第3話 猫の娘 みぅ
白い子猫は路地裏で産まれました。
やっと歩けるようになった頃、お母さんと兄弟達と一緒にお婆さんに拾われます。
お婆さんは、一人暮らし。
毎日、お婆さんと畑に行って、日向ぼっこして、お母さん甘えて、兄弟と遊んで、夜はみんなで一緒に寝ます。
暑い日、お婆さんの家に小学生が遊びに来ました。
男の子は『ユキ』と呼ばれていました。
『ユキ』は、お婆さんの家に1週間泊まって行きました。
『ユキ』は白い猫を『みぅ』と呼んで可愛がりました。
最後の夜、「また来るよ、来年の夏に」
『ユキ』は『みぅ』に約束したのです。
『みう』は夏がよく解りません。
でも…『ユキ』は「また来る」と言ってました。
毎日居る、お婆さんとは違う事なのだということは解ります。
『みう』は毎日、今日は来る日?とお婆さんに聞きましたが、答えてくれません。
お母さんに聞くと、「人間は、猫が何を言ってるか解らないんだよ」と教えてくれました。
「でも…アタシは解るよ…全部じゃないけど…ユキのこと解るよ」
「うん…時々ね、言葉は伝わらないけど、心が伝わることがあるんだよ」
「解るよ…お婆さんのことも解るよ…時々だけど」
だから、『みぅ』は毎日待つのです。
暑い日も、雨の日も、風の強い日も、月を見ながら…お日様を見ながら…。
ある日、お月様が、『みぅ』に声を掛けました。
「白い猫…毎晩…何を待っているんだい?」
「ユキだよ」
「ユキ…あの男の子かい?」
「うん…男の子」
「逢いたいかい?」
「逢いたい!」
「逢えるよ…でも猫には戻れなくなる」
「猫…戻れなくなる…お母さんとお話しできなくなる?」
「なるよ…それでもいいなら、ユキに逢わせてあげよう」
『みぅ』は考えました。
いっぱい、いっぱい考えました。
『みう』はお婆さんに「さよなら」を言いました。
お母さんに「さよなら」を言いました。
兄弟に「さよなら」を言いました。
お母さんと兄弟は、いっぱい毛づくろいしてくれました。
お母さんは思っていたのです。
『みぅ』はきっと、ここを出ていく日が来るような…そんな気がしていたのです。
『みう』は消えかけていたお月様にお願いしました。
「ユキに逢いたい!」
「じゃあ、目を閉じなさい…」
『みう』はギュッと目を閉じました。
ふわりと身体が宙に浮いたような気がしました。
お婆さんの家の窓に、白い小さな猫が眠る様に……横たわっています。
「この子も逝ってしまった…ユキに逢いに行ったのかね…」
お婆さんが悲しそうに涙を流しながら白い小さな猫を抱き上げます。
『ユキ』は病気でこの世を去っていたのです。
お婆さんに逢いに来た年に……。
『みぅ』は2年待ちました。
毎日…毎日…ユキを待ちました。
今夜、お月様に導かれ、『みぅ』は『ユキ』に逢いに行きます。
そこは、ココではないところ…遠い…遠い…どこか。
「ユキ!待ってても来ないから、みぅ逢いに来たよ」
「一緒だよ…ずっと…ずっと…一緒だよ、もう待たないからね」
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