リコエル ✥ Rolling Clincher

 しっかりと噛み合った歯車の向こうに、抜け落ちた螺子の転がっている人。

 そう、全ての部品が揃っているのに——その孤独な螺子だけが、歯車の上で踊っているのだ。


「エルフィルド君……?」


 どうした? 君にしては珍しい行動だね。


 カラカラカラ、音がする。

 その表情は、どこまでが真実だろう。


「……いえ、なんでも」


 立ち入るべきではないと、思うのに。

 その瞳の奥に、謎の答えを求めてしまうのだ。


✥ ✥ ✥


 逸らされた瞳に、心底ほっとした。

 その瞳の奥に、ひどく空虚な自分が映る気がした。

 違う、そんなことは、知っている。

 ならば——恐れるのは、なんだろう。

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