姫の行方
ハロディの拠点は、アキユキの予想に反して非常に堅実な印象を与えるものだった。調度類はそれぞれに質の高い品物でありながら、煌びやかさは徹底して排除されていた。落ち着いた焦げ茶と、わずかに黄色を混ぜた白、アクセントに飾られる植物のやわらかな緑で構成された空間は、来客の気持ちを宥める効果があるようだった。
アキユキが思わずといった風情で「ほぉ、なかなかじゃねぇか」と声をもらした。先導していた金髪のメイドは彼の声を聞き取り、その桃色の目を嬉しげに細めて礼を言った。やがて、一行は奥まった部屋の前で足を止めた。メイドがノックをして「オカミです。お客様をお連れしました」と告げると、扉が一旦細く開き、一拍の後にすっと大きく開かれた。
「お待ちしておりました。夜分遅くにお越し頂き、誠に恐れ入ります」扉を開けたハロディの秘書、コマチが深々と礼をする。「前置きは良い。何が分かったのか教えてくれ」アキユキは苛立たしげに手を振る。「それでは、こちらへ」コマチは一見普通の、誰もいない執務室の奥、執務机の後ろの窓際に足早に向かうと、彼等を招いた。
無防備にすたすたと歩いて行くアキユキの背後で、「隠し部屋・・・・・・ですか。しかも、防音と侵入防止のために魔方陣を使っている・・・・・・」確信を込めて囁きつつ、緊張感を漂わせるアキユキの秘書。彼は自らのボスを護るべく、密かに手の爪だけを豹に戻していった。
オカミは執務机の横で足を止めると、「それでは、私はこちらで待機致します」と洗練された仕草でお辞儀した。ホワイトブリムと、メイド服がふわりと揺れた。魔方陣を起動させつつ、「お願いします」と会釈するコマチ。やがて、三人の姿は淡い光と共に消えた。
魔方陣特有の立ちくらみのような感覚から立ち直った三人の目の前には、ハロディと、ワタライ、そして黒髪のメイドが一人佇んでいた。
「おい、こりゃどういうことだ!?」と怒声をあげるアキユキの声を遮るように、黒髪メイドのポニーテールがハロディの首を刈った。
「「は?」」唖然とするアキユキ達。コマチはその傍らで「まだやっていたのですか」と呆れたような声をあげた。
「あっボスたち速かったじゃーん!もうちょっとでコツが掴めそうだからさ、その辺に座っててよ」と、足下に転がってきたハロディの生首を拾い上げつつ、あっけらかんとした笑顔で言うワタライ。
「あのあの、ワタライ様、早く
「はいよ。しっかしスライムの身体能力マジ神秘だわぁ。ツグミちゃんさ、うちで被検体しない?バイトでも良いからさぁ」さらっと恐ろしい勧誘をしながら、ワタライはハロディに治療を施した。
ようやく元の位置に首をつけなおされたハロディは、「あぁ、もぅ。うちのツグミがご迷惑をおかけしたようだからと実験に付き合う事にしましたけど、もう十分働いたような気がするわ?私、遠出から帰ってすぐにこれよ?いい加減にして頂戴な」と嘆息する。
それを聞いたツグミは「はうぅ・・・・・・申し訳ございません・・・・・・」と肩を落とし、ワタライが「えー、良い感じになってきた所じゃん!もうちょっと良いでしょ?」と駄々をこねる。
「なぁ、そろそろつっこんでいいか?」頭痛をこらえながら、アキユキが口を挟んだ。
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