第39話
「おぉ、こりゃまた凄い広さだな。」
思わずそんな言葉が漏れ出てしまう程に広々とした本屋にやって来た俺は、店内を見渡しながら自然と笑みが浮かんできていた。
「これだけ大量に本が有れば、異世界だとしてもラノベぐらい置いてあるだろ。」
小声でそんな事を呟きながらすぐ近くの壁にある案内図らしき物にジックリと目を通してみると、1階にどんなジャンルの本があるのかが事細かに示されていた。
「……とりあえず料理本が有るコーナーから見て回ってみるかな。料理を作る知識が独学のままだったから最近な同じ様な物しか作れてなかったし……その後は……まぁ適当にグルっと巡ってみるとしますかね。」
頭の中にルートを叩きこんでから異世界の本屋ってがどんな感じなのかを確かめてみたんだが、やっぱり前の世界との違いてもんは間違いなく存在してるらしい。
モンスターの詳細情報、武器や防具に関する扱い方、治療に必要な薬草を調合する為の方法等……本当に異世界ならではの本が大量に並べられていた。でも……
「うーん、良さそうな料理本は幾つか見つかったけどお目当ての本がねぇな……って言うかそもそも情報誌以外の本がほとんど無いし……もしかしてそう言う系のは全部2階にあるのか?」
いわゆる娯楽本と呼ばれている系統の本が1つも見つからなかったのでそう考えた俺は、建物内のど真ん中にある巨大な螺旋階段を上がって2階に向かって行った。
「……お、おぉ……!こ、コレこそ……俺が探し求めていた光景……!」
雰囲気からしてもう明らかに一般人向けでは無いであろう表紙がずらっと並んでるコーナーを目にして興奮のあまり体が震えてきた俺は、心の内から溢れてくる想いを必死に抑え込みながら一歩一歩前に進んで行った……!
「へ、へへっ……まずは表紙から見ていくとしようかねぇ……!」
テンションが上がった俺は小声でそう呟くと、可愛らしい女の子がウィンクをしている表紙を手にっ!?コ、コレは一体どういう事だ!?瞳が!髪が!ま、間違いなく揺れ動いているじゃないか!?
まさか異世界にはこんな技術が存在していたというのか!?いや、動いているのは表紙だけかもしれない!と、とりあえず扉絵も確認して……おいおいコレもかよ!?
「……俺、今初めて……異世界に来て良かったと感動をしている……!」
自分でも気持ち悪いなぁと思いながらも勢いと衝動のまま、目の前にあるラノベを何冊の何冊も手に取って腕に抱えていたカゴの中に入れて行った俺は他のコーナーも巡って今までだったら買ってこなかった様なジャンルの本も試してみる事にした。
「ふぅ、こんな風にラノベを買うなんて随分と久しぶりの経験だな。歳を取ってから冒険もしないでシリーズ物しか選んでこなかったもんなぁ……うんうん、コレは家に帰るのが楽しみだな!」
ズッシリと重くなったカゴの中を見ながら満足げに頷いてそろそろ会計に向かおうかなと思った直後、視界の端に気になる表紙のライトノベルを見つけた。
「……【一途勇者と無口王女の
少しだけ考えてはみたものの思い出せなかったので諦める事にした俺は、この本がそれなりに巻数が出ている事を確認すると、とりあえず1巻を買ってみようと思って手を伸ばして……
「あっ、すいませ……ん……」
不意に横から伸びて来た手とぶつかってしまい謝罪の為に真横を向くと、そこにはフードを目深に被った小柄な人が立っていて……どういう訳なのか俺を顔をジィっと見つめてきている様な……ハッ、まさか俺との出会いに運命を感じたのか!?
……っって、そんな訳あるか。邪魔だから退いて欲しいって目線で訴えて来てるんだろうな。ったく、アホな妄想してないでさっさと会計に行くとするか。
「うんうん!大量大量!さてと。早速家に帰って読みまくるとしますか……え?」
合計で数万Gぐらいする大量の本が入った紙袋を両手に抱えながら本屋を後にして家に帰ろうとした瞬間、建物の陰からさっきのフードの子が俺の前に現れた……?
「貴方、私より強い人?」
「………………は?」
「貴方……私より強い人?」
……どうやら聞き間違いじゃなかったみたいだな……うーん……うーん……何だかメチャクチャ面倒な事に巻き込まれる気がしてきたんだが……よしっ!
「いや、俺は君より弱い人だ。それじゃあ!」
片手を上げてそう告げた俺は袋を抱えた状態のまま全速力で走り始めた!へへっ!それなりに鍛え上げられた俺の脚力にあの子が付いてくれる訳が……えっ?!普通に追いかけて来てるだと!?ちょっ、何なんだよ一体!!
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