第11話
「……これでパーティー編成に関する手続きが終了致しましたので、お次は皆さんが向かおうとしているダンジョンの名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
そう尋ねられた俺が後ろに立ってた爽やかに微笑んでたロイドという名のイケメン少女に視線を送ると……‥
「あぁ、私達はこれから未熟者の遺跡に行こうと思っているんだよ。」
「かしこまりました。それではダンジョンに関する手続きを始めたいと思います。」
お姉さんはニコっと微笑みながらそう告げると、受付の下から【ダンジョン内部で怪我、または死亡をしても救出を求めない事を誓います。】と書かれている誓約書と日没までの残り時間が表示されてるという腕時計を取り出し俺の前に置いて見せた。
……思わず顔を引きつらせながら用紙を手に取って自分の名前を書き記した俺は、
ロイドの取り巻きに文句を言われるのを避ける為に腕時計を彼女に預けると斡旋所を後にしてダンジョンに行く為の準備を始めるのだった。
それからしばらくして傷薬等のアイテムを買い揃えて集合場所である街の正門前に足を運ぶと、そこにはダンジョンに行くとは思えない格好の女の子達に囲まれているロイドの姿が見えていた。
(えっと……取り巻きの女の子達が1、2………5人か……あの人数を護衛しながらダンジョンを攻略しなきゃなんねぇのかよ………あぁもう、マジで面倒だな!それにあの子達、武器も持たずにどうすんだよ?)
(本当ですよ!自分の身を護る装備ぐらい整えてから来て欲しいですよね!)
(ロイドとのやり取りを聞いてて嫌な予感はしてたが、まさかここまで酷いとは……これは中々に骨が折れそうな気がするなぁ………)
頭をガシガシと掻きながら重い足取りで集合場所に向かって行くと、俺に気付いたロイドが爽やかに微笑みかけてきた……その後ろで親の仇を見る様な目つきをしてる女の子達はとりあえず無視をしておこう!だって怖いからな!
「やぁ九条さん、今日はよろしく。早速で悪いんだが、ダンジョンに行く為の準備は整っているかい?」
「あぁ、それは問題無いが……俺は何処に立って護衛をしてれば良いんだ?」
「そうだね……九条さんには後ろから襲って来るモンスターの対処をお願いするよ。私は先頭を歩いて前から来るモンスターを倒していくからさ。」
「……はいよ。」
ロイドの指示に従って最後尾に歩いて行き女の子達を挟み込む形になったその時、俺のすぐ前に居た女の子達が俺をジロッと睨みつけてきて……
「ちょっとおじさん。後ろから私達の事をいやらしい目で見ないでよね。」
「そうそう、それとサボらずにちゃんと護りなさいよね!」
「ロイド様と私達に迷惑を掛けたら許さないんだから!」
「……はいはい、分かってますよ。」
(もう!何なんですかこの人達のご主人様に対する口の利き方は!?あまりにも失礼じゃないですか!そんなに文句を言うなら武器ぐらい持ってきなさい!!)
(マホ、取り巻きの女の子ってのは大体あんなキャラの子達ばっかりなんだから怒るだけ無駄だぞ。それよりもほれ、俺達も彼女達の後について行こうぜ。)
(むぅー!!)
今にも地団駄が聞こえてきそうなマホの唸り声を聞きながら街を出てダンジョンに向かって歩き出したんだが……その道中で襲って来たモンスターをロイドがほとんど倒してしまっているので俺はする事が無く周囲の景色をただボーっと眺めていた。
(……何と言うか、俺の存在ってマジで邪魔以外の何物でも無いよな。)
(いやいや、これからですって!気を抜かずに頑張りましょう!)
そんな感じでマホに激励されたりはしたが最後まで役目がゼロだった俺は、遺跡の様な見た目をしているダンジョンの入口でロイドと話し合いを始めるのだった。
「それでどうすんだ?ダンジョンの中もこれまでと同じ隊列で良いのか?」
「あぁ、この先もそれで問題無いと思うよ。」
「分かった……じゃあダンジョン探索の方はどうすんだ?数日前に内部構造に変化が起きて俺達が最初の挑戦者になるって言われたけど。」
「それに合わせてダンジョン内にある宝箱の中身も復活しているとも言われたよね。ただそれについては、1つ大きな問題があると言わないといけないが………」
「……そうなんだよなぁ。」
俺とロイドがダンジョンに背を向けて振り返ってみると、そこには木陰で休んでる女の子達の姿が………
「彼女達の事を考えると、長時間ダンジョンに潜っているのは危険だと思うんだ。」
「やっぱりそう思うよな……仕方ない、とりあえず最奥の部屋を目指しながら探索を進めてその道中で見つけた宝箱の中身だけ持って帰るとするか。」
「……九条さん、本当に良いのかい?貴方はお金を稼ぐ為に来ているのだろう?」
「それもそうだが、あの子達を危険な目に遭わすって訳にもいかないからな。だから今回は諦めるとするさ。それにお前が倒してくれたモンスターの素材だけでもかなり稼げるとは思うからな。無理する必要はねぇだろうよ。」
「……ありがとう、九条さん。そう言ってくれると助かるよ。」
「はいはい、どういたしまして……そんじゃあさっさと行くとしようぜ。」
「あぁ、了解した……それじゃあ君達!これからダンジョンに入るから絶対に私達の
ロイドの勇ましい呼びかけを聞いてうっとりしながら集まって来る女の子達を呆れながら見ていた俺は、何とも言えない不安な気持ちを抱いて薄暗いダンジョンの中に足を踏み入れて…………軽い地獄を経験する事になるのだった!
女の子達はロイドの活躍を見たいが為に全然進んでくれないし、俺は俺で背後から襲って来る普通より強いモンスターを罵声を浴びながら倒さないといけないしで……どうしてこんな目に遭わなきゃいけないのかとマジで泣くかと思ったんですけど!?
(大丈夫ですよご主人様!あの子達が何を言ってこようと、私だけはご主人様の姿をちゃんと見ていてあげますからね!)
(はいはい!そりゃありがとうよっと!)
ロイドの姿に見惚れている女の子達を護りながらダンジョンの奥にドンドン進んで行くと、通路の奥の方に古ぼけた巨大な扉が見えてきた。
「ふむ、どうやらあの部屋がダンジョンの最奥の様だね。」
「本当ですか!?こんなあっさりとダンジョンを攻略するだなんて流石ロイド様!」
「えぇ!それにモンスターに颯爽と斬りかかって行くお姿も素敵でした!……それに比べてあのおじさんときたら……ほとんど何もしていませんわね。」
「全く、何て役に立たないおじさんなのかしら!」
(な、なんですって!?自分達が見向きもしなかっただけなのに偉そうに文句を言うだなんて恥ずかしく何ですか?!私、もう許せませんよ!こうなったら直接!)
(はいはい、そう怒るなって。実際に俺が倒したモンスターなんてロイドに比べたら微々たるもんなんだからさ。)
(うー……それでも納得が出来ませんよ!自分達は何もしてないのに!)
(さっきも言ったがそれが彼女達のキャラなんだと割り切っとけ。俺としてはこんな取り巻きのテンプレみたいな態度をしてるあの子達には感動すらしてるんだから。)
(……ご主人様が良いならしょうがないですけど……やっぱり納得は出来ません!)
(ふっ、そう言ってくれてありがとうよ……さてと、こっからどうするかねぇ?)
マホの唸り声を聞きながら最奥の広間前までやって来た俺は、後ろをチラッと見てからロイドにどうするのか尋ねようと思っていたんだが……その行為がマズかった。
「ロイド様!広間の中央に大きな宝箱がありますよ!私、ちょっと見てきますね!」
少し目を離したその隙に1人の女の子が列を外れ広間の中に駆け出してしまった!恐らくロイドに褒められたいって思いがそうさせたんだろうが、流石に軽率すぎる!
「待つんだ!この部屋にはボスが出現する可能性が!くっ!?」
慌てたロイドが制止するよりも先に女の子が宝箱を手で触れてしまった次の瞬間、広間の真ん中を中心に巨大な魔方陣が出現しやがった!?
それと同時に宝箱がぶわっと空中に浮かび上がったが視界に入った俺は、真っ先に女の子の方に駆け出して行ったロイドの後を追って広間の中に入って行った!
「ロ、ロイド様!こ、これは!?」
「それよりも早くこっちに来るんだ!」
ロイドが女の子を抱える様にして扉の方に戻って来た直後、空中に浮いてた宝箱が消えてその代わりに殺気が剥き出し状態のバカでかいオオカミみたいなモンスターが出現していた……って、この状況はヤバい!
「ロイド!お前は女の子達を連れてとっととこの場から逃げろ!」
腰から引き抜いた安物のブレードを右手に握り締めながら空いている左手で魔法を使い眩い光を放った俺は、ボスの咆哮を聞きながらロイド達の前に出るのだった。
「何を言っているんだ!?ここは二人で戦った方が!」
「アホか!戦えない奴らを護りながらそんな事が出来るはずが無いだろ!分かったらあの子達を連れてダンジョンを脱出するんだ!その後はすぐに助けに来てくれ!」
「それならば九条さんが彼女達を!」
「お前を慕ってここまで来たあの子達がお前を残して逃げる訳ねぇだろうが!だから早く逃げてくれ!もうそろそろボスが復活しちまう!」
「……くっ!急いで戻るから死なないでくれ!君達、急いでこの場から離れるんだ!ほら早く走って!」
切羽詰まったロイドの叫び声と女の子達の悲鳴を耳にしながら彼女達が無事に逃げられる様に祈った俺は、大きくて鋭い牙を剥き出してキレているボスに向かって同じ魔法をもう一度だけ撃ち込んでみたんだが、後方に飛んで普通に
いやはや、同じ攻撃は2度も通じませんかそうですか!こりゃマジでまいったね!ちょっとここまでのピンチは想定してなかったんですけど!?
(ご、ご主人様どうするんですか!私達も逃げた方が良いんじゃないですか!?)
(俺もそうしたいがこっから出口まではほぼ一直線だ!そんな所で襲われでもしたら俺もロイドも女の子達もコイツに食われて人生が終わっちまう!)
(そ、それじゃあ私も一緒にご主人様と囮に!)
(それだけは絶対にやめろ!お前を危険にさらしてたら俺が集中できん!)
(うぅ!でもでも!)
(そんなに心配すんなって!図体はデカいがコイツは草原に生息してるモンスターと似た様なもんだ!それに初心者ダンジョンのボスだからそこまで強い訳じゃねよ!)
……心臓はバクバク、喉はカラカラ、一瞬でも気を抜けば全身が震えちまいそうな恐怖を噛みしめながら俺はボスにブレードの切っ先を向けて睨みつけた!
本当は今すぐにでも逃げたい、軽いノリでここまで来た事を激しく後悔もしてる!だけどいい歳したおっさんとして、自分の命惜しさにあの子達を見捨てるような真似だけは絶対にしたくない!だってあまりにも格好が悪すぎるからな!
さ、さぁ掛かって来いボス!お前の相手はこの………うん、やっぱりメチャクチャ怖いから早く助けに来てくれロイドオオオオオオオオ!!!!!
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