第695話

「そう言えばソフィ、今更こんな事を聞くのも何なんだけどガドルさんとサラさんに会えるかどうか確かめに闘技場へ行かなくても良かったのか?」


「うん、2人は仕事で王都をしばらく離れてるって手紙が来てたから大丈夫。」


「へぇ、仕事……もしかして、今度王都で開催されるイベントに関係してんのか?」


「多分、そうだと思う。だから次に会えるのはお祭りの日。」


「ふふっ、そういう事なら是非とも遊びに来ないといけないね。」


「えぇ、おじさんも嫌とは言いませんよね?」


「……そんなに満面の笑みで圧を掛けられなくても分かってるっての。」


「あいてっ」


 真正面に立ってきたマホの額に軽くチョップを落とした直後、右手に持った冷たい飲み物に口をつけた俺はふとあいつ等の事を思い出していた。


「っと……話は変わるんだけどさ、エルアとクリフって王都に戻ってんのかねぇ?」


「うーん、どうだろうね。アレからそれなりに時間は経っているから、その可能性はあるけれど……もしかして会いたくなったのかい?」


「いや、別にそういう訳でもないんだが……こう、何となく思い出しちまってな。」


「えへへ、心配しなくても良いと思いますよ。皆さんが指導をしてあげたんですからきっと立派にやっているはずです!でも、会えるなら会いたいですよねぇ。」


「うん、どんな冒険をしたのか聞いてみたいね。」


「それと、どれだけ強くなったのか確かめたい。」


「……それは止めてあげなさい。まぁ、もしかしたら祭りが開催される日には戻って来るかもしれないから、その時は挨拶でもしてやるとするか。」


「はい!あっ、それならミアさんやフィオさんにも会いたいですね!」


「いやいや、それは無理だろ。片方はお姫様でもう片方が俺を敵対視してるんだぞ?もし顔なんて合わせたらどんな目に遭う事か……想像するだけで恐ろしいわ。」


 そもそもとしてミアは王族として祭りの開催の為に色々と忙しくしてるだろうし、フィオはフィオで……何してんだろう?ヤンキーよろしく喧嘩でもしてんのかねぇ?とりあえず俺の関わる領分でない事だけは確かだな。うん、間違いない。


「もう、そんなに怯える必要は無いと思いますよ?」


「うん、2人共とっても可愛い女の子なんだからね。」


「……悪いが俺にはそんな感想は出てきやしないわ。って、そろそろ出発の時間か。皆、忘れ物とかはしてないか?」


「えぇ、おじさんの方は大丈夫ですか?」


「あぁ、勿論。宿屋でアホかってぐらいに確認しまくったからな!よしっ、そんじゃ行くぞ!」


「はーい!」


 マホの元気の良い返事を合図にして昨日と同じ馬車へと乗り込んだ俺達は、快適な旅路を満喫する事になるのだった。

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