第5話 峠

「うん、やる事が無い」


声に出してみるが反応は無い

当然だ、だって独りだもの


書類の処理や荷物の整理に追われて

嵐の様な時間が去った後に残ったのは

何もする事の無い時間だった


娯楽の無い部屋の中でふと思う

自分は一人の時何をしてたんだろう?


・・・そうか、走ってたんだ

暇さえあればガソリンと資金の続くかぎり

それこそ寝る間も食費も削って走ってた

ただ車に乗るのが楽しくて楽しくて

仕方なかった


いつからだろう?走らなくなったのは

今はどうなってんだろ?あの峠

当時は沢山の人が集まって

盛り上がってたっけ


「ちょっと・・・見に行ってみるかな」


誰に言うわけでもなく呟いた

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