第697話

「それではこちらがお部屋の鍵になります。外出の際はフロントにお預けになります様にお願い致します。」


「はい、分かりました。」


 503と刻銘されたキーホルダーの付いた鍵を受け取った俺達は、ロビー奥にあるエレベーターに乗り込んで5階に降り立つと格式高い雰囲気を感じさせる廊下を進み自分達が利用する部屋に入って行くのだった。


「うわぁ……!こんなに素敵な所でお泊りが出来るなんて夢みたいですね……!」


「あぁ、マジで俺みたいな庶民が使って良いのか不安になるレベルだな。」


「ふふっ、私達は招待された身なんだからそんな心配はしなくても大丈夫だよ。」


「うん、思う存分満喫しよう。」


「はぁ……お前達の精神力の強さには本当に感心させられるよ……っと、何時までもお喋りしてても仕方ないか。とりあえず荷物の整理だけでも始めちまおうぜ。」


「はい、分かりました。その後すぐに冷たいお飲み物をご用意させて頂きますね。」


「おう、よろしく頼んだ。」


 素人目にも分かるぐらい豪華な家具の並んでいる部屋に来てからしばらくした後、座り心地抜群なソファーに座りながら俺達はマホの淹れてくれたアイスティーを口にしてホッと一息つくのだった。


「さてと、これからどうしようか?大通りの方を見て回ってみるかい?」


「あーいや、それは止めとこうぜ。明日はテーマパークに行ってイベントに参加する手続きを済ませたらそのまま遊ぶ予定になってんだろ?だったら体力は残しておいた方が良いだろ。街の散策はまた後日だな。」


「九条さん、クエスト。」


「はいはい、そんなに急かされなくても覚えてるって。そっちも時間に余裕があれば斡旋所に寄るから、それで良いだろ?」


「うん、約束。」


「えへへ、イベントにお買い物にクエスト!忙しくなってきましたね!」


「……俺としてはのんびりまったりしたい所なんだけどな……お前達と一緒に居ると休む暇が無くてマジで大変だよ……」


「ふふっ、だけど嫌ではないだろう?」


「九条さん、何だかんだ言いながら楽しそうにしてる事が多い。」


「それは……まぁ、強く否定はしないけども……ええい!微笑ましい感じでこっちを見てくるんじゃねぇ!」


「あれあれぇ?もしかしてご主人様ってば照れちゃってますか?」


「んな訳あるか!アホな事を言ってんじゃねぇっての!ったくよ……あぁもう、汗を掻いたからシャワーを浴びて来る!」


「はーい!いってらっしゃーい!」


 3人から浴びせられる視線から逃れる為にそそくさとその場を後にして風呂場へと向かって行った俺は、冷たいぬるま湯を浴びながらため息を零すのだった。

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