三人組

「よう、お前か敦賀というのは」

 彼は名を吉崎剣介と言った。吉崎は愛知の蒲群で剣道に秀でた家計の生まれだった。祖父の吉崎喜代志は貝源一刀流の十二代で『岩伏山の天狗』と呼ばれ恐れられた。喜代志は剣介の母、安江が身籠ると道場で見学を命じ、胎内の剣介に竹刀の音を聞かせたという。剣介の幼少期は教育というより訓練かあるいは修行という類のものであった。真冬極寒の中膝まで水のある川での稽古、目隠しをしての闇試合など当たり前であった。

 剣介には兄弟が多い。兄喜一に続く次男で、ほかに妹が二人、弟が一人。剣の家といえども、剣が近代兵器の影で廃れた後に実戦で腕を振るう機会が訪れるとは誰も思っていなかった。この兄弟は誰もが剣技を鍛えたが退魔適正のある者は剣介一人であった。家族、親族一同が剣介の門出を祝った。祖父は許嫁もつけた。

「せいぜい足手まといになるんじゃねぇぞ」

 剣介は士郎に言った。いよいよ前線へと出ることが間近になり、掲示板にて三人編成が発表されたのだ。以後、訓練においてもこの三人で行っていくことになった。もう一人の名は刈谷初未、先人見た赤髪の女性であった。

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