第712話
「ふふっ、九条さんとマホなら必ずここまでやって来ると信じていたよ。」
「えへへ、それは私達も同じですよ!ロイドさん、ソフィさん、またお会いする事が出来て本当に嬉しいです!」
隠し扉を通った先にある階段を上がって行き頂上の一歩手前にある大部屋へと辿り着いた俺達は、まるでそこに居るのが当たり前の様な雰囲気を出している2人と再び対峙する事になるのだった。
『おぉ!コレは何と言う事でしょうか!海底城の秘宝を求めて最後の試練に挑もうとしているのは、同じギルドの面々でございます!まさかこの様な結果が訪れるとは、一体誰が予想した事でしょうか!』
「ふふーん、私達が予想していましたよね!」
「うん、そうだね。」
『いやはや、本当に素晴らしい事だと思います!……ですが、主催者としてはほんの少しだけ残念に思う所存でございます。何故ならば……ハイッ!』
テーラー・パークの掛け声が広間に響き渡った直後、今までとは比べ物にならないぐらいの激しい揺れが俺達を襲って来た!?
「な、何だっ?!」
「あわ、あわわわ……!」
「おやおや、コレは……」
「……壁?」
突如として床から大量の白い壁が出現してきて部屋の形が一気に変わってしまった事に思わず呆然としてしまっていると……
『秘宝を手にする為に行われる最終試練……その内容は、相手が持っている鍵を奪い頂上に至る為の扉を開けるという事だったのでございます。しかし、この階に揃っている参加者の方達は同じギルドのメンバー……ここは互いに協力をして、鍵を相手に渡すと言うのが一番の得策……そうでございますよね?』
「……だから残念だって言ったのか?一番の盛り上がりが起こりもせずにイベントが終わっちまうから。」
『えぇ、ですがどうかお気になさらないで下さいませ。ここまで勝ち上がってきたと言う結果が全てでございます。さぁ、私が案内をしますのでどうぞ通路の奥へと』
「待って。」
『おや、どうかなさいましたかソフィ様?』
「……最後の試練、やらないなんて言ってない。」
『えっ?そ、それはどう言う……』
「ふふっ、言葉通りの意味だよ。私達には2人と戦う意思がある。」
『は、はい?いえでも、貴方達は同じギルドの……』
「確かに同じギルドに所属している仲間ではある。だけど、こんなに面白そうな事を放棄するつもりは一切ないよ。九条さんとマホも私達と同じ気持ちだよね?」
……何処か確信めいた口調でそう告げるロイドの声がテーラー・パークと同じ様な感じで聞こえてきてからしばらくして、穏やかに微笑んでいるマホと視線を交わした俺は首を左右に揺らしてからガクッと肩を落とすのだった。
「はぁ……分かったよ、ここまで来て馴れ合いで終わるとかお前達が許してくれる訳ないもんな。良いぜ、秘宝の為に鍵の奪い合いをするとしようか。」
『……な……な……何と言う事でしょうか!同じギルドメンバーであるにも関わらず彼らは戦うという意思を示しました!本当に、誰がこうなる事を予想したでしょう!コレには流石の私も驚きを隠せません!観客の皆様、どうぞ彼らに盛大な拍手を!』
地上からは随分と離れているはずなのに熱の入ったテーラー・パークの言葉と共に外から大勢の人の声が聞こえてきて思わず苦笑いを浮かべていた俺は、試合が始まる前に言いたい事があったので右手を小さく上げた。
「あー悪い、少し待ってくれるか。ロイドとソフィ、それとテーラー・パークさんに1つ提案したい事があるんだが……」
『はい?何でしょうか?』
「……この試合、戦うのは俺だけって事にしてマホが手にしているライフを加算してもらいたいんだが。」
『ははぁ……その理由は?』
「えっと、こんな事を言うのは非常に心苦しいんだが……その……」
「……えへへ、言いたい事は分かっていますよおじさん。確かにその通りですよね。ロイドさんとソフィさんが相手では私が一緒だとご迷惑ですからね。」
「いや、迷惑とかじゃなくてだな……」
「大丈夫です!それよりもどうですか?この提案、聞いてくれますか?」
「……構わない。」
「うん、私としても問題は無いよ。後は主催者次第と言った所かな。」
『……かしこまりました。両者共に問題が無ければそうして頂いても構いませんよ。九条様、マホ様が腕にしているアイテムをお付けになって下さいませ。』
「どうも……悪いな、マホ。」
「いえいえ、応援していますから頑張って来て下さいねおじさん!……ただその……普通に考えたらかなりマズイ状況だとは思いますけど……」
「うぐっ、それを言うなっての……と、とりあえずウォーシューターも貸してくれ。あいつ等相手に銃が1つじゃ頼りなさすぎるからな。」
「はい……おじさん、生きて帰って来て下さいね……!」
「ねぇ、不安を更に煽る様な事を言うのは止めてくれる?」
『さぁさぁ、どちらも準備はよろしいでしょうか?これより最終試練が始まります!通路の中にはこれまで皆様が苦戦を強いられてきたトラップも数多くありますので、それらを利用しながら鍵を手に入れて下さいませ!それでは……スタート!!』
「ふぅ……それじゃあ行ってくるわ。」
「はい!いってらっしゃい、おじさん!」
両手をグッと握り締めてるマホに見送られながら2丁のウォーシューターを構えた俺は、とんでもない強敵が待っている通路の中に踏み出して行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます