第3話
「御厨零音先輩ですよね?俺、鷲尾汰月っていいます」
...今でもよく覚えている。まだ中学生を抜けきれていないような、どこかあどけなさの残る少年が話し掛けて来た時の事を。もしかしたら、私立である桜楼に推薦で入学し、まだ春休みのうちから部活に参加していたのも一因なのかもしれない。
その頃までは、ただの愛想の良い後輩だった、けど...。いつしか汰月は、事あるごとに私に絡むようになった。
「さっきシュート外してましたね」
「DF抜かれすぎじゃないですか?」
「そのくらい簡単ですよね?桜楼のエースを務める御厨零音先輩なら」
まるで、嘲笑うように。
私の失敗を咎めるかのように。
彼の言葉に隠れた悪意は日に日に姿を現し出し...最近では、蓑なんて使わずに私に刃を翳すようになった。
...思い返してみても、心当たりなんて無いのに...。この可愛げの無い後輩は、今日も私を目の敵にしたままで。
「...」
...どれだけ考えても、もう無駄なのかもしれない。
小さな溜め息を一つ漏らすと、私はまた一つ空疎な空間に地響きを刻んだ。
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