第433話

「ここまで来て逃がしてたまるか!って、もう居ねぇだと!?オイ!こっちは約束を守ったんだ!アリシアさんを返しやがれ!」


 大量の雪が敷き詰められた広々とした玄関ロビーらしき場所で大声を出した瞬間、何処からともなく奴の息を吸う音が聞こえてきて……


『うっさいわね!気が変わったって言ってるでしょ!あの子を返して欲しかったら、ソイツにアタシの事を思い出させるか力尽くで奪いに来なさい!まぁ、そう簡単にはいかないでしょうけどね!ふんっ!』


「あっ、待てコラ!まだ話は終わってねぇぞ!…チッ、舐めやがってぇ……!」


(お、落ち着いて下さいご主人様!ほら、どうどう!頭に血がのぼっていては冷静な判断が出来なくなっちゃいますよ!)


(ふふっ、九条さんが怒りたくなる気持ちも分かるけれどね。)


(……あの子、自分勝手すぎる。)


「はっはっは!いやはや、わしのせいですまんのう。」


「い、いえ!レミさんのせいでは……ですが、これからどうしましょう……お姉様をお救いする為には城の奥に進まないといけませんが……」


「あの少女の事です。必ずや私達の妨害してくると思いますわよ。」


「そうですよね……どうしましょうか九条さ………く、九条さん?」


「……は……はは……ははははは…………」


(……ご、ご主人様?どうしたんですか?何で笑って……)


「ふむ、どうやら九条に中にある何かに火が付いてしまった様じゃな。」


 今回の一件、俺にだけ面倒が降り掛かるのはまだ許容出来る……だが、俺の周りに居る奴らを巻き込むのだけは絶対に許さねぇぞ……!


「奪い返しに来いだとぉ……?上等だよ……こっちは遊び回れる最期の日を潰されてイライラしてんだ……!しかもアリシアさんにまで迷惑を掛けやがって……!あぁ、そっちがその気ならやってやろうじゃねぇか!!」


「おぉ、九条さんが何時になく燃えているね。」


「……珍しい。」


「全員よく聞け!こっから先は手加減無しだ!アリシアさんを救出する為に好き放題暴れ回るぞ!なんせ相手が許可してくれたからなぁ……!」


(いやいや!流石にそれはどうかと思いますよ!?ほら、帰りの事だってあるんですから廊下ぐらいは綺麗な状態で残しておかないと!)


「ふふっ、そういう事なら仕方が無いね。分かったよ、九条さんの言う通りにしようじゃないか。」


「うん、本気で行く。」


「はっはっは!これは何だか面白くなってきたのう!気分が高揚してきたわい!」


「はぁ……大変な事になってきましたわね。」


「あ、あはは……シアンちゃん、私達の傍から絶対に離れない様にね……」


「は、はい……分かりました……」


「よぉし!そんじゃあ行くぞっ!」


 何時でも魔法をぶっ放せる様に全身に魔力を滾らせながらニヤリを笑みを浮かべた俺は、両脚にグッと力を込めて真正面に見えていた扉を蹴り飛ばすとアリシアさんが居る部屋を探し出す為に皆を連れて城の奥に向かって走り始めるのだった!

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