第26話 なぜ…

『どうしたことだ…』

 私は、この狭い部屋に入ったことは覚えている。

 入ったときは、こんな有様ではなかった…。


 私は知っている。

 此処は私の飼い主が用を足すところ…トイレだ。

 ドアが開いていたので、入ってみたのだ。

 ここまでは覚えている。

 狭い部屋にタワーとは違う立体的な物が置かれている。

 非情に興味深い。


 私は、この新たに知ったプレイズを探索していた。

 白い置物に乗ったり降りたり…小さな窓から外を眺めてみたり。

 綺麗に整頓された白い部屋を、私は気にいった。


 カラカラカラ…

 私の尻尾がナニカに降れた。

『なんだコレは?』


 カシカシと爪で引っ掻いてみる。

 カラカラカラ…

 なにやら白い紙が伸びてきた。

『なんだコレ?』

 カシッと引っ掻くと白い紙がカラカラと出てくるではないか…。


『ハッ? なんか回ってる?』

 白い紙はデロデロデロ~と流れ出てくる。

『なんだコレは?』

 面白かった…とても…とても面白かった。


 何度もカラカラを引っ掻いた。

 無限にデロデロと紙が流れ出てくる。

 音もいい…

 飽きない。


 時間を忘れて、カラカラ…デロデロを繰り返した。


 カラカラカラカラ…デロデロデロデロ…

 狭い部屋はアッと言う間に白い紙で溢れた。


『はぁ…はぁ…』

 前足が怠い…気づけば、部屋はデロデロ出てきた白い紙だらけであった。

 シタッと床に飛び降りた。

 カサッ!!


『なんだ? 肉球に新感触?』

 白い紙は新聞紙とは違う感覚があった。

 いい肉球触りだ…

 ワシャワシャワシャワシャ…

 私は狭い部屋でデロデロ出てきたワシャワシャとした紙を爪で引き裂いた。

『アッヒャー!!』

 楽しかった。

 なんか本能のままにワシャワシャして転げまわった。


『はぁ…はぁ…』

 なんか疲れた…。

 狭い部屋で転げまわり、飛び回り、疲れた。


 ふと冷静になって狭い部屋を眺めてみた。

『メチャクチャだ…』


 私は知っている。

 私の飼い主は、綺麗好きである。

『綺麗では…ないな…』

 散らかすと怒られるのだ。


『どうしたことだ…』

 なぜこうなってしまったのか?


 私はシレッと、この部屋を出ることにした。

『何もしてません』

『何も覚えておりません』


「トラちゃん!!」


 狭い部屋から飼い主の声が聴こえる。

 どうやら私を探しているようだ。


 奴は、なぜ私を探しているのか?

 なにやら怒っているようだが…

「みゃあー」

 小さく返事をしてみて飼い主の横をシレーッと横切ってみる。

 バシッ!!


 なぜ叩かれたのか?

 私が何をしたというのか?


 身に覚えはないのである。

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