第14話 知らないところ

『お腹が変だよ…』

 なんだか苦しいような…痛いような…

 なんでだろう?

 スズメを飲んだから?

 コウモリを飲んだから?

 仕方ないよ、僕が獲ったのに取り上げようとするんだから…

 ちょっと見せてあげようとしただけなのに…


 あれは僕のだ。

 アレも僕のだ。


 みんな僕が獲ったんだから…


 だけど…お腹が変な感じ…

『ねぇ…僕…変なんだけど?』


「チャッくん、どうしたの?」

『どうもしないよ…変なだけ…』

「具合が悪いの?」

『悪くないよ…痛くて?なんだか苦しいだけ…』

「今日は、お外へ行かないの?」

『うん…僕、今日……行かない』


 隅っこへ…隅っこへ…なんだか暗い所へ、狭い所へ、足が向く。

(変な感じ…今は、誰とも会いたくないよ)

『僕、隠れるよ、探さないでね』

 暗がりでジッとしている。


「チャッく~ん」

 ピクッと耳が動くけど…

 身体はクタッと動かない…

 探さないで、呼ばないで…なんだか今日は変なんだ。

「チャッくん、こんなとこにいたの?」

『うん…僕こんなところにいたよ』


 クタッとした僕をヒョイッと抱えて、僕は車に乗せられた。

『どこに行くの? 僕、どこにも行きたくないよ』

「チャッくん、元気ないの?」

『僕、元気ないよ』

「お医者さんに診てもらおうね」

『???』

 おでかけするときは、いつも箱の中、普段は出たいよ、出たいよと鳴くけれど、今日は、なんだか出たくない…。


「チャッくん降りるよ」

『嫌だよ、僕、ココ嫌い』

 箱の中じゃ、どんなに鳴いても逃げられない。

『僕、ココ知ってる、僕に痛いことするトコ、変なモノ飲ませるトコだよ…あんだか匂いも嫌い』

 ワンワン!! キャンキャン!! ウルサイんだ。

『僕、犬嫌い』


「お腹を見せてね~」

 お髭の人、いつも僕に嫌な事する。

 ジョリジョリジョリ…

 僕のお腹の毛が無くなった…

『かっこ悪いよ!! なんだか変な感じだよ!!』


「あ~だいぶ…変なモノ飲み込んでますね…コレが苦しんでしょうね…切りましょう」

『切る?って何?』


 また、お髭のコイツは僕にチクッとするんだよ…

 嫌なんだよ…痛いんだよ…

 今日は、具合が悪いから?…なんだか…とても眠くなるのかな?


 …………

「コレが胃から摘出したものなんですが…」

 鳥の骨…髪の毛…ビニールの切れ端…

「ちょっと気を付けないと、飲み込むクセがあるみたいですね」


 目が覚めると…お腹が変だよ…

 なんだか…とても変な感じ…痛くはないけど…なんだか変な感じ…


 目が覚めると、知らないところ。

 なんだか声もでないみたい。

 必至に呼んでも誰も来ない。

『僕、帰りたいよ…』

 小さく何度も鳴いたけど、声が小さくて誰にも聴こえないみたい。


「ほら、ご飯だよ、おたべ」

『僕、お髭から、ご飯は食べないよ』


 お腹が空いたけど、お髭のこと嫌いだから、僕、お髭のご飯は食べないよ。

『僕、なんでココにいるの?』

 早く迎えに来て欲しいよ。

 なんで来ないの?

 僕が嫌いなの?


 噛むからかな?

 壁をガリガリするからかな?

 ソファをブッチブッチしたからかな?

 ………色々、イタズラしたから、僕、お髭のところに置いて行かれた?

『僕、帰りたいよー』


「えぇ…こちらで1週間ほど様子を看たいのですが…なにぶん、ご飯を食べてくれなくて…弱るだけなので、1度、お返ししたいのですが、通院にしようかと思いまして」


『お髭…僕…オマエのところ嫌い』

『お髭!! 僕またチクッとされるの?』

 診察室でオドオド…オドオド…

「お待ちしてました…いや、ホントに水しか飲んでくれないもので…」

「ご迷惑を…」

「いえ…今日は連れて帰ってもらって、後日、連れてきてください、薬は飲ませてくださいね」

「はい…」


「チャッ君…」

『お~、オマエ、迎えに来てくれたの? 僕お家帰れる?』


 フラフラと立ち上がり、ピョンッと診察台から飛び降りて、勝手に出口へフラフラと歩いていく。

『早く帰るよ、僕、ココ嫌い』

 車に乗ってお家に帰る。

『お家だね』

 ご飯を食べて、横になる。


「チャッ君…もう変なモノ食べないでね…恥ずかしいから…」


『またコウモリ獲ってくるからね、お腹の毛が生えたらね…なんだか、かっこ悪いから、毛が生えるまでは…大人しくしよ』


「チャッ君…お腹の毛無くなって…お腹縫われて…腹出して寝るんだね」




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