第713話
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………つ、次は何処から……ぐっ!」
「ソフィ!九条さんを見つけたよ!」
「了解。」
「げっ!もう追いついて来たのかよ!?クソっ!」
最終試練が始まってから数分後、ライフポイントが5もあれば例え1人でも上手い具合に立ち回れるんじゃないかなんて甘い考えを持っていた俺は、激しい後悔を抱きながらトラップを駆使しつつ迷路の様な構図をしてる通路内を逃げ回り続けていた!
『おぉっと!これは非常にマズイ展開になってまいりましたねぇ!やはり2対1では分が悪すぎるのかもしれませんよぉ!』
テーラー・パークの煽り声を聞かされて舌打ちをしそうになった直後、周囲を警戒しながら走っていた俺は苦々しく奥歯を噛みしめていた……!
「ある程度はこうなる事も予想してたけど、コレは流石にヤバすぎるんですけど!?何処に行っても先回りされて挟み撃ちされるとか……マジで怖すぎるわっ!!」
素早く的確に連携を取って俺の事を追い詰めて来るロイドとソフィの攻撃を何とか食らわない様にしてきたつもりなんだけど、気付いたらもう残りライフ4ですよ!?
「それに引き換えこっちは相打ち覚悟で撃った弾丸がロイドに1回当たっただけ……このペースだと確実に負けて終わっちまう……!」
「そこだっ!」
「ぐっ!うおおおっ!!」
何時の間にか正面に回り込んで来ていたロイドがウォーシューターから水の弾丸を発射してきたその直後、すぐ横の壁に人がギリギリ通れるぐらいの穴を見つけていた俺は考えるよりも先にその中に飛び込んで行った……けど!
「予想通り。」
「っ、ヤバッ!」
穴を通り抜けた先でソフィがウォーシューターを構えてる姿を視界に捉えた俺は、反射的に魔法を使って大量の水しぶきを舞い上げた!しかし……!
「当たった。」
「チィッ!間に合わなかったか!」
『これは非常に惜しいですねぇ!九条様、魔法で生み出した水の防壁で身を護ろうとしましたが残念な事にライフを削られてしまいました!コレは痛いですねぇ!』
肩に軽い衝撃が走って腕輪の光が1つ消えた事を確認した俺は、追撃をされる前に何発か水の弾丸を撃ち出してソフィの近くにあるトラップを発動させると急いでその場から離れて行くのだった!
「ハァ……ハァ……マズいな……」
これまで得てきた経験のおかげで弾丸を避ける事は出来る様になったとは思う……だけどそれはロイドかソフィどちらか1人を相手にしてる時だけの話で、2人同時にやられたらその時点で俺が負ける事は目に見えている……
「……だとしたら、そろそろ覚悟を決めるしかないかもな……」
逃げ回りながら隙を突いて各個撃破を狙う、もしくはトラップを駆使して少しずつライフを削っていく、他には気配を消して一気に勝負を仕掛ける……みたいな感じで作戦を幾つか考えては見たんだが、どの選択肢を選んでも待ってる結末は一緒だ。
「……九条さん、ここに居たんだね。」
「もう逃がさない。」
「……はぁ……本当に、お前達は恐ろしいぐらいに優秀だなぁ。」
「ふふっ、お褒め頂き光栄だよ。」
足音で居場所がバレたくないから大人しくしてたって言うのに俺の前後を挟み込む形で現れたロイドとソフィを交互に見ながらため息を吐き出した俺は、後頭部を掻きながら静かに天井の方へ視線を向けた。
『いやはや、何とか善戦をしてきた九条様ですがここでロイド様とソフィ様に退路を塞がれてしまいました!最早これまでなのでしょうか!?』
「やれやれ、本人が嫌でも自覚している事を大声で叫ぶなってんだよ……なぁ?」
「さぁ、私達に同意を求められても困るね。それで九条さん、逃げ場を失った貴方はこれからどう立ち回るつもりなんだい?壁に横穴は無い、そして私達の足止めをする為のトラップも存在していない。」
「あぁ、そうみたいだな……………だから、もう逃げるのは無しだ。」
「……へぇ、なるほどね。」
「……………」
『こ、こ、これはぁ!凄い展開になってきました!全員が動きを止めて武器を構えています!もしや、今まさに最後の戦いが始まろうとしているのでしょうかぁ!』
「……九条さん、手加減をするつもりは一切無いからそのつもりでね。」
「ハッ、最初からそんな事をしてなかった癖によく言うぜ……すぅ……はぁ……」
大きく息を吸い込んで瞳を閉じた俺は、静かに流れる水の音に耳を傾けていき……両手に握り締めたウォーシューターの銃口を2人に向けた俺はグッと引き金を引いて水の弾丸を撃ち出して最後の戦いを始めるのだった!
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