第41話 なぜ5

『どうしたことだ』

 私のマグロがないではないか‼


 買い物袋を持って帰ってきた主。

「トラちゃん、ただいま」

「…………」

 ガサゴソ…

 私は買い物袋の中に入って、私のマグロを探した。

 無いはずはない…無い…私のマグロも、新しい玩具も…私の物は何もない。


 なぜ叩かれたのか?

 私が何をしたというのか?

「にゃぁー」

 私は主に尋ねた。

『私のマグロがないようだが?』

「トラちゃん、今日はマグロないの」

『今…無いと言ったか?』

「昨日も食べたでしょ」

『だから今日も食べるのである』

「今日はカリカリだよ」


 ゴトンと皿に盛られたカリカリフード…

『こんなん、非常食ですやん』

 私は皿の周りを爪でガリガリ引っ掻いて抗議した。

『マグロ‼マグロ‼赤身!刺身‼…エビでも可‼』

「トラちゃん‼ 毎日、毎日、刺身なんて食べられないの‼」

 主が怒る。

 私も怒る。


『せめて缶詰…を所望する』

 私は缶詰が入っている箱をカリカリ引っ掻いて要望を伝える。

「トラちゃん‼」

「にゃー‼」

 私はリビングのソファをバリバリバリバリ…存分に遺憾の意を表明してくれてやった。

「バカトラ‼」

 バシンッ‼


 食事を所望しただけのに、思い切り叩かれた…

 怒られることなのだろうか?

 叩かれる理由…

 身に覚えはないのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る