第396話
「ふぅ、こんなにも腹が満たされたのは随分と久しぶりじゃのう……やはりこの家で出て来る料理はどれも最高じゃな!」
「ったく……だからって食い過ぎじゃねぇのか?どんだけデカい胃袋してんだよ。」
「ふんっ、そういうお主だってバクバクと料理を食べておったではないか!」
「それは……まぁ、否定はしないけどさ……本当に美味かったしな……エリオさん、カレンさん、今日はごちそうさまでした。」
「ははっ、お口に合ったのなら何よりです。さて、それでは昼食も終わりましたので早速ですが病院でお伝えしようとしていた事について話をしても構いませんか。」
「あっ、はい。大丈夫ですよ。」
「わしの方も気にせんでも良いぞ。」
「ありがとうございます。それでは……九条さん、レミさん、王都の北側に位置しているノルウィンドという街の事は知っていますか?」
「えっ?いや、初めて聞きますけど……レミはどうだ?」
「ふむ、随分と昔に名前ぐらいは聞いた覚えがある気がするんじゃが……エリオよ、それがどうかしたのか?」
「えぇ、実はですね……九条さんとレミさんに、ノルウィンドへの旅行をしてもらいたいと思っているんです。」
「………は、はい?」
いきなりされた突拍子もない提案に思わず間の抜けた返事をしていると、隣に居たマホが俺の顔を急に覗き込んで来た!?
「あのですね!ノルウィンドという街なんですが、傷や病気に効くという温泉が沢山ある事で有名みたいなんですよ!」
「ほ、ほう……って、どうしてマホが説明しておるんじゃ?」
「だから九条さんとレミには、退院のお祝いも兼ねてノルウィンドでのんびりとしてもらおうかと考えた訳だ。」
「温泉に入って完全回復。」
「うふふ、心も体も温まりますよ。」
「……なるほどね……この話はエリオさんだけで考えた訳じゃないって事か……」
ってか、異世界にも温泉街って存在してたんだな……それはそれで世界観的にどうなんだろうとは思うんだけど………旅行……旅行かぁ……遠出すると厄介な面倒事に巻き込まれそうな気がするから出来れば遠慮したいんだが…………
「ど、どうでしょうっ!」
「美味しい料理もいっぱい食べられるよ。」
「何じゃと!?それは本当か?!」
「えぇ、ノルウィンドで採れる食材はどれも美味しいですからね。食べてみて、損は無いと思いますよ。」
「それにそれに!ノルウィンドは冬に愛された街とも呼ばれているらしくてですね、雪に関連したスポーツとかイベントがいっぱいあるらしいんですよ!」
「おぉ!それは何とも楽しそうじゃな!」
「えへへ!そうですよね!ねっ!」
ここまで盛り上がってる所に水を差すのはどう考えても無理だよなぁ……しかも、今回は皆に色々と心配を掛けちまった訳だし………
「……それでいかがでしょうか。馬車や宿屋の手配、その他の事も全てこちらの方でやりますので……ノルウィンドに旅行をしてみませんか?」
「………分かりました。エリオさんの提案、喜んで乗らせて貰います。」
まさかの急展開に心の中でため息を零しながら苦笑いを浮かべて了承をした俺は、盛り上がっている皆の様子を頬杖を突きながら静かに眺め続けるのだった。
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