るべき故郷も既に滅びている事が多く、その為に誰かの肉体を欲して彷徨っている。

 レイスとして長く存在している魂は大抵自我を失って発狂している事が多いが、稀に自我を保ったままのレイスも居る。

 自我を保ったレイスの望みを叶えれば、何らかの良い事もあるかもしれない。

 この迷宮内でそのような存在が居れば、の話だが。

 

・ファントム(幻影霊)

 ガストやレイスと違い、半透明で視認しづらい霊。至近距離まで近づかないと存在すら感知できないくらい儚い。

 その存在の薄さから物理攻撃は全く通じない。

 幻影霊の名の通り、幻影イリュージョンを駆使する。

 幻影、幻覚の他には呪いの叫びカーススクリームを使ってくる。

 物理攻撃は全く行わない。

 魔法が非常によく通るので、火矢ファイアアロー程度の魔法でも倒せる。


・サイス(首無し骸骨)

 頭部のない、大鎌を持った骸骨型の魔物。一説には死霊術師が作り出したと言われている。

 接近戦では大鎌による攻撃、遠距離では暗黒の霧ダークミストで視界を塞いでくる。大鎌には麻痺毒が塗られており、攻撃を喰らった上に麻痺で動けなくなったところを切り刻まれて死ぬ冒険者が多い。

 普段はバラバラの骨の死体として擬態しており、冒険者が通りかかると起き上がって襲い掛かってくる。

 ただし近くに必ず大鎌も落ちているので、サイスとただの骸骨を見分けるには大鎌の有無を確認すると良い。


・ウィル・オー・ウィスプ(鬼火)

 青白い、漂う火のような死者の霊。愚者の火とも呼ばれる。

 天国にも地獄にも行けぬまま現世を彷徨う愚か者の霊と言われるが、詳細はわからない。

 体当たりと雷撃ライトニングボルトで攻撃してくる。

 雷撃ライトニングボルトは狭い迷宮内では避けづらく、雷対策を施しておかないと危険。

 火は火なのだが、実体はないのか水属性の魔法で攻撃しても効果はあまりない。

 物理攻撃も通りはするが当てづらく、倒す場合はまず素早さを下げる必要があるだろう。

 解呪ディスペルは非常に通りづらい。冥界にも行けないという所以の為だろうか。

 

・ライフスティーラー(生命喰らい)

 血の通っていない、ぼろきれをまとった死体のような姿をした魔物。

 屍鬼の一種と言われており、肉体よりも生者の魂を狙うように変質した。

 その名の通り、他の魔物よりも強力に生命力を吸ってくる。

 生命力をすべて失うと死ぬ上に、死者復活の魔法すら受け付けなくなってしまう。

 攻撃力や防御力は大したことはないので先制攻撃出来たら全力で叩こう。


・スクライル(浮遊髑髏)

 巨大な骸骨の頭部の魔物。一説には冥界から召喚された魔物とも言われている。

 浮遊しながら移動し、髑髏の周囲には常に闇の瘴気をまとっている。

 カタカタと顎を鳴らしながら浮遊するのは一種のホラーで、それを見て発狂する冒険者も数知れない。

 闇の瘴気は触れるとあっという間に体力を奪ってくるので、近接戦闘は基本的に厳禁。

 物理攻撃する場合は槍や弓と言った遠くから攻撃出来る物を使おう。

 魔法はそれなりに通るが、窒息サフォケイション呪死の言葉ワードオブデスは通じない。

 

・ワイト(操り死体)

 ネクロマンサーによって操られた死体。ゾンビは肉体を求めて動き、ガストなどの霊は怨みや憎しみと言った感情によって動くが、ワイトにはそのようなものはない。

 操っている術者の力量によってどのような行動が出来るかが決まる。

 より術者の力量が高度であればあるほど、まるで生前の人物であったかのように行動でき、あまつさえ感情まで表現できる。しかし死体は操られている自覚はない。

 ワイトの元々持っている能力によって力量の幅があり、戦う場合は生前どのような者であったのかをよく観察する必要がある。

 迷宮内で遭遇するワイトの中にはかつての冒険者の姿もあり、冒険者のなれの果てがワイトだとも皮肉で言われる事がある。

 

・ネクロマンサー(死霊術師)

 死体を操り、霊とも交信が出来る魔術を修めた術師の事をネクロマンサーと呼ぶ。

 死体を操る事から俗世間の人々からは嫌悪の対象になりやすく、よって俗世間から隔絶された山や森の中で暮らす事が多かった。

 迷宮もまた彼らの潜む場所の一つである。

 彼らは明確な争い自体は好まないが、術を究める為には死体や霊がどうしても必要であり、その為に死体を作りだす必要があった。

 迷宮の中の冒険者は死体の材料としての存在としてはうってつけである。

 故に彼らはワイトを伴って冒険者たちに襲い掛かる。

 ネクロマンサー自体はそれほど強いわけではないが、精神に訴えかけてくる呪いやパーティ内で死んだ冒険者を使役してくるなど嫌らしい攻撃をしてくる。



<地下七階以降>


・グレーターデーモン(上級悪魔)

 赤錆の肌を持つ冥界から現れた悪魔。

 巨人族以上の膂力と吹雪ブリザードを主とした魔法攻撃が非常に厄介。

 また時折、冥界から仲間を召喚する事もあり、最初は一体だけでも気づけば複数のグレーターデーモンに囲まれていたという事態に陥ってしまう事もある。

 グレーターデーモンと戦う場合は、パーティ全員の存在力レベルがマスタークラスになっている事が最低条件だと言われる。

 何故最低条件かという話だが、パーティメンバー(特に前衛)が持っている武具によっても戦闘の難易度が上下するからだ。

 例えば戦士が店売りの長剣ロングソードしか持っていない場合、いかにマスタークラスであっても苦戦は間違いない。

 それが侍がマサムネやドウタヌキを装備していた、あるいは戦士が高名な鍛冶屋、例えばグランニルの工房の剣、グランニルソードでも持っていればマスターに届かなくても倒せる可能性は大きく上がる。

 この辺りの敵になってくるとそれくらい装備が重要になるのだ。

 グレーターデーモンは冒険者たちが入念に探索する為の備えをしてきたかを問いかける魔物であると言えよう。


・ブロブ(蠢く腐肉)

 何処から現れたのかわからない魔物。一説には宇宙から飛来したとか、魔界から召喚されたとか言われているが詳細は不明。

 見た目は腐った肉のようであり、しかしスライムのようにゆっくりと動くが、獲物を捉えようとした時だけは触腕を素早く動かし、瞬く間に獲物を強い力であっという間に取り込んでしまう。

 打撃はもちろん通じず、かといって斬撃も素早く行わなければ触腕に捉えられて体に取り込まれてしまう。

 物理攻撃が通じないのであれば魔法は効くのかという話だが、魔法に弱い訳でもない。

 若干炎の方が通るかなという程度。

 耐久力は非常に高く、現れた場合は道を塞がれているというわけでもない限りは相手にしない方が良い。幸い普段の動きは遅く、攻撃も直接的なものしかない。

 酸の雨アシッドレインで溶かすのが一番有効だが、この手の魔法を使いこなせる魔法使いがまず居ない。錬金術師はサルヴィには一人しかおらず、その人は冒険者を引退してしまっている。

 ひとまず遭遇して倒そうと思った場合は燃やすのが冒険者たちの間では常套手段になっている。


・アイアンゴーレム(鉄の巨人)

 クレイゴーレムを元に更に発展させたもの。

 土から鉄に素材が変わり、更に安定性が増した。

 迷宮を警護する存在として徘徊しており、見かけた侵入者は執拗に追いかける。

 鉄なので炎を浴びせても数千度を超える高熱でなければ溶かす事も出来ず、凍らせるにも極低温でなければ動きを止める事すらままならない。魔法による祝福を施された鉄が素材である為、魔法抵抗力が非常に高い。魔法生物である為、即死呪文や窒息呪文は通らない。勿論、鉄であるので物理攻撃の耐性も高い。

 幸いな事に物理攻撃しか攻撃手段がないので、一瞬で全滅という事は無いが巨体である以上その一撃を喰らえば即死しかねないほどの威力を持つ。

 相手をする場合は、鉄をも一瞬で溶かせるような威力を持つ魔法や、鉄をも切断、破壊できる武器をもって臨みたいところだ。


・ドラゴン(竜)

 翼竜や亜竜と違う、真なる竜。

 基本四属性の竜の他にも、光と闇の竜も居るが見た事のある人は非常に少ない。

 迷宮に住まう竜は、基本的に自らのテリトリーからは動かないが、侵入してきた者には容赦はしない。

 サルヴィの迷宮で今まで見たことがある竜はファイアドラゴン(火竜)とアイスドラゴン(氷竜)だが、倒せたものはただ一つの冒険者パーティのみと言われている。

 ブレスの他にも魔法を使いこなし、爪や牙の一撃でパーティごと屠る恐るべき力を持つ。

 その体はあらゆる部位が素材となり、残すべき所は何もない。

 確かに竜の牙や骨、鱗はごくわずかでも高値で取引される。

 故に冒険者たちは一獲千金を狙い、竜を狩ろうと夢を見る。

 だが大抵の冒険者は遭遇したが最期、帰って来た事はない。

 難を逃れて帰ってこれた冒険者も戦えた者はわずかしかおらず、大抵は竜の姿に慄いて何もできずに尻尾を巻いて逃げかえったに過ぎない。

 しかし竜を倒せば一躍英雄として称えられ、それだけで一生暮らす事も夢ではない。

 だからこそ竜を倒そうとする者は後を絶たないのだ。


・サムライ(侍)

 どこからともなく現れた、東国の武装集団。

 今は侍の当主と共に迷宮にこもっている。

 剣と槍、そして弓の扱いにも優れ集団戦も得意である。

 基本的に主がこもっているとされる最下層から出てこないが、ごく稀に他の階層にも出没する事がある。その際に遭遇した冒険者はほぼ殺され、所持品を奪われた。

 鮮やかな斬撃は他の職業の追随を許さず、クリティカルヒットの確率が非常に高い。

 しかも魔法までも扱う事が出来るらしい。

 防具も重装備を施されており、ある程度の物理攻撃には耐えられる。

 魔法にはそれほど強くはないのでそこが救いではある。

 単体で現れる事はほぼなく、大体はグループ単位で出現する。

 その為、遭遇してあっという間にクリティカルヒット連発で前衛が全滅した、なんてことも起きうる。

 幸いなことに体力は地下六階以降の魔物としてはそれほど高くはない。

 もし戦う場合は後衛職の魔法で一網打尽にするのが良いだろう。


・オークロード(豚人君主)

 オークたちの総大将として存在する魔物。

 地下六階以降の魔物としてはそこまで強くはないが、あくまでそれは他の魔物と比較した場合である。

 大抵はオークロードを筆頭に他のオーク達と共に集団で現れる。

 ロードという名が付くだけに、立派な武装が施されており、剣と盾に鎧兜まで装備している。

 また魔法も中級魔法使いと僧侶程度までであれば扱える、バランスの良い魔物。

 何よりも脅威なのはオーク達を統率する指揮力であり、普段は頭が悪くバラバラに動くオーク達がオークロードの指揮の下で統率された動きをするのが驚きである。

 オークロード率いるオークの集団と戦う場合は、それまでオークと戦った経験は一度忘れた方が良い。統率されたオークほど手強い魔物は中々いないのだ。

 体力が非常に高く、倒すには侍や忍者のクリティカルヒット以外には効率の良い方法はない。高レベルの呪文ですら驚異的な耐久力で耐える事もあるのだ。

 もし遭遇してしまった場合は、数が少ない場合以外戦うのは勧められない。


・コボルトキング(犬人の王)

 コボルトたちの王として君臨している魔物。

 地下六階以降の魔物としてはそこまで強くないが、あくまでそれは他の魔物と比較した場合である。

 大抵はコボルトキングを筆頭に他のコボルト達と共に集団で現れる。

 キングと名が付くだけに頭部には立派な王冠を被り、どこから調達したのかマントまで装着している。勿論、鎧や剣なども良い物を装備している。

 魔法は扱えないが、コボルトたちを鼓舞し攻撃力を底上げするバフ効果をもたらす遠吠えやハウリングという特殊能力を持っている。

 コボルトの集団は元々統率力が高いが、キングに率いられたコボルト達は恐るべき集団戦術でもって冒険者たちに襲い掛かってくる。

 挟み撃ちや不意打ちは常套手段であり、あえてキングが囮となって攻撃を受けている間に別のコボルトに背後から襲わせる、後衛を重点的に狙うなど人間以上に狡猾である。

 逆に言えば、コボルトキングさえ倒せば統率は崩れてしまうのでどうにかしてコボルトキングを倒せば勝機が見えてくる。 


・ダークロード(闇の君主)

 心を闇に侵されて堕ちてしまった君主のなれの果て。

 かつては立派な国の領主であったらしいのだが、何があって迷宮を彷徨う存在になったのか、それは誰にもわからない。

 僧侶の奇蹟を使いこなし、また剣の技量も高い。

 他の魔物と一緒に現れる事が多く、後衛前衛両方こなせる魔物は脅威である。

 ただ装備品はロードだけに良い物を持っている事が多く、同じ君主を職業としている者はダークロードと遭遇する事を願って迷宮を探索していたりもする。

 特に君主の聖鎧ともなれば垂涎の逸品であり、戦士や君主は血眼となってそれを装備したがるだろう。体力を徐々に回復させてくれる有難い鎧であるがゆえに。


・アークデーモン(悪魔の君主)

 グレーターデーモン以上の悪魔。冥府より何者かが呼び出したか、あるいは自力で次元を超えて現世にやって来た。

 レッサーデーモンやグレーターデーモンはいかにも悪魔と言った姿だが、こちらはより人間に近い姿で現れる事が多い。そうする事で人間の心の隙間に入り込むのを目的としているからでもあるが。

 あらゆる魔法を使いこなし、また人間では使いこなせそうもない未知の魔法すら操ると言われている。

 魔法抵抗力が非常に高く、死の呪文はけして通らない。

 特に火の魔法が得意であり、全てを焼き尽くす劫火によって遭遇した冒険者を消し炭にする。

 体力は高くはないものの、そもそも通じる攻撃が物理しかないとなれば一刻も早く前衛たちによって倒すしかないのだが、大体は何らかの悪魔系魔物によって護られている事が多い。

 いかに前衛を片付け、後衛に控えているアークデーモンを素早く引っ張り出すかが勝負の分かれ目となる。


・セラフ(熾天使)

 なぜか現世に具現化した天使。火のような存在であり、大体は燃え盛る火をまとった蛇として姿を現すとされている。

 天使がこのような迷宮に存在するはずがない、という人々もいる。

 故に悪魔が天使と偽ってこのような姿を取っていると言われているが、実際の所は不明。

 熾天使の名の通り、苛烈な炎を扱って冒険者たちを襲う。

 全てを焼き尽くすほどの炎はまさに灼熱である。

 当然ながら火の魔法は通じず、生半可な水や氷の魔法は焼け石に水に等しい。

 物理攻撃には多少弱いようだが、そもそも超高温の火をまとう敵を相手に接近できる前衛がどれほどいるだろうか?

 火を一切無効化する装備、道具を持つか、或いは炎抵抗上昇フレイムレジスト水障壁ウォーターバリアなどを重ね掛けして臨まない限りは戦えないだろう。

 なお剣にも火を無効化する魔法を掛けなければ当然セラフがまとう火によって溶かされてしまうだろう。あるいは火が通じない素材を使った武具であるか。


・ゼノ(異星の生命体)

 この世の何とも言えないような、異質な存在。

 よく人間が裏返しになったような姿と例えられるが、それもまた一つの形態にすぎない。

 不定形の生き物で見た物を真似ようとするが大抵は上手く行かず、奇妙な形になる。

 一説には彗星に乗って宇宙からやって来た生命体と言われている。

 物理攻撃も魔法もある程度通じるが、即死呪文だけは通じない。

 即死呪文は生物の根幹である心臓あるいは脳と言った部分の機能を止めるものが多いのだが、ゼノに関してはこの世の生き物と構造が違う為に通じないのかもしれない。

 動き自体はそれほど早くないが、触腕だけは注意した方が良い。

 一度捕まると二度と逃れられないと言われるほどの力を持つ。

 触腕で人の脳に侵入し、自分の分身を植えつけて人を操る能力を持つ。

 驚くべきはその耐久力であり、切り刻んで潰した程度ではあっという間に復元する。

 弱点としては炎には弱いので、燃やすのが有効である。

 ただ燃やすのではだめで、体を完全に燃やし尽くさないとまた再生してしまうので、きちんと死んだのを確認せずに立ち去ると背後から襲われるかもしれない。

 炎を出す手段がない場合、ひとまず動けなくなった程度にダメージを与えてその隙に退却した方が身のためだ。


・ドッペルゲンガー(二重身)

 この世には自分と似た者が3人は居る、という話だが、全くもってそっくりな魔物。

 とはいえ、全く同じ人物が二人ではなく、見かけた人物の姿かたちをそっくりまねる魔物である。

 一体どうやっているのかはわからないが、真似た人物と性格や思考、能力ですら全く同一となり、いつの間にかパーティに入り込んで冒険者たちを混乱させる。

 もしこのオリジナルとドッペルゲンガーが入れ違いになった場合、パーティは近日中に全滅するだろう。

 とはいえ、全く対処法が無いわけではない。

 ドッペルゲンガーは光に照らした時影を発しない。これは悪魔族に共通する特徴で、ドッペルゲンガーは悪魔に属する存在だからだ。

 もしパーティに同じ人物が二人居るとなった場合は、まずこの対処法を試してみると良い。影が出来た方が本物だ。

 しかし、もし偽物と判別できたとしても能力は本物と同じだけに強ければ強いほど厄介な相手になる事は間違いない。また、倒した後の後味は悪いだろう。


・ハタモト(旗本)

 とある大名の側に仕える近衛兵のような存在の武士。

 サムライたちよりも更に忠誠心が高く、主の為ならば自分が犠牲になる事も厭わないし、主から死ねと言われれば腹を斬るという、一種の殉教者でもある。

 サムライとあまり実力的に差は無いが、恐ろしいのは統率力である。

 統制の取れた動きはサムライ以上であり、集団戦による槍ぶすまの攻撃は敵を寄せ付けない圧力を与える。

 とはいえ、能力的にはサムライなので魔法と強力な打撃を軸に戦えば、ここまで来た冒険者のパーティであればそこまで苦戦はしないと思われる。

 集団が厄介ならば切り崩して個々に対処すればよいのだ。


・キシン(鬼神):迷宮の主

 迷宮の主と呼ばれているが、詳細は誰も知らない。

 唯一知っているとすれば、かつて迷宮の主であった魔術師くらいであろう。

 ただし彼は既にこの迷宮からは追放されており、行方知れずである。


 唯一この主について語れるとすれば、出会う事があれば必ず死ぬ。

 それくらいだ。

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