第3・5章

第38話

 人生二度目となるダンジョンを攻略した数日後、武器を預けているせいでクエストにも行かずに家の中でダラダラしていた俺はボードゲームで遊んでるマホとロイドの方に視線を向けた。


「なぁマホ、ここら辺にライトノベルが売ってそうな本屋ってあるのか?」


「……本屋、ですか?」


「あぁ、ここ最近やる事が無くて暇だったから久しぶりに本でも読みたいと思ったんだけど……どうだ?分かるか?」


「うーん、どうだと急に言われましてもですねぇ……」


「九条さん、そういう事なら大通り沿いに2階建ての本屋があるよ。」


「えっ、そうなのか?」


「……あっ、確かにありましたね。ただライトノベルが売っているかどうかまでは、ちょっと分かりませんけど。」


「いや、本屋がある事が分かっただけでも充分だ。」


 座っていた椅子から腰を上げて少しだけ鈍っている体を大きく伸びをしていると、こっちを見てきているロイドと視線が合った。


「ふむ、もしかして本屋に出掛けるのかい?」


「あぁ、家でジッとしてるのも流石に飽きてきたからな。」


「ふふっ、確かにここ最近は外にも出掛けずに家に居てばかりだったね。そう言えば九条さん、ライトノベルと言うのはどんなジャンルの本なんだい?」


「ど、どんなジャンル?どんなジャンルかぁ……」


 事細かに説明すると早口になって引かれる可能性があるなと感じた俺は、冷静さを保つ様に心掛けながら当たり障りのない簡単な事だけを教えていった。


「なるほど、特定の事柄に縛られない多種多様なジャンルの織り交ざった物をライトノベルと言うんだね。」


「ま、まぁそんな所だな!ってな訳で、本屋に行こうと思ってるんだけど……」


「ん?どうかしましたか?」


「あぁいや、その……だな……」


 この話の流れだとマホやロイドも一緒に本屋へ行くって事になりそうだけど、俺の心情的には絶対に1人で行きたいんだよなぁ……かと言ってマホを留守番させるのもソレはそれでどうなんだって思いがある訳で……はてさて、どうしたもんか……!


「……はぁ、ヤレヤレですね。ご主人様、大丈夫ですよ。私の事なら気にしないでもきちんとお留守番出来ますから!」


「うぐっ、そう言われると何とも言えない心苦しさがあると言いますか……」


「ふふっ、だったら九条さん。私がマホと一緒にお出掛けしても構わないかな?」


「え?お出掛け……ですか?ロイドさんと?」


「うん、実は今日リリアやライルとファンの子達と顔を合わせる日取りについて話し合いをする予定だったんだ。そこにマホも連れて行くと言うのはどうだろうか。」


「あーそうだったのか……マホ、どうしたい?」


「もう、そんなの決まってるじゃないですか!ロイドさん、お願いします!」


「了解、じゃあ後で私の家に一緒に行こうか!実はマホの為に買ってある服が幾つかあるんだ!いやぁ、楽しみだなぁ……」


 おっと、ロイドの表情がニヤニヤとした感じの物になったけど……うん、俺が気にする事じゃないな!マホ、何がとは言えないがとりあえず頑張れよ!


「よしっ、それじゃあ出掛ける準備をしてくるとするか。」


「えぇ、そうですね!」


 その後、俺とマホは身支度を整えるとロイドと一緒にウチを後にして外の通りまでやって来るのだった。


「あっ、そう言えばロイド。リリアさんに会うって事は晩飯は食べて来るのか?」


「うん、恐らくだけどそうなる可能性は高そうかな。」


「分かった。それじゃあ今日の晩飯はは俺1人分だけで良いか。」


「ご主人様。1人だからって手は抜かずにちゃんと食べて下さいね。」


「へいへい、きちんと料理してそれなりに美味い物を食べるとするよ。」


「絶対ですからね!それではご主人様、いってらっしゃい!」


「おう、行って来るわ。そっちも気を付けてな。」


「うん、また後でね。」


 互いに手を振りながら家の前でマホとロイドと別れた俺は、2人に教えてもらった本屋に向かって歩いて行くのだった。

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