第一章
第4話 チュートリアル
[ミッション。ラジオ体操]
館内放送みたいな声が響き、ラジオ体操の曲が流れ始めた。
ミッションと言うからにはやらなきゃいけないんだろう。
ちゃんと「背伸びの運動〜」と歌詞が入っているので覚えている限り歌詞に合わせて動いていく。
[ミッションコンプリート]
うろ覚えだったが、合格だったらしい。
[ミッション。握力を測れ]
周りを見ると壁沿いに体力測定の機器が置いてあったので右手と左手を計測した。
[ミッションコンプリート]
その後も放送の指示通り体力測定をこなしていく。
登り棒を登ったりや平均台を渡ったりバランスボールに玉乗りなんてのもあった。
全てが終わるとまたシャボン玉に包まれてまた急降下。
床とかどうなってんだと言ってやりたい。
次に着いたのは屋外運動場だった。
武器と魔法の使い方を一通りやった。
あのナビゲーターが言っていた通り、一応全ての武器を扱えるらしい。
上手いかと聞かれたら、答えは否だけどな!
俺は初期魔法や生活魔法と呼ばれている簡単な魔法は全ての属性が使えた。そして、わざわざ厨二病のような詠唱をしなくても大丈夫だった。
まぁ“俺は”というより、プレイヤー全般がそういう仕様になっているんだと思われる。
全てそこそこ。これ以上は流石に経験を積まなきゃ難しそうだ。
終わるとまたシャボン玉に包まれて落ちる。
次は小さい教室だった。
生徒側の机と椅子はワンセットしかない。
これは俺用だろうと座り、正面の黒板を見てみると“机の中を調べろ”と書いてあった。
机の中にはマップとノートとペンが入っていた。
マップは
等高線などは書かれていないため山などがどこにあるのかわからない。
こんな感じの世界かーってチラッと見る程度の物みたいだ。
ノートを開くとこのゲームの世界のルールというか設定が書いてあった。
1日は24時間。リアルと同じ時間だ。ただ、昼や夜とログインできる時間が決まっている人がいるため、体感では24時間だがゲームの中では
季節は地域で決まっている。北→春。東→夏。南→秋。西→冬。
1週間は6日。1ヶ月は30日。つまり1ヶ月は5週間だ。そして1年は12ヶ月。曜日はない。
魔法の属性は、火・水・風・土・闇・光・空間・無。
基本の魔法属性から派生して、氷・雷・草なんてのもある。この三つはステータスには載らない。
俺達プレイヤーにもれなく付与される鑑定・
よく小説やマンガに出てくる身体強化や気配察知なんかをスキルと呼ぶ。
冒険者ギルドや商業ギルドもあり、この辺は異世界ファンタジーと同じだ。
基本的にプレイヤーは冒険者ギルドか商業ギルドに登録してギルドカードを身分証にする。
事ある毎に身分証の掲示を求められ、身分証がないと街から街への移動に余計にカネと時間がかかるからだ。
気に入った街があれば家を買い、好きにカスタマイズして暮らすこともできる。
王政の国もあるが、民主主義の国もある。
このゲームの住人であるNPCは多種族。俺がキャラメイクで選んだ人間は人族と呼ばれていて、他にも獣の特徴を持った獣族や魔法の得意な魔族がいる。
もちろんキャラメイク時に違う種族を選ぶことも可能だ。
獣族は細かく言えば犬族・狼族・兎族・鹿族など多岐に渡り、魔族もエルフ族・ドワーフ族・天族とこれまた多岐に渡る。
この辺りもゲームあるあるだろう。
お金の単位は“z”でゼニ。
・銅貨1枚→100z
・銀貨1枚→1000z
・金貨1枚→10000z
・大金貨1枚→10万z
・白銀貨1枚→100万z
・白金貨1枚→1000万z
銅貨より下の通貨はないため、生産で作ったモノを売るときは気を付けろと書いてあった。
なるほど。桁違いなら覚えやすいし、基本的にゲームだから楽な仕様なんだろう。
後は本当に注意事項。
優しい心を持って接しましょうとか。
PK(プレイヤーキル)行為や
悪質だと判断した場合はペナルティを与えるとか。
基本的に平和に生きていれば大丈夫そうだ。
一応全部に目を通した。
後ろの方に小さく、“全て運営の判断となります。運営は一切責を負いません”と書かれていた。
この小ささは見逃す人もいそうだな……
そして最後のページにででん!と“ご了承いただければ本名でサインをお願いします”と大きく書かれていた。
せっかく買ったからにはブラックリストには載りたくない。ゲームの中くらいは仕事を忘れ、まったり平和に生きていきたいもんだ。
とりあえず、ちょこちょこ冒険者で稼ぎながらのんびりプラプラしよう。と思いながらペンでサインをした。
[お待たせ致しました。次で最後となります。擬似の街です。こちらで冒険者としての冒険者ギルドへの登録方法やクエスト受注方法、その他職人がリアル・ファンタジー・ドリーマーの世界でどういったものなのか学んで下さい]
放送が終わるとまたシャボン玉で落下した。
しかし、シッカリしすぎじゃないか?
とてもネットで見た1時間で終わる気がしない。
明日が4ヶ月ぶりの休みで良かったけど、持って帰ってきた仕事ができない。
また納期まで徹夜になりそうだ。
疑似の街では生産も手を出してみたいからと、全ての職人工房を見学させてもらった。
職人は流石ゲームだった。
錬金ではポーション作りを体験させてもらったが、魔力を流しながら材料をマドラーで混ぜるだけ。何故か薬草は溶けてなくなった。
これは料理に近い気がする。料理じゃ葉っぱは溶けないけど感覚的に。
ポーションの容器もガラス石という鉱石を錬金道具のすり鉢で粉々にして、どんな入れ物にするかと想像しながら「ポーション容器生成」と魔力を流しながら言えばいいだけ。
成分や配合率などマルっと無視で、簡単の一言に尽きる。
確かにこれならじいちゃん、ばあちゃんにもできるだろう。
職人にもレベルがあり職人レベルが上がるほど高度な物が作れるんだそうだ。
素材はあらゆるデータの組み合わせがレシピ化されていて、俺たちプレイヤーは自分でレシピを探し当てて作ることになる。
全く未知の物はできないが、全てのレシピをコンプリートするのは不可能に近いらしい。レシピを見つけることも楽しそうだ。
[見学が終わったようですね。全部見学するなんてやっぱりお兄さんは真面目さんですねー! あっ! ゴホンッ! ……それでは、今から始まりの街にお送りします。あなたの夢が叶うことをお祈りしております]
(あのウサ耳メイドの声だったのか! ってこの声俺にしか聞こえてなかったのか?)
ポーション作りを教えてくれていたNPCは無反応で、色々考えている間にまたシャボン玉に包まれて今までよりもスピードを付け落下し始めた。
「コレ慣れないから止めてくれぇぇぇぇ!!!!」
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