第2話 さんぽ道

『クロ』は野良ネコ、ソコで産まれて、ココで育って、ある雪の夜に『ミケ』と出会った。

『ミケ』は飼い猫、ドコカで産まれて、アソコのお家で飼われてる。


『ミケ』は、一人で散歩に出かける、『クロ』は少し離れて『ミケ』の後をついて行く。

 毎日ではないけれど、トコトコ歩く『ミケ』の後をついて行く。

『ミケ』は自由だと言うけれど、ちょっと不自由そうなお家に帰る。

 そこまで『クロ』はついて行くのです。


『クロ』は『ミケ』の話を聞きます。

『ミケ』は自由で不自由なお家の話をします。

 不自由だと聞くけれど、毎日ご飯が食べれるお家から出ないほうがいいとも『クロ』は思うのです。


『クロ』は、お外で眠ります。

 お外は自由だけれど、危ないし、ご飯も、時々食べられない。

 お家で暮らして、たまに外に遊びに出る『ミケ』は幸せそうに見えるのだけれど、『ミケ』は『クロ』が自由でいいなと言うのです。


『ミケ』は、お外で跳ねまわります。

 とても自由に遊びます。

 時々、後ろに『クロ』がいることも忘れるくらいに遊びます。

『クロ』は、そんな『ミケ』を危ないよと見ています。


 時々、『ミケ』が擦り寄ってくれると嬉しくて…でも、とても寂しくて。


『クロ』は自分が歳をとったことを知っています。

 野良ネコが最後はどうなるかを知っています。


 本当は、ずっと『ミケ』に、そばにいてほしいと思っても、最後を知っているからココに居てと言えません。

 だから、自分から『ミケ』には近づかないのです。


 だから…とても辛くて、寂しくて…でもスリッと触れると嬉しくて…。


『ミケ』の後ろを歩く『クロ』


 今夜も家まで見送って、『クロ』は寝床へ戻ります。

『クロ』は、そろそろ眠る頃なのです。

 それは、とても深い眠り…ずっと…ずっと…眠る頃。


 もう僕、目が覚めないでいいんだよ…でも『ミケ』は、ちゃんとお家に帰れるかな。


 お外は危ないから…『クロ』は『ミケ』が大好きで、心配で、

 でも見ていることしかできなくて。


 もしも、明日も目が覚めたなら、『ミケ』をちゃんと見守らなくちゃ…。

 もしも、今日で終わるのならば、『ミケ』をそれでも見守らなくちゃ…。


 大好きで…ずっと一緒にいたくて…それができなくて…。

 だけど、離れることもできなくて…それが悲しくて、寂しくて、

 時々嬉しくて。


 そんな毎日、いつまでも…続かないと知っているけど、それでも『永遠』を願うのです。

 知っているくせに…誰よりも…誰よりも…。


 振り返ったら僕がいるよ…『ミケ』

 でも、いつか…きっと


『ミケ』は知らなくて、いつか『クロ』がいなくなる日が来ることなんて知らなくて…。


 だから今日も、たまに振り返って『クロ』を呼んで鳴くのです。

 ちょっと怖いと『クロ』を探すのです。


 そんな『猫』の『さんぽ道』

 いつか途切れる『さんぽ道』

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