第711話
勝ち上がった参加者は3組、通れる扉は2つ、第三試練が始まる階へ辿り着いた俺達は静かに深呼吸を繰り返しながらウォーシューターを強く握りしめた。
『さぁさぁお待たせ致しました!ここまで数々の苦難を乗り越えて来た皆様、本当におめでとうございます!ですが、まだ終わりではございませんよ!この階に隠されし扉を見つけ出さなければ海底城の秘宝には手を伸ばせません!』
「おじさん、いよいよですね……!」
「あぁ、始まったな。」
テーラー・パークの熱演が辺り一帯に響き渡った直後、廊下全体が揺れ動く程の振動が起こり目の前の風景が大きく変わり果てた。
『これから先、参加者の皆様に襲い掛かるのはモンスターとトラップの数々です!気を抜けば一瞬でライフを削られて失格となってしまいますので、どうかお気を付け下さいませ!それでは第三試練、スタートです!!』
「ハッ、要するに下の階で経験してきた妨害が一気にやって来るって事か。」
「えへへ、ちょっとだけ不安ですけど私達なら大丈夫ですよね!」
「おう。背中は任せたぞ、マホ!」
「はい!頼りにしていますからね、おじさん!」
視線を交わしながら同時に頷き合った俺達は、歯車が回る様な音と激しい水流音を耳にしながら歩き始めるのだった。
「……なぁマホ、さっきテーラー・パークがこの階に隠されし扉って言ってたよな。ソレってつまり、これまでとは違って普通には見つける事は出来ないって事なんじゃないか?」
「あっ、その可能性はあるかもしれませんね!もしだとしたら、今まで以上に注意をしながら進まないと……壁に仕掛けがあったりするんですかね?」
「多分な……だけど、ソレが無造作に存在しているとは考えにくいな。難易度の方はバランス調整がかなりおかしいとは思うが、そこまで難しくしちまったらイベントを楽しむってそもそもの目的が達成出来ないからな。」
「あー……だとしたら、行き止まりのお部屋がこの階には存在していてそういう所に隠されているのかもしれませんね。」
「ははっ、俺もそう思ってた所だ。よしっ、そうなりゃまずは部屋探しだな。マホ、俺は索敵をしなくちゃいけないからそっちの方は任せたぞ。」
「了解しました!っと、おじさん!誰かの足音が!」
「分かってる!とりあえずこっちだ!」
何回か機械人形共と戦闘を経験してみた結果、真正面からやり合うのは得策じゃあ無いと思うぐらい強くなっていたので俺はマホの手を握り締めると急いですぐ近くにある物陰に身を潜めるのだった。
「……や、やり過ごせましたかね……?」
「……何とかな……ったく、心臓に悪いったらないぜ……」
「すみません……私が戦力にならないせいで……」
「アホか、お前が謝る事なんか1つもねぇっての。それに文句を言うんだったら大人から子供まで楽しめるって大嘘付いたテーラー・パークに言うわ。ほら、あいつ等が戻って来る前に行くぞ。」
「は、はい!……えへへ、ありがとうございます。」
「礼を言われる事なんかしてねぇよ。」
頭をわしゃわしゃと撫でてやったからかは分からないが、笑顔を取り戻してくれたマホから視線を逸らした俺は曲がり角が幾つもある廊下に目を向けるのだった。
……それからしばらくして、避けられない戦いを何度かこなしながら廊下を進んで来た俺達は後ろから飛んで来る水の弾丸を避けながらひたすらに走り続けていた。
「お、おじさん!ライフは?!」
「大丈夫だ!マホのライフ数は!」
「っ、2つです!」
「そうか!クソっ、まさか不意打ちを仕掛けられるとは!」
背後から追って来ている美男美女の若いカップルの方に一瞬だけ振り向いた俺は、ウォーシューターを構えるとトラップがある所の真下を撃ち抜いてやった!
「うわっ!」
「ミーくん!危ない!」
「よしっ、足止め成功!マホ、今の内にそこの角を!」
「ダ、ダメですおじさん!この先は行き止まりです!」
「何ッ!?」
俺の前を走っていたマホの隣に立って曲がり角の先に目を向けてみると、そこには窓も何も無いただの壁があるだけで……!
「ど、どうしましょうおじさん!このままじゃ私達……!」
「……こうなったらそこが隠し扉のある場所だって賭けるしかない!マホ、俺はあの参加者達を足止めしておくからそれらしい仕掛けが無いか探してみてくれ!」
「で、でも……!それなら私も一緒に……!」
「いや、ここの廊下は一直線だから足止めは俺一人で充分だ!それよりも早く!」
2人分の足音が聞こえてきたので即座にウォーシューターを構えた俺は、こっちに向かって走って来ているカップルに銃口を向けて引き金を引いた!
「わ、分かりました!気を付けて下さいねおじさん!」
「あいよ!」
恐らく腕に覚えのある冒険者なんだろうカップルを相手にしながらライフが削られ無い様に戦い続けていた俺は、少しずつ距離を詰めて来ようとしてくる2人の近くの地面を撃ってひたすらに牽制と防御を続けていた!
「扉……扉……お願いです……ここにあって……!」
「くっ、ここまで来ればもう少し……!援護を頼めるか!」
「う、うん!」
「マズいな……あいつ等、突っ込んで来る気か……!マホ……!」
「あっ、おじさん!扉、扉を見つけましたよ!」
叫び声を上げたマホが居る方にパッと振り向いてみると、そこには壁だったはずの所が少しだけ開かれていてっ!
「そこだああああっ!」
「っ、うおおおおおっ!!」
イケメンの握り締めたウォーシューターの銃口が眼前に突き付けられてる事に気が付いた次の瞬間、反射的に頭を横にずらして水の弾丸を躱してた俺は脳が処理をするその前に同じ様な感じで相手の顔面に銃口を向けて引き金を引いていた!
「ぶはっ!」
「おじさん急いで!」
俺の撃った水の弾丸をまともに浴びたイケメンが尻もちを付いた直後、俺はマホの声がする方へ一直線に突っ走って行った!
そして滑り込む様な形で扉を通り抜けた俺は、合流をしたカップルが更なる攻撃を仕掛けて来る前にマホと協力して扉を閉めるのだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……マホ、助かったよ……ありがとうな……」
「い、いえ!おじさんが無事で良かったです!」
『お~っほっほっほ!これにて最終試練に挑む資格を持つ参加者が決まりました~!勝ち上がってきた皆様、お疲れでしょうからしばしその場でご休憩をどうぞ!』
「……それじゃあ、お言葉に甘えて少しだけ休むとするか……」
「えぇ、きっとこの後に待っているのは……ですからね。」
「あぁ……万全の状態で上の階に行かないとな……」
鉄格子で護られている階段の方を揃って見つめた俺達は、この世界で一番手強いと思える相手が居る事を考えながら近くにあったベンチに腰を下ろすのだった。
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