第694話

 街ブラをしながら王都を満喫した日の夜、宿屋に戻って来た俺達は本屋で購入したミューズの街に関する情報誌を前にしながら静かにため息を零していた。


「いやはや、まさかコレまで隠されてきた情報のネタバレをこんな形で食らうなんて予想もしてなかったなぁ……」


「うぐぐ、失敗しました……まさかお店に入ってすぐの所であんなにデカデカと特集されていたとは……完全に油断していました……」


「おいおい、そこまで落ち込むなっての。確かにお前の気持ちも分からんでも無いが感動が薄れるって事は無いだろう?」


「うん、その点は保証するよ。この雑誌ではまだ一部しか紹介されていないからね。他にも数多くの遊泳施設が沢山あるんだよ。」


「ふーん、それは楽しみだなっと……にしても、夏になったら遊泳施設になっちまうとかこのテーマパークはどんだけ凄いんだよ。」


 表紙を飾っている大型レジャープールを見ながら後頭部をガシガシと掻いた俺は、雑誌を手に取って中に書いてある記事に幾つか目を通していった。


「ふふっ、私達も初めてこの目で見た時は同じ事を思ったよ。間違えて別に街に来てしまったのかと勘違いしそうになったからね。」


「そりゃそうだろうな……遊園地がプールに変わってんだから。何をどうやったら、こんな風になるんだろうな。」


「……一応、その雑誌によると長めの休園日があったらしいみたいですけどね。」


「あぁ、でもだからってあまりにも予想外すぎるだろ……どんな魔法を使えばこんな事が出来るんだ?」


「分からない。」


「恐らく独自に開発された魔法があるのかもしれないけど……そこは私達が気にする必要は無いんじゃないかな。」


「……そうですね!私達はただ純粋にプールを楽しめば良いだけですよ!」


「……それもそうだな。この雑誌に載ってるのもまだまだごく一部みたいだし、他にどんなもんがあるのか興味があるわ。お前達はもう何があるのか知ってるんだろ?」


「うん、九条さんに教えてあげるつもりはないけどね。」


「へいへい、俺としても無理に聞き出すつもりはねぇよ。だけどこの、この夏一番の特別イベントってのは……やっぱり俺達が参加するアレの事だよな?そんでもって、その会場となるのは……」


「ご主人様が仮面のメイドさんと対決したあのお城だと思いますよ。テーマパークの真ん中にある。」


「だよなぁ……はぁ……あんまり良い思い出がねぇから今回はどうなる事やら……」


「ふふっ、大丈夫だよ。今回は私達も参加する予定だからね。」


「一緒にイベントを楽しもう。」


「えへへ、何をするのかは分かりませんが私も全力で応援させて頂きますよ!だからご主人様、ロイドさん、ソフィさん、頑張ってくださいね!」


「うん、勿論。」


「全力を尽くす。」


「……まぁ、やれるだけやってみるさ。」


 そんな話をしながら雑誌に目を通して夜の時間を過ごしていった俺達は、次の日の出発時刻に送れない様に早めに就寝する事にするのだった。

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