彼等は全員で風呂敷を畳む②

 「いやぁ、最初はストーカーかと思ってオハナシ(肉体言語)してたんだけどさぁ。ちょっと落ち着いてからよくよく話を聞いてみたら、ボスが一方的にハロディさんのこと疑ってたらしいじゃん?」ワタライがアキユキを肘でつつきながらからかうように笑った。ツグミも「あの、それで私がボスさん・・・・・・じゃなかった、ドクター・アキユキに着いていったのが、あるじさ・・・・・・えっと、ハロディに危害を加えようとしていないか知りたかっただけって分かってもらえて・・・・・・」と補足した。

 「そーそー、人が居なくなった噂はアタシも知ってたんだけどさぁ、ツグミちゃんと一緒に聖職者ファーザーんとこ見に行ったら普通に入院治療してるし。マジで草。てか、もはや竹。大笑いしたで、なんか、逆にごめんねー?ってなって、めっちゃ仲良くなったんだよね」ワタライがまくし立てた。更に、「それで、私が役に立てる方法を探してるって相談したんです・・・・・・。そしたら、ワタライちゃんの治癒魔法をあっぷぐれーどして、さいぼうのふくせい細胞の複製?ができる?つくる?ようにしたいから、お手伝いして欲しいって頼まれたんです」と眉を八の字にしながらツグミが続けた。


 「で、此処に来たというわけ」やっと身体を起こし、ハロディが嘆息した。「最初はやしきで育てている植物をツグミが切って、それをワタライさんがくっつけたりしていたらしいのだけど・・・・・・。オカミとツグミから私の癒合ゆごう能力のことを聞いたのね。私とコマチが帰宅するなり実験台になってくれってごり押しよ。凄かったんだから。まぁ、ツグミもストーカーまがいの事をしたらしいし、少しならって言ってコマチに事務作業をお願いして付き合ったらこのざまよ」首を切られる感触を思い出したのか、話しながら首元をさすっていた。

 「あー、なんだ、その、すまんな」アキユキが気まずげに口を開き「肩を掴んだりも、やりすぎた」と、潔く頭を下げた。ハロディは「あぁ、あれはお互い様よ。私も連絡不足だったわ」と首を振った。「そう言ってくれると助かる。ところで・・・・・・」とアキユキの目が光った。「癒合ゆごう能力っていうのは、どういうもんなんだ?他の生物にも応用できそうなのか?!あと、治癒魔法で細胞の複製をするってことは、もっと大規模にしていくと生体義足せいたいぎそく・・・・・・いや、失った手足の復元もできるってことだよな?!それもはや治癒ってレベルじゃねーぞ!!」ワタライに向かってまくし立てるアキユキ。「ボスぅ、やっぱわかってんじゃーん!すごいんだよ癒合能力!!」眼鏡をキラリと輝かせたワタライは、アキユキと専門用語を使って早口で意見交換を始めた。


 「ああ、こうなったらもう止まりませんね・・・・・・」アキユキの秘書が腕を組んでため息をついた。「ひぇえ・・・・・・」突如始まった難しい話に目を白黒させるツグミ。メイドとしての能力を遺憾なく発揮し、「台車をお持ちします」と二人を帰すための準備を始めるオカミ。「では、私はフローティングボードの用意を」と、コマチもてきぱきとした態度で部屋を出て行った。「もー、これだから研究バカは!!」というハロディの叫び声は、誰にも届かなかった。

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俺が倒しに来たラスボスが目の前でスライムに殺られるまで。 はろるど @haroldsky

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