猫物語
桜雪
第1話 夜の黒猫
夜の公園に
小さな子猫、黒い子猫、この公園で暮らしている野良ネコ、
公園には何匹もの野良ネコがいます。
大きな身体の黒猫が昔から暮らしていて、『クロ』と呼ばれてました。
『コクロ』が公園で暮らす様になってから
『コクロ』は産まれて間もなく左前足を怪我してしまい、上手く走れません。
だから、時々、子供達に虐められます。
『コクロ』は昼間、公園に来る人が怖くて、いつも草むらでジッとしています。
喉が渇くと、水飲み場の近くに行って、誰かが水を飲むのを待ちます。
零れた水、溜まった水を飲むのです。
時々、
水飲み場にヒョコヒョコ歩いていくと、
だから、誰も居なくなってから、誰かが来る前に急いで水を飲みます。
公園でジッとしていると、たまに、ご飯をくれる人もいます、水を飲ませてくれる人もいます。
横取りされないように、できるだけ、その人の傍で急いで食べます。
お礼にスリッと身体を擦ると嫌がられます。
「汚い」と言われます。
夏は暑くて困ります。
喉が渇くし、零れたお水もすぐに無くなります。
冬は寒くて困ります。
遊具の陰で丸くなります。
寒いと人は来なくなります、ご飯も食べれないのです。
昼間は怖いことばかりです。
『コクロ』は朝が嫌いです。
夜になると、
スリッと身体を擦っても、撫でてくれるのです。
ご飯も食べさせてくれます。
お水も汲んできてくれます。
『コクロ』は夜が来るのをジッと待って暮らすのです。
夜は
食べ物も、お水も貰えるから、誰も『コクロ』を虐めません。
(ずっと夜ならいいのに…)
『コクロ』は夜が大好きです。
ある朝…
車が沢山公園に停まってました。
恐くて、とても怖くて…
『コクロ』は草むらでジッとしていたのです。
その夜から
何日待っても、誰も帰って来ないのです。
公園をウロウロ…ヒョコヒョコと『コクロ』は
寂しくて、小さく鳴いてみるのですが、誰も帰って来ないのです。
ある日…
『オオクロ』に子供が石を投げて虐めていました。
『コクロ』は怖くて、草むらでジッとしています。
『オオクロ』は怒って、捕まえようと伸ばした子供の手を引っ掻きました。
子供は泣きながら、居なくなりました。
次の日…
また車が公園に停まってます。
網を持った人達が、
恐くて…怖くて…
『コクロ』は草むらでジッとしていたのです。
でも…
『コクロ』は見つかって、逃げようとしたのですが、上手く走れません。
すぐに捕まって、車に投げ込まれてしまいました。
恐くて…怖くて…
『コクロ』は鳴きました。
沢山…沢山…鳴きました。
捕まった、
木に登って逃げた、
『オオクロ』も鳴いています。
バタンッ…
ドアが閉められて、真っ暗になりました。
(夜になったのかな…)
『コクロ』は思い出しました。
もしかしたら、また
夜になったし…また
バタンッ車のドアが開いて、明るくなりました。
もう朝が来た。
まだ
今日の夜はすぐに終わってしまったのです。
白いお部屋に連れて行かれて、『コクロ』はまたジッと身体を丸めます。
草むらは無いけれど…隅で丸くなります。
お部屋の真ん中に、綺麗なお水がコトッと置かれました。
『コクロ』も喉が渇いていたのですが、
(僕のお水…残ってるかな?)
『コクロ』の前にコトッと、お水が置かれました。
『コクロ』は、
お水をコクコク飲みました。
お水は綺麗だけど、少し変な味がしました。
しばらくすると…とても眠くなりました。
白いお部屋で『コクロ』は夜を待つことにしました。
眠っていれば、すぐに夜になる。
とても…とても眠いのです。
白いお部屋が、暗くなっていきます。
(もうすぐ夜がくる…
きっと、パンやおにぎり、お魚だってあるかもしれない。
『コクロ』が大好きな夜が来る。
きっと『オオクロ』も、やってくる。
夜が来るまで…
こんなに暗いんだ…夜が来たんだ。
こんなに暗いんだ…いつもの夜より、ずっと…ずっと暗いんだ。
もしかしたら、もう朝は来ないのかもしれない。
ずっと…ずっと夜のまま…
誰の声も聞こえないけど…
寂しくないよ。
ずっと…ずっと夜なんだから。
大好きな夜なんだから…
でも…今は眠いから…目を閉じて夜を待つよ。
皆を待つよ…
(おやすみ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます