第3話
私の名前は美伊子。
この前新しい彼をGETしたばかりの恋に恋する女子高生。
え、何人目の彼氏かって?
そんな野暮な事は聞かないの。
先日の事だが、帖文堂書店でナンパされた。
という事はGETされた事になるのか。
彼の名は水島直人。
同じ高校に通う同学年の男子生徒。
オタクだけど根暗ではない。
言ってることがほとんど意味不明でわけわかんない男子。
頭は悪くないらしい。
第一声が『ねえねえ、君ってさくらちゃんに似てるね!』だった。
さくらちゃんとは、アニメのキャラクターらしい。
作品名も聞いたけど興味が無いので覚えていない。
ありえなさ過ぎて大爆笑するところだったけど。
普通は好きなアニメキャラに似てるから付き合ってって言われたら。
ドン引きして断ると思う。
まあ、イケメンなら許されるけど。
だが彼はイケメンでは無かった。
でも私は見ちゃったのよ。
遠方からこっちを伺う米澤沙由佳の姿を。
米澤沙由佳。
一年先輩の黒髪ロングの美少女。
ずっと首席で男子人気は高い。
でも男嫌いなのか理想が高すぎるのか浮いた噂一つ無い。
私はこの女が気に食わない。
才女だから?
ミステリアスだから?
抜群の美貌?
どれも一理あるんだろうけど。
一言で言えば寝とれる女?
ミスコンで何度も優勝をかっさらう様な女は。
とにかく男共がほおっておかないらしい。
彼氏がいようが結婚していようが、子供がいようが年をとっていようが。
言い寄ってくる男は無くならないらしい。
私だって恋の手管は持っている。
相手がフリーなら。
たとえ想い人がいようが落とす自信はある。
でも、彼女持ちは駄目。
まあ、いざとなったら念入りに計画を立てて。
喧嘩した直後とか倦怠期を狙って確率は上げれるし。
上手くいく事もあるかも知れない。
でもこの女が本気になったら。
彼氏だろうが旦那だろうが、全て奪われてしまう。
私は米澤沙由佳を見る度にそんな戦慄が走る。
そんな凄い女がこんな冴えない男に惚れている。
遠くから見ただけだって私には解る。
でも、当の本人はそんな彼女の熱いまなざしには気づかずに。
私に告白している。
だから私はOKした。
私が敵わないと思った米澤沙由佳が。
私に負ける瞬間が見れる。
それまでのお遊びだけど、楽しんでみよう。
そう、お遊びなのよ。
なぜなら私は彼に惚れることは無いから。
私はさくらちゃんじゃないからね。
恋するメトロノーム 鉄鉱石 @tekkoseki
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