第7話 お仕事は話し相手が欲しかった

 おばあちゃんの家は豪邸でした。使用人も10人程居るとの事。こんな家入ったこと無いよ!

 執事のセバスチャンに部屋を案内されて明日から雑用をすることになりました。が、このセバスチャンさん、むっちゃ隙がない。剣も剣鬼並みらしいので今度稽古をつけて貰おう。

 アニメに出てくるじいやだよ!床下からパカって開けて出てくるんじゃ…

(道彦さん、reと天使好きですからねー)

 ナビィも突っ込みがだんだん横着になってきたな。だが、それがいい!

(はいはい)

 あっさりナビィにスルーされ、ふと思い出す。

「そういえばスマホ充電どうしたらいいのか?持っていたバッテリーはそろそろ空の筈だけど」

(道彦さん。今さらそれですか…この世界の魔道具と互換性がありますので、そこのコンセントに刺せば充電出来ますよ。どうせケーブルも充電器も一式持ってきているでしょう?他の転移者が昔に開発しているから感謝してね)

 おおう、この調子だとテレビもアニメもゲーム機も有りそうだな…本も普通にあるし下剋上はしなくて済みそうだ。

(道彦さん、アニメの内容も出てくるんですか…広過ぎますよ)

 ナビィを放置プレイして、セバスチャンに呼ばれたので、台所へ向かう。

「道彦さん。来て早々申し訳ないが 料理人が腹痛おこして調理不能になったので夕食の手伝いをお願いしたい。私は調理は不得手でしてね、材料は勝手に使って良いとおばあさまに言われております」

 米も炊いてあるようだし、おかず何品か作れば良いか。

 冷蔵庫もあり、消毒用品もかなり充実しているし、まな板漂白もされている。これなら私レベルでもなんとかなるか。昔勤めていた介護施設の調理で鍛えられて居るから大概の食事は作れる!

 まず、好き嫌いと食べられない物をセバスチャンに聞いたらおばあちゃん…マリーさんはあまり食にはこだわりは無いようだが年のせいか油濃いものはあまり食べないという。

 ならば母直伝とり肉じゃがを作りますか。出汁じゃこと椎茸、鶏肉、玉ねぎ、人参、じゃがいもを確認して、出汁じゃこを水から煮て沸騰する迄待つ間に各具材を一口に切り、玉ねぎを炒めて鶏肉を炒めて別の鍋で軽く湯がいたじゃがいも、人参を炒めている鍋に入れて出汁を入れて砂糖、味醂、醤油、近くの徳利に残っていた日本酒を入れて弱火で煮込む。

 ワカメと油揚げと味噌を発見したのでこれらで出汁に入れて味噌汁にする。と、私を買ってくれたおばあちゃんが台所に入ってきて、「おや、久しぶりに和風な匂いがするわね。昔、うちに来た異世界人が和食をよく作ってくれて居たんだけど、彼女はもう2年くらい帰って来ないから」なんて言ってくれるので冷蔵庫の中の物で使えそうな食材を物色しながら、「こちらの世界に来てすぐなので、自分の判る食材を使ったらこうなっただけです。お口に合うかは食べてからのお楽しみと言うことにしておいてください」と返しておいた。

「食事はみんなで食べた方が美味しいので、このお屋敷ではメイドたちも一緒に食べています。貴方も御一緒にどうぞ」

 どうやら私は当たりの主人に買って貰えたようだ。

 食事中に色々と質問されたりしたりしましたが、どうやら私は話し相手に買われたようです。

 マリーさんはたまに競売に行って売れ残りの私のような人を救済するのが趣味らしくセバスチャン曰く「マリーさまは昔、私も救済され、鍛えてくださったのです。あちらに魔法で固定されている赤い甲冑はマリー様のです」と異世界転移してから驚きの連続だった中でも最大の驚異を覚えながらマリーさんを見ると「嫌だわセバスチャン、もう過去の栄光を持ち出さないで。私は引退した身ですよ」と言っているのを耳にしながら(ブラッディ・マリーと呼ばれてたんだろうな…黙ってよ)と心に刻み込んだ。


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