Act9, ヨコハマ映像 パート2

「少しは落ち着いた?」


 クルマを運転しながら、早紀がいつになく優しい口調で言った。


 刹那は後ろのシートでグッタリしていた。


「うん……」


「そう……刹那、やはりこの仕事は降りなさい」


「え?」


「あなたの手には負えない、今まで関わってきた案件とは明らかに違います」


「でも、あたしはこの依頼を受けた……」


「もうそんな事を言っていられる状況ではありません、目の前で人が死んだんですよ」


「危険なことに首を突っ込んでいるのは解ってる」


「それなら……」


「でも……ううん、だからこそあたしが解決しなきゃならないのよ」


「バカを言わないで。自分に責任があると考えているなら、思い上がりも甚だしい。ハッキリ言いますが、あなたに大西さんを助ける能力ちからなんて元々無かったんです」


「違う……」


「違いません。いい加減にしなさい、本気でこれ以上関わったら、今度はあなたが……」


「早紀おねえちゃんッ」


 この呼び方を使ったのは小学生以来だ。


「違うの、あたしには判った、判ったんだ。でも、遅すぎた。もう少し早ければ……


 ヒントは目の前にあったのに、あたしはそれを軽視した。そのせいで大西さんは生命いのちを……」


「判ったって、霊の正体が?」


「それもあるけど、今回の事件の根本にあるモノ。後はその裏付けを取らなくちゃ……今、あたしが投げ出したら、もっと被害が出るかも知れない」


 早紀は大きな溜め息を吐いた。


「OK。でも、やるならわたしも付き合う。でなきゃ絶対認めない、社長とケンカしたって降ろすから」


「うん!」

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