第397話

 昼飯を食べ終えて旅行の日程なんかを大まかに決めた俺達はエリオさん達に別れを告げて屋敷を後にすると、厚意で用意されてた馬車に乗り込んで懐かしの我が家へと帰って来ていた。


「ん~……はぁ~………ようやく……お前達にただいまって言えるな。」


「えへへ……はい!ご主人様、お帰りなさい!そしてロイドさんもお帰りなさい!」


「ふふっ、ただいま。こうして皆と一緒に帰って来られて本当に嬉しいよ。」


「……うん、私も嬉しい。」


 ……そんな嬉し恥ずかしいやり取りをしながらリビングに直行した俺達は、持っていた荷物をひとまず床の上に置いてソファーに座り込むのだった。


「ふぅ……さてと、そんじゃあ晩飯を作り始める前に明日からの予定について改めて再確認しておくとしますかね。」


「分かりました!えっと、確か明日の午前中は……ノルウィンドに関する旅行の本を買いに行くんですよね!そしてその後は……」


「簡単なクエストを受ける為に斡旋所に向かう予定だね。私も九条さんも、しばらく戦闘をしていないから、体が動くかどうかきちんと確認しておかないと。」


「そうだなぁ……ノルウィンドに旅行するまでには何とか勘を取り戻しておかないとマズイからな。道中でモンスターに襲われてくたばるなんて結末は避けたいしさ。」


「うーん、そんなに心配ならエリオさんが提案してくれた通り護衛の人を雇った方が良いと思うんですけど……」


「いやぁ、それはそうなんだけどさ……ただでさえ馬車代とか宿代とかで結構な額を払ってもらう事が決まってるのに、護衛代までは流石になぁ……自力でどうにかなる部分は面倒を掛けられんだろうよ。」


「ふふっ、父さんも母さんもそんな風には思わないはずだよ。」


「それはまぁ、分かっちゃいるんだが……こっち側の気持ちとしては、そんな感じで割り切れないんだよ……って事だから、しばらく頑張るしかないか……はぁ……」


「……そんなに嫌なら素直になれば良いのに、何とも面倒な人ですね。」


「しょうがねぇだろ……金の掛かる厚意に甘えるのは得意じゃねぇんだよ……」


 どうして遠慮がちになっちまうって言うか……もう少しぐらい世渡りが上手くなりたいんだけどなぁ……流石にこの歳までこれじゃあ無理かぁ……それに……


「ノルウィンド……モンスター………楽しみ……」


「はぁ……本当に……護衛を雇わなくて正解だな………」


「あぁ、ソフィの楽しみを奪ってしまう訳にはいかないからね。」


「……そう言えばそうでしたね。って、そうだご主人様。壊れてしまった武器の方はどうするんですか?」


「あー……そうだったなぁ……シーナと親父さんが新しく作ってくれてるって言ってくれてたけど、旅行までに間に合うかどうか……一応、確かめておかないとな。」


「ふむ、そういう事ならば本屋の帰りにでも加工屋に寄って聞いてみようか。」


「そうですね!もしかしたら、もう出来上がってるかもしれませんし!」


「だと良いんだけどなぁ……まぁ、もしダメなら新しい武器でも買ってそれを持っていくとするさ。どうせ明日のクエストにも必要なんだからな……っと、もうそろそろ晩飯の支度でも始めるとしますかね。悪いが、手伝ってもらっても良いか。」


「あっ、はい!分かりました!」


「ふふっ、九条さんの手料理を食べるなんて久しぶりだね。」


「……楽しみ。」


「……頼むから、期待しすぎないでくれよ。しばらく料理をしてなかったから、腕も落ちてるだろうしな。」


 そんな保険を掛けながらソファーから立ち上がった俺は、マホと一緒に晩飯作りを始めていくのだった………そんでまぁ、とりあえずは美味しく出来たと思う。

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