第143話
「さてと、そろそろ下に降りるとしますかね。」
集合時間10分前、バッグを担いで小さな声でそう呟いた後に廊下に続く扉の鍵を開けて部屋を出て行ってみたら……
「よぉ、おはようさん九条のおっさん!」
「……ヒイロ?何やってんだ、こんな所で。」
「そんなに決まってんだろ!九条のおっさんを待ってんだよ!ほら、準備が出来てんならさっさと下に行こうぜ!」
「……はいよ。」
朝っぱらから元気なヒイロを見ていたら何故かマホの姿が思い浮かんできた俺は、静かにため息を零しながらヒイロと一緒に受付のある1階まで降りて行った。
「いやぁ、いよいよこの大陸で一番偉い人に会えるんだよな!マジで緊張してきたぜって……あれ?」
「ん、どうした?」
「あぁいや、出入り口の所に……うわっ!ちょ、ちょっとごめん!」
「おっとっと……ははっ、なるほどね。」
慌てて走り始めたヒイロが向かった先を視線で追いかけてみたら、そこにはそれはもう可愛らしい美少女達が立っていた訳で……まぁ、アイツの仲間って事か。
「皆さん、おはようございます。時間通りに集合して頂けた様で何よりです。」
ぼんやりヒイロ達の様子を眺めていたら隊長さんが姿を現してピリッとした空気を漂わせながら俺達全員の顔を見渡して来た。
「これより、皆さんには我々と共に王城に向かって頂きます。その際、我々の指示に必ず従って下さいます様にお願い申し上げます。もし勝手な行動をした場合には……命の保証は出来かねますので、そのつもりで。」
……怖っ!本気で言ってるって事が伝わって来る迫力だなぁ……こりゃ、ヒイロが目的の奴って判明したらヤバくなる展開ってのも考えれるぞ……へへっ、不謹慎かもだけど主人公が身近にいると妄想がはかどってしょうがねぇ!ワクワクしてきたぁ!
「……ご理解して頂けた様で何よりです。それでは皆さん、外に停車をている馬車にご乗車して下さい。」
空気が穏やかになっていった隊長さんの指示に従ってイケメン達が馬車に向かって歩き始めた最中、宿屋の外からヒイロが疲れた顔をしながら戻って来た。
「はぁー……つ、疲れたぁ……」
「おぉおぉ、お疲れさん。なぁ、さっき話をしてた子達ってもしかして?」
「そう、俺の仲間だ……何でも俺が心配でわざわざ追いかけて来たらしい…ったく、明日には帰れるって言われてたのに……やれやれ……」
「まぁそう言ってやるなよ。それよりもほら、馬車に乗りに行くぞ。」
「っと、了解!ってか、さっき隊長さんが何か言ってなかったか?」
「それについては追々説明してやるよ。」
そう言ってイケメン達の最後尾に並んで馬車に乗れるタイミングを待っていると、少し離れた所から心配そうにこっちの様子を伺っている美少女達の姿が目に入った。
「あぁもう、時間が掛かるから大通りで買い物でもしてろっての……」
「お前の事が心配で仕方が無いんだろ……色々な意味でな。」
「俺は子供じゃねぇっての!そこまで心配される筋合いはねぇよ!」
ムッとした表情でそっぽを向いたヒイロを見ながら、俺はフラグが順調に構築されつつあるのをビシバシと感じつつあった……!
良いぞぉ……心配する彼女達の事を内心嬉しく感じつつも鬱陶しがりながら王城に向かったヒイロは、お姫様とハチャメチャな再会を果たす訳だ……!
そして時間が過ぎても帰って来ないヒイロの事を心配した彼女達は、王城に向かいお姫様と修羅場的な展開を迎えるんだな!
あぁ畜生!そんな素敵で楽しい展開を実際に見れないとか悔しくてしょうがねぇ!でもしょうがないよな!だって俺は、主人公と偶然知り合いになったモブのおっさんでしか無いからな!
さぁヒイロ、頑張ってこのイベントを乗り越えてお姫様のハートを見事手に入れてハーレムを築き上げるんだぞ!俺、心の底から応援してるからな!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます