第7話 終の地で
街とは少し遠い場所。
僕は、ソコに捨てられたらしい。
気付けば、ココで暮らしている。
海が近くて、人が来ない場所、僕はココで暮らしてる。
なんでココにいるんだろう?
何度目を覚ましても、ココは何も変わらない。
暑い日も…寒い日も…何も変わらない。
食べ物を探しに出かけて戻っても…何も変わらない。
なんで急いで戻るのだろう?
僕はココに戻ってくる。
毎日…毎日…車が通る道路を横切って僕はココに戻ってくる。
なぜだろう?
ある日、ドヤドヤ…バタバタ…人が大勢やってきた。
うるさくて、こわくて…
だけど、ある日、お水をもらった。
ご飯ももらった。
ドヤドヤ…バタバタ…とやってくる人は、優しかった。
道路を渡らなくても、ご飯が食べれるようになった。
ドヤドヤ…バタバタ…の人達は、忙しそうに動いている。
僕は日陰で、ご飯をもらえるまで待っている。
いつも決まった時間に沢山、ご飯を貰える。
お水も飲ませてくれる。
いつの間にか、僕用のお皿が用意されて、いつでもお水が飲めるようになった。
夜もカリカリご飯を、お皿に置いて行ってくれる。
ある日、皆が僕の頭を撫でて帰って行った。
気付けば、大きなお家が建っていた。
ドヤドヤ…バタバタの人達は来なくなったけど、すぐにまた人が沢山やってきた。
僕は、お庭で、ご飯を待った。
お皿の前で座っていると、お婆さんがご飯をくれた。
翌日は、沢山のお爺さん、お婆さんが、僕を撫でたり抱っこしたり…
いつの間にか僕は、大きな家の中で暮らしていた。
寂しくはないけど…僕は、窓の外を見ている時間が多くなった気がする。
ご飯があるから、僕はココにいるのかな?
皆がいるから、僕はココにいるのかな?
気付けば、皆、窓の外を眺めている…
誰も訪ねて来ない大きな家。
ココにはお爺さんとお婆さんが大勢いる。
楽しそうで…悲しそうで…
笑っているけど…寂しそうで…
なんか僕と同じ…
1人いなくなっては…また、誰かが入ってくる。
春…夏…秋…冬…
僕は、ずっとココにいる。
景色が変わっても…人が変わっても…
僕は、変わらずにココで暮らしている。
景色が変わる…季節が変わる…人も変わる…
僕だけは変わらない…
ずっと…ずっと…気づけばココにいる。
ずっとココにいた。
今日も皆、窓の向こうを眺めている。
お爺さん…何を見ているの?
お婆さん…何を探しているの?
1人…また1人…居なくなってる…
1人…また1人…入ってくる…
僕も…なんだか…
温かい日差しの中で丸くなる。
眠いな…なんだか今日は眠いな…
なんだか解った気がする。
僕は、待っていたんだ…
母親を…兄妹を…一緒にいたはずなのに…
いつの間にか独りになった。
僕は待っていた…ずっと…ずっと…
長かったかな?
そうでもないのかな?
皆、待っているんだ…家族が来るのを…
でも…待ちくたびれて行っちゃうんだね…
僕も…待ちくたびれたよ…
日差しは暖かいのに…なんだか寒いな…
丸くなって眠ろう。
今日は眠ろう。
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