第15話 特別レッスンコース?
俺の前に浮かぶウィンドウで作業しているため、密着されてるこの状況は気まずい。お胸様が当たってるんだよ腕に!
途中でコタツに座るように言われ、座っても変わらずに俺にもたれながらいじってやがる。
ミカンをつまみながら待つこと30分。ようやく終わったらしい。
できましたとの声を受けて、俺はサッと横にズレた。
「これなら自然だし、男性からも女性からもウケること間違いなしです! キャッチコピーは〝魅惑の蕾。あなたは咲かせることができるか〟です!」
「なんだその卑猥な字面は……人のキャラにそんな宣伝文句つけるなよ」
「冗談ですよー。冗談。そんな冷たい目しないでくださいー」
「ったく……」
呆れながらキャラを確認してみると、確かに雰囲気が変わっていた。
田舎の素朴な子から明るく話しかけやすい感じになったって言えばいいのか? 陽キャと陰キャの両方と話せる感じの子がたまにいるだろ? そんな感じだ。
決して目を引く派手さはないけど、地味すぎない。相手の懐に入りやすそうな雰囲気。
問題は俺がこのキャラメイクを活かせるのかどうか……キツくないか?
「メイクってすごいな……」
「そうなんですよ! まつ毛はマツエクみたいに伸ばしましたけど、アイラインもチークもリップも自然にしておきました! 普通だとメイク落としのアイテムを使わないと別のメイクができないんですが、このメイクなら上からそのままやっちゃって大丈夫です!」
「あぁ、なるほど。ちゃんと考えてくれたのか」
「そうですよー! 本当は泣きボクロも付けたかったんですけど……ホクロは記憶に残りやすいので、諜報には向かないんですよー」
「そうなのか」
あれ? 俺諜報に使いたいって言ったっけ? まぁ、実際そうだからいいか。
「お兄さん……メイクする気ありますか……?」
「えーっと……機会があったらな」
「ふーん……そうですか。とりあえず反映させますよー。ほらほら立って下さい!」
ミカンを持った俺を強引に立たせたナビっ子が「えいっ」と掛け声をかけると、俺の体が光り始めた。
眩しさに目を閉じて、そろそろいいかと開けると……一気に視点が低くなっていた。
見下ろしていたナビっ子と大差ない身長みたいだ。
「うん、うん! いい感じですよー! 鏡どうぞー」
「どうも…………うわ。声も顔も本当に女だ」
「なんですか! その反応は!」
「いや……可愛いとは思うぞ! ただ、これが自分だと思うと違和感がすごい」
「えー? 皆さん反映させると喜びますよー?」
「そりゃ作る気満々で作ったら感動もんだろ。俺の場合はナビっ子に感謝だな。俺だけじゃさっきのままだっただろうから、ここまでのクオリティは無理だった。助かったよ。ありがとう」
まぁ、そのお陰でこの違和感に襲われているんだけどな!
ナビっ子はプリプリと怒っていたのが一転して、不気味に「うふふふふ」と笑っている。
服はキャミソール。中に胸を包むパッドらしきものがあるから、ブラトップってやつだと思う。短パンはそのまま短パンで裸足。
男のときは普通にリアルで着てたTシャツとスウェットにスニーカーだったんだけど……サイズが合わないからか?
「さて、服も選びましょう!」
「ん? くれるのか?」
「はい! 可愛くなりましょー!」
「うお!」
ナビっ子が指を鳴らすと、下からタンスがいくつもニョキニョキと現れた。
驚く俺に構わず、ナビっ子がタンスから服を出して当ててくる。
「いやいや! ちょっと待て! 何だこの魔女っ子アニメみたいな服は!」
「ヒラヒラしてて可愛いじゃないですかー」
「年齢考えてくれよ……」
「お兄さんは今ピッチピチの18歳ですよー?」
「18歳でもアウトだ。俺はコスプレイヤーみたいに上手く振る舞えない。動きやすさ重視! ……男キャラで着てた服の女版みたいなやつにして下さい。お願いします」
不満そうな顔をしたナビっ子に俺が頭を下げると「しょうがないですねー」と服をタンスに戻した。
5つ以上のタンスからピックアップしているナビっ子は会話が自然すぎてNPCってことを忘れかける。
特殊なAIって言ってたし、リアルの人間のような仕様はこのゲームの
「コレでどうですかー?」
「ん? あぁ、いいと思う」
「あれー? 不満ですかー? やっぱりさっきの……」
「いやいや! それがいいです! 選んでいただきありがとうございます!」
「うふふ。やっぱりお兄さんは面白いですねー」
ナビっ子は楽しそうに笑ってるけど、俺は既に疲れてきてるよ……
「ではでは着替えましょー! さぁ、脱いで下さい!」
「えぇ!?」
俺の抵抗はナビっ子には敵わず……キャミソールや短パンはひん剥かれ、ブラジャーの付け方からレクチャーされた。
一体どこにそんな力があるのか……アレか? 特殊訓練でも受けたメイドなのか!?
黒革と布製の
何故長さが違うのか聞いてみたらこういうデザインなんだそうだ。
着替えた俺を満足そうに見つめるナビっ子を前にして、俺のライフはもうゼロだよ。
「いいですか? ドレスやワンピースを着ることもあると思いますが、基本は寄せて上げるんですよー?」
「はい……」
疑いの眼差しを向けてくるナビっ子に大丈夫だと告げる。
ここはさっさと違う話題を振った方が得策だろう。
「……次はチュートリアルか?」
「そうです! 体のバランスが違うと思うのでちゃんと慣らした方がいいですよー。では送りますねー! 行ってらっしゃーい!」
「うおっ!」
ナビっ子が言うなり、シャボン玉に包まれた俺は前回と同じく垂直に急降下。
切り替えが早すぎる!
「特別コースにご案内でーす!」
「なんだそれはぁぁぁぁ!? うぇ……」
訴えた俺はすぐに胃が浮く不快感に襲われ、それからさほど時間を置かずに足が地面に付いた。
「……ここは……」
吐かないように咄嗟に閉じていた目を開けると、前も来た体育館だった。
[ミッション。ラジオ体操]
特別コースなんて言われたからビビったが、ここは同じか。
流れているリズムに合わせて体を動かすと、[ミッション。コンプリート]と放送が入った。
その後も前と同じ内容が続き、疑似の街で武器や魔法の使い方、職人の工房体験をした。
女の体に慣れなくて、かなり時間がかかってしまった。
しかーし! 職人のおっちゃんの一人に龍族がいて龍化について少し聞けたんだよ!
職人のおっちゃんが技術の話以外で反応するキーワードみたいなのがあるらしくて、それまでスルーされてたのに〝龍化〟と〝
聞きたい内容とはちょっとばっかし違ったが、初っ端から知っているのと知らないではかなり違うだろう。
いや~、かなり有意義な時間だった!
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