Act13, プロダクションブレーブ

「まったく、今回は散々だったわ」


 好恵が頬杖をつきながら大きな溜息を吐いた。


 事件解決の翌々日、ブレーブは大分落ち着いてきた。


 安部の暴力沙汰だけなら大した騒ぎにならなかっただろうが、亜矢が篠原珠恵を突き飛ばしていたのは大問題だ。


 好恵も警察に呼ばれた。しかし、ブレーブの事務所で明らかになった事とはいえ、好恵の知る由もないことだ。


 ただし、カガワエージェンシーとの仲は最悪になっている。


 下手をすると今後仕事でブッキングした場合、どちらかが降りることになりかねない。そうなると弱小のブレーブが不利だ。


 漏れてきた情報からすると、亜矢は所属解除、安部は解雇になるらしい。


 安部に関しては、亜矢が愛人関係にあったことを暴露した事が原因だ。今回は呪術で誤魔化すことが出来なかったようだ。


「悪かったわよ、色々と」


 刹那が不満げに言う。


 恐らくまた早紀が敏腕振りを発揮して、何とかするだろう。いや、何とかして欲しい。


「そう思うなら、何で鬼多見さんに代わってもらわなかったのッ?」


「そっちッ?」


「当たり前でしょうッ」


「社長、取りあえず今回は無事でしたし……

 それより刹那、芦屋への対策は大丈夫なの?」


 早紀が愛情過多から来る叔母と姪のケンカをさり気なく仲裁した。


「鬼多見さからこれが送られてきました」


 バッグから封筒を取り出して、中身を早紀に渡す。


「これは……お守り?」


「そうみたい」


 鬼多見が送ってきた封筒に入っていたのは、小さな巾着だった。


「こんな物で、芦屋の呪術を防げるのでしょうか?」


「たぶん……」


 早紀が溜息を吐いた、刹那も同じ気分だ。


「それってさ、請求書入ってなかったけど、ロハなのかしら?」


「おばさんッ、ここでケチるッ?」


「それはそうなんだけど……」


「もういいわ。で、竹田さんから連絡は?」


「彼はヨコハマ映像を辞めたそうです。この後の仕事については追々考えるそうです」


 すかさず早紀が答える。


「満留とのことは何て?」


「かなり無理をして高額な前金を払っていたようですが、成功報酬の残金は支払わずに済んだようです。彼女も間違いなく了承したそうです」


「こっちも先ずは一安心ってトコかしら? あいつに揺すられたらやっかいだったわ」


「人のこと心配している場合じゃないでしょう。明らかに危ないのはせっちゃんの方なんだから」


「わかってますって。で、リョータは?」


「そっちは特に目立ったことは何も」


「まだ日が経ってないし、仕方ないか……

 とにかく、おばさん」


「何よ?」


「次からは仕事選んでよね」


「わかってますって」


 好恵は刹那の口調を真似て答えた。


 事務所に三人の笑い声が響いた。


            


                                 ―終―

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アイドル 御堂刹那の副業 大河原洋 @okawara_hiroshi

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