第37話 なぜ…4

『どうしたことだ』

 なぜコウモリは出てこないのか?

 夕方になると、この家の隙間から飛んでいく…今日は遅いではないか?

 裏の家の庭でチョコンと座ってコウモリが出てくるのを待つ。

 オレンジ色に染まった夕方の空にコウモリが羽ばたいている…。

 コウモリもバカではない。

 毎日、毎日、出口で猫が待ち構えているのだ、別の隙間から出入りしている。

『なぜ出てこない…』

 気づいてないのは、このトラ猫だけだ。


 隙間に前足を入れてカリカリと引っ掻いてみる。

『出てこない…』

 隙間を除いてみる…何もいない。

「にゃあー」

 呼んでみるがコウモリは出てこない。

 おかしい、この3日ほど、狩っても狩っても湧いて出てくるコウモリに歓喜していたというのに…。

 毎日楽しかったのに、今日も楽しみにしていた。

『なのに…なぜ、出てこないのかーーーー』


「トラちゃん‼ よそ様の庭で何騒いでるの‼」

 バシッ‼

 なぜ叩かれたのか?

 私が何をしたというのか?


 身に覚えはないのである。

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