第100話
『ほっほっほ!参加者の素晴らしいリアクションも見れましたのでステージの準備に取り掛からせて頂くと致しましょう!それでは~どうぞ!』
戸惑っている俺達の反応を見て楽しんでいるかの様な声色でそんな合図を出すのが何処かに設置されてるらしいスピーカーから聞こえてきたその直後、急に部屋全体がグラグラと勢いよく揺れ始めた!?
「ちょっ、マジかよ……!」
底の見えない暗闇の中からそれなりの間隔を空けた状態で次々と足場みたいな物が上がって来る光景を目の当たりにして思わず絶句していると、今度は部屋の奥の方に鉄の鎖に吊り下げられた巨大な檻みたいな物が天井から降りて来て……!?
『それでは準備も整いましたのでルールの説明を始めたいと思います!皆様にやってもらう事は実に簡単!足場を飛び移りながら部屋の奥にあるエレベーターに誰よりも早く辿り着いて頂く事!ただそれだけです!』
「いや、ただそれだけって言うにはちょっと難易度が高すぎる気がするんだが……」
『しかし!それだけでは面白くありませんよねぇ?ですので、幾つか皆様にはお伝えしておかなくてはいけない注意事項がございます!まず1つ目!次のステージに行く事が出来るのは最大で15名までとなります!』
「じゅ、15名って……つまりここで半分以上は脱落するって事なのか!?」
『はい!その通りでございます!なので他の参加者に遅れを取らない様、また進んでいる先にあるエレベーターを奪われない様にお気を付け下さいませ!そして注意して頂く事はもう1つ!スイッチーオーン!』
カチッという分かりやすいぐらい何かのスイッチが入ったみたいな音が鳴り響いた次の瞬間、天井全体に青白い電気が走り始めたのと同時に足場がそれぞれ違う速度で上下に動き出した!?
『天井に流れている電流はほんの少しでも触れてしまうと腕輪の機能は停止をさせてしまいます!そうなったら腕輪と連動している足場は即座に闇の底へ戻ってしまい、参加者も道連れとなる可能性が発生致します!』
「……足場を無くして闇の中に落ちてしまったらどうなるんだ?」
『勿論、失格となります!そして足場は10秒以上その場に留まってしまった場合も闇の底に戻ってしまいますのでご注意をお願い致しますね~!』
「ま、待ってくれよ!そんなの流石に危なすぎるんじゃないのか!?何処まで落ちて行くのが全然分からないってのに!」
『ほっほっほ!そこに関してはご安心下さいませ!皆様が怪我をしない様にシッカリ対策は取られておりますので!しかし、例え怪我を負ったとしても自己責任ですのでそこだけはお忘れなき様によろしくお願い致します!』
「自己責任って、そんなの……!」
『おっと、ご不満ですかぁ?でしたら後ろの扉をお開け致しますのでお戻りになって下さっても構いませんよ~?私共、無理強いは致しませんので。』
「そ、それは……」
わーお、こりゃまた凄い自信って言うか何と言うか……抽選に当たる確率、そして手に入れられるかもしれない豪華賞品……色々な事を考えるとここで引き下がるって選択肢はもう取れはしないだろうってのを分かってる感じの挑発だな。
『さてと、ご納得して頂けたみたいですので参加している皆様は今一度私がした説明内容をシッカリと頭に刻み込んで下さいませ~!そして皆様が身に付けている腕輪!それは電気にも水にも衝撃にも弱いという物だという事もどうかお忘れなき様に!』
「……電気に水、そんでもって衝撃か……」
テーラー・パークが念押ししてきやがった今の台詞、要するにコレから勝ち進んで行くとそういった要素が含まれたギミックが襲い掛かって来るって意味合いなのか?
まぁ、今はまだそんな事を気にしても仕方ねぇかな……そもそもの話、ここに居る参加者の半数以上を出し抜いて奥にある檻の形したエレベーターに乗らなきゃ失格になっちまう訳なんだからよ。
『それでは皆様、心の準備はよろしいでしょうか?どんな手段を使っても対戦相手を蹴落として、誰よりも先にゴールへ辿り着いて下さいね!あぁ、ただし他の参加者に怪我を負わせたりしたらその時点で失格ですので!それ以外は何でもありです!』
おいおい、怪我をさせなきゃ何でもありって……あの野郎、最後の最後にとんでも無い事を言いやがったな!それって裏を返せば怪我さえさせなきゃどんな攻撃手段を使っても問題無いって事じゃねぇかよ!こりゃマジで気が抜けねぇぞ……!
「ぜ、絶対に勝ってやる……!」
「家族に良い所を見せないと……!」
「あいつ等の為、必ず勝利をこの手に……!」
『ほっほっほ!皆様、やる気が満ち溢れているみたいで非常に素晴らしい!ではではお覚悟の程はよろしいですねぇ~!……3……2……1……!スタートです!!』
爆音のブザー音が部屋中に鳴り響いたその直後、参加者が足場に飛び移ってくのを目にした俺は自分が若干不利な状況になっている事を理解しつつその後に続いて行く為に一歩前に踏み出そうとっ!!?
「ぐへっ!!」
「ごめんなさい!先が詰まっているから利用させてもらうわね!」
ズシッとした衝撃が肩に襲い掛かって来たのと同時に仮面のメイドの声が聞こえてきたかと思ったら、他の参加者の頭上を大きく飛び越えて部屋の奥へと向かって行く彼女の姿が視界の先に現れた……がっ!
「っ、落下先に足場がねぇ!アレだったら……!」
「うふふっ、期待に応えられなくてごめんなさい!」
仮面のメイドが奈落の底に落ちて行く姿を誰もが期待する中、彼女は袖の辺りから先端に鉄製の何かが付いたワイヤーみたいな物を射出して天井に突き刺した!?
そして振り子の要領で更に奥の方へと一気に飛んで行くと、華麗に檻の中に着地をしてみせた……!そして一呼吸置いた後に優雅に参加者の方へ振り返ると……
「それでは皆さん、お先に失礼致します。」
両手を前の方で深々とお辞儀をしてきたメイドの仮面は、その姿勢を保ったままで上の階へと姿を消してしまうのだった……!
「チッ、人を足場にして行くとかどんなメイドなんだよ……!?」
って、愚痴ってる場合じゃねぇ!俺もさっさと行動を始めないと初戦敗退だなんて結果に……いや、でもどう動く?!近場にある足場には既に他の連中が乗ってるから魔法で撃ち落とすか?でも、そんな事をしたら全員を敵に回しちまう可能性が……!
「ひゃああああぁぁぁぁぁぁ………!!!!!」
「うおおっ!?ビ、ビックリした……けど、チャンス到来っ!」
制限時間があるせいで焦ったのか足を踏み外して奈落の底に沈んでったおっさんが乗ってた足場に飛び移った俺は、ランダムに上下する足場に苦戦させらながら何とか奥へ奥へと進んで行くのだった……!
「ぐっ……!それにしても、こいつは中々の地獄絵図ってやつだな……!」
「お、おいこっち来るなよ!ここは先に俺が」
「う、うるせぇ!お前がさっさと次の足場に、あ、うああああああああ!!!!」
「ひ、ひぃ!こ、このままじゃ天井にうぎゃああああああ!!!!」
狭い足場の上で揉み合いになった結果として体勢を崩してそのまま闇の中に消えて行った参加者達、そして飛び移るタイミングを見誤ったせいで電流を浴びる事になり足場と共に落ちてった参加者にって……
「コレは……テーラー・パークが開催してるイベントとして正解なのか……?」
他人を蹴落として生き残るデスゲームでもやってるのかと錯覚しちまう様な光景を目の当たりにしながら、少しずつ減っていく足場を何とか移動し続けていると……
『ほっほっほ!これは中々に熱い展開になってまいりましたよぉ!現在、ゴールまで辿り着けたのはたった3名!そして残っているのはわずかに5名!全員が次へと進む事が出来るのか!それともここで全員が失格となるのか!これは楽しみですねぇ!』
「残り5人だって!?あんだけ居たのにもうそんなに減っちまったのかよ?!つーか足場がもうそんなに……!クソッ、やっぱり最初に出遅れたのが痛かったか!」
言葉に出して状況を整理しながら魔法を使って1つ飛びをする勢いで足場の移動を続けていると、離れた所にある足場に乗った参加者3人が争っていたせいなのか天井まで上げられて行く姿が見えて!
「「「うぎゃああああああ!!!!」」」
『あぁっと!数少ない足場を巡って参加者達が一斉に同じ所に集ってしまった結果、3名が天井に流れる電流を浴びる事となってしまいました~!最後尾を移動している九条選手にとっては非常に厳しい展開となってしまいましたねぇ!』
ちょっ、ふざけんなよバカ野郎共が!!ただでさえ飛び移れる場所がねぇってのに更に数を減らしてくれてんじゃねぇよ!
「へ、へへっ!悪いなアンタ!次のステージにはこの俺が行かせてもらうぜ!」
「っ、クソッ!」
振り返って勝ち誇ってきた参加者がそう言った通り、アイツに先を越されたら俺が次のステージに行くのは絶望的だ!檻は目の前にある1つ以外はメチャクチャ離れた所にしか存在してないから、そこまで移動するのはどう考えても無理がある……!
「それじゃあここで諦めるってか……?ハッ、そんなの冗談じゃねぇっての!」
ニヤリと笑いながら自分自身に気合を入れ直した俺は大きく吸い込んだ息を一気に吐き出すと、風魔法を全身に纏いながら足場を思いっきり蹴り飛ばした!
「し、下は見るな下は見るな下は見るな下は見るなあああああ!!!!」
高所恐怖症の癖に何をしているんだと我ながら思わなくも無いがこうでもしないと120%勝てないんだから仕方ないだろうがああああああ!!!!
「や、やった!これで次のステージに行くのはこの俺」
「さ、させるかよおおおおおお!!!!」
「えっ?うわあああっ!!!?!?!」
鉄の檻に飛び移ろうとしてる参加者の横を一気に通り過ぎてガシャアアアンという爆音を鳴らしながら突っ込む形でゴールへと辿り着く事に成功した俺は、倒れ込んだままの姿勢で後ろを振り返ると……
「あー……悪いな。」
「……え、えええぇぇぇぇぇ………」
驚きと困惑とその他諸々の感情が入り混じった様な表情を浮かべたまま足場と共に暗闇の中に落下していく参加者を見送った後、全身を襲って来るちょっとした痛みに耐えながら起き上った俺は檻の中にあった端末みたいな物と向かい合った。
『おぉっ!何という事でしょう!圧倒的に不利だと誰もが思っていたであろう状況を強引にひっくり返してしまいましたねぇ!しかし、アレ程の衝撃を受けた腕輪は無事なのでしょうか!』
「あっ、やっべ!そう言えばそうだった!コレって衝撃にも弱いって話で……おい、頼むから起動してくれよ!ここまで来て失格とかシャレにならねぇぞ……!」
祈る様な気持ちで腕輪で端末に触れてから数秒後、足元がガクンッと大きく揺れて鉄の鎖がカラカラと巻き上がる音が聞こえ始めた!
『良かったですねぇ!腕輪は壊れてはいなかったようですよぉ!さてと、これで次のステージに参加できる方達が決定を致しました!勝ち上がった4名の参加者さん達は決勝へ進める様に頑張って下さいねぇ!』
ったく、気楽に言ってくれるもんだな……こちとら初戦からハードに動き過ぎて、体力が若干無くなり始めてるってのに……まぁ、勝ち残った参加者が少ないからまだ何とかなるかもしれないけど……とりあえず、次も気合を入れていくしかねぇな。
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