第700話
広大な園内に5カ所ぐらいある有料休憩所の1つで運良く場所を借りる事が出来た俺達は、日除けの為に用意されてたデカいパラソルの下に集まって一息ついていた。
「いやはや、まさか色んな飲み物が無料で貰えるとは……」
「えぇ、流石に食べ物はお金が掛かるみたいですけどお値段的にはかなり良心的って言えるぐらいですもんね。」
「ふふっ、お客さんに心の底から楽しんで貰いたいという彼の気持ちが伝わってくる様だね。」
「うん、それで何から行く?」
「あー……とりあえず俺は流れるプールでのんびり園内をグルっと回りたいかなぁ。お前達は何からやってみたいんだ?」
「私はウォータスライダーに乗ってみたいかな。高所から滑り落ちる感覚と言うのは中々に面白そうだ。難易度も幾つかあるみたいだから、何度も楽しめると思うよ。」
「……そうか、まぁ参考程度に覚えとくわ。うん。」
「あっ、そう言えばおじさんって高い所が苦手なんでしたっけ?」
「べ、別に苦手って訳じゃねぇよ!ただその……得意じゃないってだけの話だ!」
「それを苦手って言うんじゃないの?」
「まぁまぁ、それなら良い案があるよ九条さん。」
「あ?良い案?」
「うん、実はウォータスライダーは2人1組で滑る事も出来るみたいなんだ。だから九条さんが望むなら後ろから抱きしめながら滑っても構わないよ?」
「ア、アホか!幾ら怖いからってそんな真似が出来るはずねぇだろうが!ちょっとは常識ってもんを考えやがれ!」
「ふふーん、やっぱり怖いんじゃないですか。仕方ないですねぇ。それだったら私がおじさんに抱き着かれてあげますよ。」
「いや、何を名案ですよみたいなノリで言ってやがるんですか?そんな事をしたら、俺が周りの人達から危ない奴だって思われちまうだろうがっ!ウォータスライダーに乗るってんなら俺一人で乗る!絶対に!……で、ソフィは何がしたいんだ?」
「……私はアトラクションエリアに行ってみたい。」
「あーアレか……運動系に似た感じで遊ぶのがいっぱいある所だろ?」
「うん、そこで皆と勝負してみたい。」
「良いですね!皆さんと一緒に楽しめるなら行ってみたいです!」
「はいはい、それじゃあ昼飯時になる前に寄ってみるか。流石に腹に何か入っている状態で運動するのはしんどいだろうからな……で、マホは何がしたいんだ?」
「私は遊泳街に行ってみたいです!海の底に沈んだ街と言うイメージで作られた場所らしいんですが、雑誌で見たらすっごく綺麗だったんです!だから!」
「ふーん、それなら飯を食った後だな。休憩がてら寄ってみるとするか。」
「はい!そう言うおじさんは行きたい所はないですか?」
「俺?俺は特にねぇなぁ。そもそもお前達が言ったのだって、まだほんの一部にしか過ぎないだろ?だから今日は何も考えないでのんびり見て回るつもりだ。」
「なるほど、そういう事なら了解したよ。さて、それでは行動を始めるとしようか。今からだと……ウォータースライダーが楽しめそうだよ。」
「おう……言っとくけど、俺は1人で滑るからな。」
「……ふふっ。」
「…………」
「さぁ、行きましょうか!」
「おい、どうして返事をしないんだ?コラ、ちょっと待っての!」
何も言わずに席を離れて歩き始めた3人の背中を追いかける様にして立ち上がった俺は、嫌な予感がしながらもウォータースライダーの方へ近づいて行くのだった。
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