第150話
「念の為にご報告をさせて頂きますが、現在この一角をご利用しているお客様はおりませんのでその点につきましてもご安心下さいませ。」
「あぁ、そうなんですか。それは本当に良かったです。」
どうやらお偉いさん相手に問題を起こして奉仕期間が延長してしまうみたいな事は起こらなさそうだな……まぁ、この考えもフラグになっちまう可能性がありそうだしとりあえず注意はしとく必要がありそうだけどさ……
なんて杞憂をしながら客間がズラっと並んだ廊下の奥に向かって行くセバスさんの後について行った俺は、一番端にあった扉の前で立ち止まる事になった。
「九条殿、こちらが本日より使用して頂くお部屋となります。そしてこれが部屋の鍵となっておりますのでどうぞお受け取り下さい。」
「あっ、どうもありがとうございます。」
「いえいえ。それでは鍵を開けてお部屋の中にお入り下さいませ。」
セバスさんから少しだけ凝った装飾のされた鍵を受け取った俺は、扉の前に歩いて行くと鍵を開けて部屋の中を覗き込んでみた。
「おぉ、こりゃまた……?あの、セバスさん……この部屋ってなんでこんなに暗いんですか?」
「申し訳ございません。普段は太陽の光で家具が傷まない様にカーテンを閉め切っているのです。」
「あぁ、なるほどそう言う事でしたか。」
「はい。ところで九条殿、少々お願いしたい事があるのですがよろしいですかな。」
「お願い?ってなんですか?」
「こう、私の前に両手首を合わせて欲しいのです。」
「はぁ……それぐらいなら別に構いませんけどえっと、こうですか?って……え?」
「ありがとうございます。それでは部屋に入りましょうか。」
……いやいや…いやいやいやなんじゃこりゃ!?え?何で?どうして俺の両手には拘束バンドが付けられているんだ?!いやそりゃセバスさんが付けたからだろうが!ってそう言う問題じゃなくて!!
「あ、あの!これは一体どういう事ですか?!何でこんな物を!?」
「驚かせてしまい申し訳ございません。ただ、今は黙って私と共に部屋の中に入って下さいますでしょうか。長らくお待ちになっておりましたでしょうから。」
「お待ちになって!?そんな、誰がここで…………ま、まさか………!」
「恐らく、そのまさかでございます。さぁ、参りましょう。」
「……マジ、かよ……」
頭の中についさっき会った人物の事が思い浮かんできて自然と顔が引きつり始めてきた俺は、薄暗い部屋の中にセバスさんと足を踏み入れて行き……
「それでは九条殿、失礼の無い様にお願い致しますね。」
「……はぃ……」
俺が返事をした直後、照明がパッと光りだして部屋全体を明るく照らし出され……俺の目の前にはさっき予想した通りの人物が、豪勢な椅子の上で足を組んで肘掛けで頬杖を付きながら不敵な笑みを浮かべて俺の事を見ていた……
「うふふっ、さっきぶりですね九条さん。こうしてまたお会いする事が出来て本当に嬉しいですわ。」
「……それはどうも……お姫様……」
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