第169話
【ご主人様へ
お手紙が届きましたので、早速ですが返事を書かせて頂きます。
ご主人様が居なくなってから早数日が経ちましたが、私達は私達で元気に過ごしています!
えへへ、実はリリアさんやライルさんをお家に誘って女子会ってものを開催したりしたんですよ!
そこで得意料理を作り合ったり、好きな本の事を皆に紹介したりしました!他には皆さんと一緒にお風呂に入ったり、リビングに毛布を持ってきて仲良く眠ったりも!本当に楽しい思い出が出来ました!
ご主人様はお城でお過ごしと思いますが、何か楽しい思い出は出来ましたか?
もしよろしかったら、帰ってきた時に聞かせてくれると嬉しいです!
それではお体に気をつけて、怪我をしたりせず頑張って下さいね!
あっ、それとお土産のリストを増やしましたので確認しておいで下さい!
マホより】
【九条さんへ
まさか握手を拒んだ事が原因でお姫様を相手に奉仕をする事になるだなんて予想もしていなかったよ。
こちらに手紙が届いた頃合いから考えるとこっちに帰って来るのにもうしばらくは時間が掛かりそうだけど、私達の事はあまり心配しないで欲しい。
何と言っても特に大きな事件も起きず平和そのものと言っても過言ではない日常を過ごしているからね。
ただまぁ、九条さんに会えないと物足りない感じがするから奉仕義務の期間を延長される事は無く無事に帰って来てくれると嬉しいかな。
それじゃあ体に気をつけて、怪我をせずに帰って来てくれ。
お土産も忘れずにね。
ロイドより】
【九条さんへ
追加のお土産、よろしく。
ソフィーより】
「……うん、何度読み返してみてもこれしか書いてねぇな。」
3枚全ての手紙を封筒の中に仕舞い込んでテーブルの上に放り投げた後、ドカッと勢いよくソファーに腰を下ろした俺は天井を見上げながら盛大な溜息を零していた。
「ふぅ、色々とあったけど何とか無事に乗り越えられたなぁ……」
最初の内は不慣れな事が多くて上手くいかない事もあったけど、チート能力があるおかげでお姫様の無茶ぶりにも応えられてこうして奉仕義務の最終日を迎えられた訳なんだが……
「まさかこんな達成感を得られるとは思いもしてなかったわ……しかも、今日は帰る準備をする必要があるだろうからってわざわざ奉仕を休みにしてくれたりして……」
隅っこに置かれているパンパンのバッグを見つめながら深呼吸をした俺は、今朝の出来事について振り返っていた。
「ふむ、つまり彼は奉仕義務を延長する様な事はしなかったのだな。」
「はい、お父様。九条さんは本日までよく私に尽くしてくれました。問題など何1つ起こさずに。」
「そうか……分かった、それならば彼の奉仕義務に関しては明朝には終わりを迎えるという事で構わないな。」
「えぇ、勿論です。九条さん、ありがとうございました。」
「あぁいえ、どうも……」
奉仕義務期間の最終日に国王陛下から呼び出された事をセバスさんに教えられて、玉座の間まで足を運んでいた俺は今日までの事について幾つか質問をされたりした。
この時にもしかしたらお姫様が期間を延長される様なおかしな事を言ったりするんじゃないかと危惧していたんだが、そんな憂いはアッサリと吹き飛ばされて……
「お父様、本日なのですが九条さんにお休みを与えて下さいませんか?」
「……え?」
「ふむ、お前が良いなら私としては構わないのだが……一体どうして?」
「ふふっ、九条さんはお帰りの支度をなさる必要がありますから最終日まで私に付き合わせる訳にはいかないというだけの話です。それともう1つ……」
そう言葉を続けてお姫様が提案してきたのが、今日まで頑張ってきたご褒美に今日1日は城の中で好きに過ごしてくれても構わないという事だったんだけども……
その提案を聞いた時、俺は自分の耳を疑ったね!だっておかしいだろ?!明日には奉仕が終了するって言うのに、突然そんな事を言い出すだなんて何か企んでるんじゃないかって思うだろ!?だから……
「えっと、そう言って頂けるのは嬉しいんですが本当によろしいんですか……?」
「はい、九条さんにはシッカリと身体を休めて頂かなくてはいけませんからね。」
ニコッと微笑みながらそう言われてしまっては特に反論をする意味も無いので俺は少しだけ不振に思いながらもその提案を受け入れる事にして、書庫にある本を読んでみたり中庭でぼんやり空を眺めたりしてみたんだけど……
「ったく、マジで何を考えてるんだあのお姫様は………」
本当にただ純粋に休みを与えてくれたのかもしれないって信じたいんだが、今までされてきた事を考えると素直にそう思うのはなぁ……
「つっても、今日に関しては本当に何にも無かったし……やっぱり俺の考え過ぎなのかねぇ……まぁ良いや、とりあえずもう寝るとするかな。」
面倒だが心配を掛けたかもしれない3人の為に土産物を買わなきゃいけないと考えながら部屋の電気を消した俺は、何時もより少し早めに就寝する事にするのだった。
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