第6話
「零音先輩、桐崎さんと付き合ってるって本当ですか?」
…そういえばいつだったか、汰月がそんな風に訊いて来た事があったっけ。確か…汰月が私に対して強く当たる少し前、咲き誇っていた桜にようやく緑がさし始めた頃。
「…そうだけど、どうかしたの?」
「いえ…一年の間で噂になっているので。興味本位ってやつですよ」
「…そっか。別に隠してないよ、もうみんな知ってるし」
ふっと微笑んで見せたはずなのに、汰月は一瞬だけ悲しそうな目をしたように見えて。でも…そんな表情も束の間、次の瞬間には「へえ、そうなんですか」と人の悪い笑みを浮かべる。
「意外ですねえ。零音先輩はそういう類いに無頓着だと思っていました」
「…まあ、あながち間違ってもないけど」
「『間違ってない』?それなら、何で桐埼さんと付き合ってるんですか?」
「それは…ううん、そんなに複雑な事じゃない。私は碧が好きだから…隣にいたいから、碧と付き合ってるの」
今度こそと柔らかく微笑めば、汰月は何も言わずに顔を背けてしまう。
…ねえ、汰月。目を逸らしたあの時、汰月は何を思っていたの?
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