第716話
「ご主人様、おはようございます。」
「おう……悪いけどマホ、眠気覚ましの紅茶を淹れてもらっても良いか……」
「えぇ、構いませんけど……昨日はよく眠れなかったんですか?」
「いや、メチャクチャぐっすり寝れはしたんだが………ふぁ~………」
大きな伸びをしながらあくびを漏らしていた俺は、バカデカいため息を零しながら倒れ込む様にソファーへ座り込んでいった。
「ふふっ、大丈夫かい九条さん。もしかして昨日の疲れがまだ残っているのかい?」
「多分な……久々に本気を出して体を動かしたから、その反動かもしれないな。」
「あらら、やっぱりご主人様も歳には勝てないって事なんですかねぇ?」
「おい、朝っぱらから人のテンションが下がる事を笑顔で言うんじゃない。ってか、昨日の戦いを見てたんなら俺がこんな状況になるのも仕方ないって分かるだろ。」
「えぇまぁ、ですがそう言われたくないならもう少しシャキッとして下さい。今日はこの後、大通りの方に行ってお買い物をするんですから。」
「……へいへい、それじゃあシャキッとする為にシャワーでも浴びて来るよ。」
「了解。なら九条さんが戻って来たら出掛けるとしようか。」
「はい、そうしましょう!ご主人様、急いで下さいね!」
「うぃーっす……」
軽く手を振りながらリビングを後にして浴室に足を運んだ俺は、シャワーから出る温かいお湯を頭から浴びながら瞳を閉じてため息を零していた。
「……流石にあいつ等には言えないな……」
そう呟きながら考えるのは覚める直前に頭の中に直接響く様に聞こえてきたノイズみたいな声……何て言っていたのかは思い出す事が出来ないが、あの時感じた心臓が止まりそうな程に感じた恐怖が一体何だったのか……
「やれやれ、隠し事をするってのは俺の主義に反してるんだけどなぁ……」
1人で秘密を抱えていた所で何かが良くなる訳じゃない。皆に相談をして打開策を考えるってのも大切な手段である事は重々承知している。だけど……
「何が起きてるのかすら分かっていないのにこんな話を聞かせてもあいつ等を無駄に困らせるだけだもんな。それにレミとユキが加護を付与してくれたネックレスも有る事だし……今は状況を静観するしかないか。」
なんて言い訳している俺って本当にズルい奴だよなぁ……ってな事を考えながら、浴室を出て濡れた体をタオルで拭いた俺はリビングに戻って行き出掛ける支度をしている皆と合流するのだった。
「ご主人様、元気は取り戻せましたか?」
「あぁ、バッチリとな。」
「えへへ、それなら良かったです!では、行きましょうか!」
「おう、それで今日は何を買うつもりなんだ?」
「ふふっ、実はこの街にしか売っていないデザインの服があるみたいでね。今日は、それを探そうと思っているんだ。」
「へぇ、賞金を手に入れたから早速散財しようってか?良い心掛けだな。」
「それと明日のクエストに使う暑さ対策用の道具。」
「……なるほど、それは確かに必要だな。」
苦笑いを浮かべながら部屋を後にした俺達は、残り少ない滞在日数を満喫する為に買い物へと向かうのだった。
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